魔導技師

 あれから、さらに一週間がたった。その間は、戦闘訓練と魔法訓練を毎日行っていた。そして、今日ようやく魔導具について教えてもらうことになった。遅くなった理由としては、魔法省というところでの人選に時間がかかったせいらしい。



 とうとう、魔導具について学ぶ時間が来た。俺が今いるのは、色々な道具が置いてある理科準備室のようなところだ。もちろん一人きり。ここで魔導具や魔導技師について学ぶことになる。

 しばらくすると、誰かが部屋に入ってきた。入ってきたのは中学生くらいの少女だった。少女は荷物を抱えてこちらに歩いてくる。


「なぁ、お嬢ちゃん。ここは子供の来るところじゃないぞ。危ないものもあるし」

「僕は子供じゃありません。それに、れっきとした成人男性です!」


 思わず声をかけると、少女は怒り気味に言い返してきた。だが、少女……ではなく彼の言ったことはとても信じられない。どこからどう見ても少女だし、声も高いし。異世界は不思議が多いということだろうか。


「でも、どうしてここに。何か取りに来たんですか?」

「違います。僕はあなたに魔導具について、教えにきたんです」


 さらに彼は驚くような発言をする。まさかこんなに若い人が教師を行うとは思っていなかったから、なお驚きだ。

 そこから、軽い自己紹介などをして彼について色々なことを聞いた。聞いたことはまず、彼の名前はルイで、まだ十七歳で同い年だったこと。そして、歴代最年少で魔法省に入省したエリートだということだ。見た目は中学生だが、かなり賢いらしい。



「おっほん。これから、授業を始めたいと思います」


 少し興奮気味にルイが授業開始の声をかける。なんでも、雑用以外で初めての仕事らしく張り切っているみたいだ。大丈夫だろうか?

 「よろしくお願いします」と返事をすると、嬉しそうにするルイ。ほんとうに大丈夫だろうか?


「それでは最初に、魔道具とはどんなものか勉強しましょう」


 そこからルイの説明が続いた。内容は魔法の訓練の時に教えてもらったことに加えて、魔道具の作りについて教えてもらった。まず、魔導具は基本的に魔石や魔鉱石などの魔力をまとうものを素材として使用すること。そしてその素材に魔導回路を刻み込むことで魔導具をつくること。それから使う素材の品質により耐久度が変化することだ。他にも細かい作り方や、ルールなどを教わった。


「次にスキルについて説明します。ケイさんが持っているスキルは『分解』と『構築』、それから『解析』でしたよね」

「はい、そうです」

「僕も『構築』のスキルは持っています。それに、魔法省にはスキル持ちが集まっているので、大抵の質問には答えられますよ」


 こっちは軽い実践を交えながら、説明をされた。まず、『分解』の能力は対象を部品や物質ごとに分解したり、レベルが上がれば対象を粉々にすることもできるものだ。俺のレベルは1だから出来たのは、部品の分解や石を少し砕く程度だった。


 そして『構築』の能力は対象の部品を組み上げたり、別の物質をくっつけたりするものだ。だが一番大切な能力は、魔導回路を刻み込めるということだ。このスキルは魔導技師が一番欲しがるものらしい。それで俺が出来たのはさっき砕いた石をくっつける程度で、魔導回路を刻むことは出来なかった。ルイは『構築』のスキルレベルが5あるらしく、魔導回路を刻むことは朝飯前らしい。


 最後に『解析』の能力は、対象の設計や構成を把握するというものだ。レベルが上がれば物質の組成も把握することが出来るらしい。俺が出来たのは、簡単な道具の設計を把握する程度だった。


「質問です。『分解』は人間相手にも使えるんですか?」

「結論から言うと使えます。ですが、基本的に生物相手に使うことは禁止されています。それに、よほどレベルが高くなければ軽症を与える程度です」

「あくまで、道具を作るためのものってことですか」

「はい、その通りです」


 この後もいくつか質問をした。その中でも、ジョブ持ちはそのジョブに合ったスキルの成長が早くなる。という情報は俺にとって朗報だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る