第2話 「氷見谷氷花はツンデレ天使」
「甘えられないだと?」
俺は自然と呟いてしまった。あの世界一可愛い美少女である氷見谷が、|俺に甘えられないだと。まぁ動揺してしまうのもわからないわけではない。
本来であればあの氷見谷が言わないことだからだ。
「え、あ…な、何もないから気にしないで!」
氷見谷は先ほど俺に言ったことを撤回し始めた。まぁ氷見谷はそんなことを言うやつじゃないからな、当然だよな。
俺は納得すると、猛スピードでとんかつを食べ始めた。気を紛らわすために。
学食を終えプレートを返した後、俺と氷見谷はゆっくり談笑しながら教室等へ続く長い大理石で出来た廊下を歩き始めた。
何故大理石でわざわざ作ったのかと言うと税金でなく寄付でこの学校は作られたからと言うことだ。どうやら資産家で大阪に住んでいた方が、若い人のために全財産を使ってこの高等専門学校を建てて欲しいと言ったからだそうだ。
「そういえばこの後の5限にメカトロニクスについてのお話が、
氷見谷は俺に総合の内容を考えた末の結果を伝えてくれた。確かに7年制で今は2年生だが、小学校が6年間あっという間だったみたいにあっという間に過ぎていくかもしれない。
「箕土屋先生はちょっと俺に厳しいからなぁ…女性で技術の先生なのに。」
俺は箕土屋先生を軽く皮肉ってしまった。箕土屋先生は若いしすごい良い先生だと思うが、ちょっと俺に対してはトゲを放ってくるから厄介だ。
「何か言ったか、岸中?」
俺の背後から気のせいだろうか、皮肉ってしまった先生の声が聞こえた。まぁ…あの先生は何かしらの情報網を持っているのか、俺のメアドを当ててくるぐらいだ。何かしらの方法で先生の声を流しているだけなのかもしれない。
ガシッ…メキメキメキと誰かが物凄い怪力、握力で俺の肩を掴んできた。ヤバイこの学校でこんな芸当ができるのはただ1人、そうそれは
「箕土屋先生、痛すぎますって!ちょ、一回落ち着いてください先生でしょ!」
俺は後ろにいる背が高いし、女子から敵対されるほどの胸の持ち主だが幼女とも間違うような声。それはこの学校において箕土屋先生以外にいない。ちなみに彼女の握力はやばすぎることで有名で、聞いた話によればリンゴを軽くつぶせるとか。
「お前が悪いんだ…私のことを皮肉ったりするから!テニスで鍛えられたその肩を壊してやろうか?」
メキメキメキ…グシャ、と言う音を立てながら先生はすごい圧力をかけて俺に向かってそう言った。これって俺が悪いのだろうか、先生も悪いのではないのでしょうか?てかこれってパワハラでは。
「パワハラなんかでは決してない。そうこれは因果応報だ!私は悪くないし岸中!お前が悪いんだよ!お前のせいでモテなくなったりしたからだぞ!」
先生は俺に対して理不尽なことを言ってきた。酷い、酷すぎませんか?
モテなくなったのは先生のせいでは?
グシャ、グシャ。
「痛いのでやめてくれませんか?」
俺はついにそう言うことを決意した。普段はこう言うとさらに怒ってくるのだが、さすがにもう耐え切れるわけがない。辛すぎるし、しんどすぎる。
「わかったよ…これで懲りて言わないことだな!もしお嫁にいけなくなったら、お前が養えよ!」
先生は俺に対してそう言うと、肩への圧力をなくしてくれた。うん、痛い。こんなんじゃ部活にもいけないし、死んでしまいかねない。
「私は岸中に養ってもらいたいなぁ。岸中にあ、甘えたりしちゃって」
氷見谷はまた謎発言を俺にしてきた。が今回は担任がセットだ。流石にまずいぞ、どうする?
「ほぉ氷見谷はどうやらツンデレというわけか…このスタイルだと、天使。つまりはツンデレ天使と言うわけだ。」
先生は氷見谷にちょっと納得できそうで、できないことを言い放った。
ツンデレだと…1年間接してきたが、気づかなかった。おかしくなったのは今日からだったと言うこともあるのだが。
「先生…ツンデレってなんですか?」
氷見谷はツンデレがわからないので、先生に聞いた。嘘だろ知っているだろ、アニメを見始めたぐらいなんだからさ。
「え、えっとなぁツンデレというものはな」
先生は言葉を濁した。流石にこれは禁句扱いになってしまいかねない意味を持つというものもあるけど、本人がどう反応するのかわからないからだ。
「女性の性格や行動の傾向の一つ。普段はつんつんと無愛想な女性が、特定の男性と二人きりになると、でれっと甘えてくるさま。または、普段は無愛想な女性が、時折甘えた行動をとるさま。アニメなどのキャラクターの性格設定として多く用いられる」
俺は辞書を覚えることが多いので、それで培ったことを言う。ちなみに中学校の時ついたあだ名はwiki先生だ。あの時は少し悲しくなってしまった
。
「先生ちょっと耳を貸してくれませんか?」
氷見谷は先生にそう頼み込む。絶対にこれ怒っているパターンだろ、先生が悪いからな。俺は死ぬかもと思って火中の栗を拾いに行っただけだからな!
「へぇ…確かにそうかも。甘えたいなぁ、ってなる時とかあるかもしれない。」
俺は何を言ったのかわからないが、先生はなんか喜んでいるぞ。あの人まさかドM?クラスの男子にまた今度教えておこう。
「と言うわけで、メカトロニクスって知っているか?」
先生はチョークを持ちながら、みんなに向かってそう聞いた。結局なにを聞いたのか氷見谷は教えてくれなかったし、先生も教えてくれなかった。で教室について先生の話を聞こうとしても気になってしまって、仕方がない。
「機械工学、電気工学、電子工学、情報工学の知識・技術を融合させることにより、従来手法を越える新たな工学的解を生み出す学問・技術分野をさすことですよね?」
「さすがwiki…岸中だな、そうその通りだ。だが我が校では最高の人材でなおかつ、大阪工業大学や東京工業大学などで通用する人を育成するために基礎はさっさとやって発展を重視する。つまり勉強についてこれないやつなどが続失するのだ。まぁ…厳しいと言うこともあるんだが。」
「なにを言いたいかと言うと、これからは6限までしかないのが7限までになるからな。後部活時間もその分のびる。と言っても入学式に配ったシラバスは勿論の事、入学説明会でも言っているから知っていると思うけど。」
先生は当たり前のようにそう言った。確か最初は高専に慣らすために、6限まで慣れてきたら7限になるんだったな。
「あとは寝ておけ、シエスタだ。今週も学校終わったしお疲れさん。」
先生は本当はもっと話さなければならないが、面倒くさいのかやめてしまった。
「なぁ…氷見谷、先生に何ていったんだ?」
俺がそう氷見谷に聞くと氷見谷は天使のように、可愛らしい寝顔を浮かべて眠っていた。
やはり、ツンデレ天使だな氷見谷は。
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