魔道具

「それでは、魔道具を試しに作ってみましょう」


 説明が終わると、ルイがそう言った。異世界に来て二週間目でようやく魔道具を作れるみたいだ。

 ルイはまず魔石を取り出し、机に置いた。


「今回はこの魔石に『火玉ファイヤボール』の魔法を刻み、魔道具を作りましょう」


 『火玉ファイヤボール』は魔法訓練の時に使用したことがあるので、魔導回路は記憶している。だが、俺は『構築』のスキルレベルが低い。上手く魔導回路を、魔石に刻み込めるとは思えない。

 不安そうな顔をしているとルイが「大丈夫です」と言い、大量の魔石が入った箱を取り出した。


「スキルのレベルを上げるためにも、沢山やるしかありません。頑張りましょう!」


 確かにルイの言う通りだ。スキルレベルが上がらなければ、魔導回路を刻み込むのだって上手くいかない。


「量をこなさなきゃいけないってわけですね」

「その通りです!」


 そこからはとにかく、何度も何度も魔石に魔導回路を刻んでいった。そんな中、何十個目かの魔石を捨てようとした時に、ふと疑問に思うことがあった。


「この魔石って、このまま捨ててしまうんですか」

「そうですね。再利用される場合もありますが、基本的に廃棄になります」

「例えば、この魔石を『分解』で粉々にして、『構築』でもう一度まっさらな状態に戻すことって出来ないですか」

「スキルレベルが高ければ出来ると思います。でも、このレベルの魔石であれば沢山あるので、わざわざそんな事をする必要ないと思います。でも、スキルの訓練にはいいかもしれません」


 確かにかなり難しい。分解しても上手にくっつけることができない。暇な時にでもやっておくことにしよう。



 あれから、日が暮れるまでやり続けて、やっと使える物を作ることができた。昨日はそこで終了となった。

 そして、今日。初めて自分で作った魔道具を使用する。そのために魔法訓練の時に、使用した訓練場に来ている。


「それでは、魔道具を使用して試射をしてみたいと思います」


 「まずはこちらを」とルイが俺に渡したのは、昨日ルイが作っていた『火玉ファイヤボール』の魔道具。

 最初に完成品を使用して、魔道具がどのような物なのかを知るためみたいだ。


「魔道具に魔力を流し、的に狙いを定め発射してみてください」


 ルイの指示の通り、的に杖型の魔道具の先を向ける。そして、魔道具に刻まれた魔導回路へ魔力を流し詠唱する。


「『火玉ファイヤボール』!」


 魔道具から放たれた『火玉ファイヤボール』が、一直線に的へと飛んで行く。威力は訓練の時よりも低いようだったが、発動速度がかなり短縮することが出来た。


「これが魔導具の力」

「そうです。素晴らしいものである反面、危険な代物です」


 確かに、誰でも魔法を使うことが出来るようになるというのは、危険なこともあるかもしれない。けれど、この力があれば魔物などとの戦闘が俺にも可能になる。ジョブのレベルを上げることが出来れば、この世界でやれることも増えていくだろう。


「次に、ケイさんが自分で作った魔導具を試してみてください」

「わかりました」


 そう言われ、腰に差してあった自作の魔導具を取り出す。先ほどと同じように、魔導具を的に向け魔力を込める。だが、さっきよりも魔力をうまく流すことが出来ない。魔導具に刻まれている、魔導回路の差が出てきているみたいだ。

 何とか魔力を込め、魔法を放つ。


「『火玉ファイヤボール』!」


 さっきの『火玉ファイヤボール』よりも明らかに威力もスピードもない。この魔道具では戦場に立つのは厳しいと思う。


「どうでしたか。魔導具がどのようなものかわかってもらえましたか?それから、自身の技術でどこが足りないのかもわかりましたか?」

「はい、魔導具があれば俺でも魔物と戦える。それだけすごいものだとわかりました」

「それは良かったです。今日はこれで終わりにしましょう」


 初めて魔導具を使ったことで、その可能性を感じることができた。そして、自分の課題も見えてきた。

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