第3話 「部活の後輩は日本一可愛いヤンデレ美少女」
「氷見谷部活行くぞー!おーい起きろよ!」
俺は終礼が終わると氷見谷にそう言うが、なかなか起きる気配がない。こいつまさか、シエスタが終わっているのにまだ寝るつもりか!
やるな…なかなかの策士のようだ。こうなったらプランBだ!
「氷見谷起きろ!顧問の前で寝れると思ってるのか?」
おっと…パワハラ顧問、握力最強こと箕土屋先生が参戦して来た。
確かに氷見谷でも顧問の前で寝るわけが。
「んん…もう食べれないよぉ。」
「しょうがない…岸中ラケットを貸せ。」
先生は諦めたのか何か作戦があるのかわからないが、俺のラケットを貸せと要求して来た。ジオブレイク70sこと漆黒の翼を要求するとは、一体どう言うことなのだろうか?
「ジオブレイク70sいや漆黒の翼でなにをされるおつもりですか?」
俺はラケットケースから2年間愛用している、ジオブレイク70sを取り出しながらそう言った。エッジガードと綺麗に巻かれたグリップが、最近変えたばかりだと言うことを表している。
「決まってるだろ、氷見谷をこれで殴る!」
箕土屋先生は俺から、ラケットをひったくろうとして来た。箕土屋先生、なんと言う握力の持ち主だ恐ろしくてたまらない。
「落ち着いてください先生!あなた先生でしょうが!」
俺はジオブレイク70sをなんとか先生から取り戻す為に、全力で抵抗すると不意打ちで脇をこそばす。先生は急な行動に耐えきれず笑ってしまった。
「ん…岸中、箕土屋先生?なにをしてるんですか?」
ついでに氷見谷を起こすことにも成功した。これこそが一石二鳥というやつか。
「起きたか、さぁ部活に行くぞ!」
箕土屋先生は氷見谷に向かって目には見えない握力を放つと、大きな声でそう言った。箕土屋先生…存在感がまじでえげつないです。例えるなら某アニメの魔王様のような感じ。
「いやだ!寝たいもん!」
氷見谷は寝ぼけているのかいつもの大人びた感じの言い方ではなく、もんを使って来た。
こいつやるな…担任に甘えることでなんとかなるとか思っているのだろうか?
「よし、じゃあレギュラーから落としちゃおうかな?ふざけた甘ったるい態度を見せつけてくるとは落としても良いということだよな?」
おっと、顧問の特権を箕土屋先生は乱用して来たな。ずる過ぎる上に卑怯だが、大ダメージを与えるには十分だな。
「じゃあ行こうか!さっ岸中置いて行っちゃうぞ?」
どうやら予想通り、氷見谷に大ダメージを与えることに成功したみたいだな。
校舎を出て5分、校舎がある大洲の端にあるソフトテニス部専用コートにたどり着いた。ちなみに他校と違う点は人数が少なく、去年できたばっかりだから男女混合ということだ。
人数が増えることを願ってはいるが、個人的には女子が男子レベルに強くなってくれるので良いんじゃないのかなと思ってもいる。
ちなみに人数は男子十人、女子五人。校内では珍しい二:一だ。他の所は大体三:一とかそんなもんだけどな。
勿論、更衣室は男女別々だ。と言っても男子は週に二回しかないので、俺は自主練できているのだから必要ないのだが。
そしてこの部活には1人問題児がいるのだ。先生たちも手を焼きこの学校にふさわしいのかわからない生徒が。
「先輩、こんにちは!ここで着替えても良いですか?」
噂をすればドアを開けた瞬間に出てくるとは、やるな。彼女の名前は
「いや…夢咲、女子更衣室はなんのためにあるんだよ。どうせあれだろ?」
俺はいつものことなので大体予想がついたのだ。何故こいつが男子更衣室へ侵入し、そこでわざわざ着替えるのか?それは一つしか答えはない。
そう
「勿論、先輩のことが大好きだからですよ!私はヤンデレ以外にもう一つ極めちゃって。」
半分はいつも通りの答えだったが、何故か今回は一つ余計なものが増えちゃったな。
「一体なにを極めたらこうなってしまうんだ?」
俺はそう言いながら、制服を脱ぎ着替え始めた。サッと着替えて練習をし始めないと、もう少しで大会だからな。
「これです、先輩!この本?を読んで極めました!」
夢咲が取り出したのは、とあるライトノベルだった。どういうやつなのかと言うと主人公は女子生徒である日、同級生の男子生徒に一目惚れで好意を抱くようになる。彼女はほぼほぼ完璧な人間だったが、とある性格?があったのだ。そうそれは変態と言うこと、でそれで最終的になんとかハッピーエンドになると言うラノベだ。神作でもあったが、一部の人の性癖にしか刺さらなかった作品でもある。
と言うことは夢咲はヤンデレと変態を極めた、日本一の美少女になったのか。
「絶対先輩は私のものです!他の女になんか触れさせませんから」
そう俺は夢咲に、宣戦布告を堂々とされてしまった。
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