第87話  故校之以計、而索其情、曰主孰有道、将孰有能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明。吾以此知勝負矣

遥香は教わったことを思い出しつつ、具体的に銘柄選定に入ろうとしていた。

使うのは発売されたばかりの『会社四季報 夏号』。

四季報は、その名のとおり季刊誌だ。

春、夏、秋、冬(新春)と4回出るのだが、その中で夏号が一番重要なのだ。

なぜなら、日本の企業は、3月決算が多い。

だから、多くの企業の新しい業績予想が載るのは、この夏号からだからだ。



が、その前に、もう一度、遥香は思い出すことにした。

成功するかどうかを事前に知る方法があるのだから、自分がそれに合致しているかを確認するためだ。



――【孫子】――――――――――――――――――

そこで、その具体的な比較方法としては以下の通りであり、その優劣を探るのである。

つまり、どちらの君主がより国民から支持されているか、

どちらの将軍がより有能であるか、

どちらの国がより自然的、地理的条件を得ているか、

どちらの法令がより厳格に適用されているか、

どちらの軍隊がより強力であるか、

どちらの兵士がより熟練しているか、

どちらの賞罰がより明らかであるか、である。

以上のことを分析することにより、戦争を行なう前から、勝敗の行方を知ることができるのである。

――――――――――――――――――――――――


――【投資】――――――――――――――――――

そこで、その具体的な比較方法としては以下の通りであり、その優劣を探るのである。

つまり、どれだけ目的に対して謙虚に臨むことができているか、

どれだけ良い銘柄を見つけられているか、

どれだけ時間的、環境的条件を得ているか、

どれだけ投資法に従った行動ができているか、

どれだけ種銭に余裕があるか、

どれだけ株式投資のシステムを理解しているか、

どれだけ見切りが厳格に運用できるか、である。

以上のことを分析することにより、株式投資を行なう前から、成否の行方を知ることができるのである。

――――――――――――――――――――――――



目的に対して謙虚になる、つまり目的意識を明確に持つ。

自分は、10年で資産を100倍にする。

1年で、1.75倍にする。

月当たり、5%の利益を上げる。

逆に言えば、種銭の5%だけで構わない。

焦る必要は無い。



銘柄は、デイトレだけど、好業績銘柄だけに絞る。

好業績であれば、暴落を食らう確率が低い。

多少失敗しても、底力で戻してくれる。

だから扱う銘柄は、四季報で決めることにしたのだ。



時間的、環境的条件は・・・・、うん、ニュースを見て、新聞を読もう・・・。



決めた投資法は、何があっても逸脱しないようにしよう。

遥香は、MM法や3本陰線の投資法をよろずのから教わった。

そしてもう一つ、キレイなチャートの波乗り投資法も教わっていた。

考えた結果、自分にはこの『キレイなチャートの波乗り投資法』が一番ピタリと来たので、それで始めることにした。



種銭は、当初の目標の100万円を超える144万円がある。

よろずのにそのことを伝えると、100万円で始めろと言われた。

44万円は無いものと思えと言われた。

つまり、100万円で始める。

しかし、思い通りに増えずに95万円に減ったら、44万円の中から5万円を足して100万円にする。

そして、一から仕切り直す。

それが心の余裕に繋がって、良い結果をもたらすと教えてくれた。



株式投資のシステムは、この2年間で嫌と言うほど教わった。

誰もが認める良い銘柄は、絶対に買えない。

売る人がいるから、買えるのだ。

なら、売る人は、どういう思いで売っているのか!?

まだまだ騰がると思いつつ売る人は、本物のバカか聖人だけだ。



そして最後に、どれだけ見切りを厳格にできるかということになる。

こればかりは、実際の売買しないと確認できない。

ただ、『カブトレ』では、出来た、やった。

躊躇せず、売買することができた。



だから、自分は出来るのだと、遥香は自分に言い聞かせた。

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