彼女と僕は、縛られていた。

8月18日―――僕は彼女と同じだった。


日記を読んだ僕は、最後の「君も自由になりなよ。」という言葉を、何度も何度も頭の中で反芻した。

自分では、自分のことを自由だと思ってきた。

それでも彼女は、僕に「自由になりなよ」という言葉を日記の最後に記して、消えた。


「…最期の言葉くらい、自分に関係するようなことにしろよ。」


僕はボソッと呟いて、最後のページを見つめた。

何かで押さえつけられたように、体が動かなくなっている。

それぐらい、彼女の言葉は僕の心を捉えた。








僕は、幼少期からピアノを親に習わされていた。

母は近所でも有名な「モンスターペアレント」で、何かと気に入らないことがあるとすぐに怒鳴りっていた。


「○○、またピアノの稽古サボったの?一体いつになったらコンクールで賞を取れるのよ?」

「やるべきことを淡々とこなせばいいのよ、子どもなんだから。」

「狙うなら一番よ!」


…それが母の口癖だった。



ただ、そんなスパルタ教育は、僕が小学校3年の時に終わりを告げた。


両親が離婚したのだ。

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