第14話 弟子、投資法は2種類しかないことを知る
よろずのがそれほど長くない研究の成果として、儲け続ける投資法は2種類しか存在しないという結論に達している。
あくまで現時点までの成果だが・・・。
だから、この2種類のどちらを選ぶかによって、投資のやり方は大きく変わる。
そして、変わる以上に、この2種類以外の儲け続けられる投資法は存在しないということを理解し、他の投資法で儲けられるのは一時だけだということを自覚し、怖がる必要がある。
よろずのは、そのことを遥香に理解させようとしていた。
「いつまでも、目的だの目標だのという面白くない話をしていてもあくびが出るだけだから、投資法に関する具体的な説明をするね。まず、投資法は2種類しかないんだけど、分かる??」
急によろずのの話が具体的になったので、『ハルの笑顔に負けたんだ!!』と結衣は勝手に解釈した。
『若いって
自分もさんざん得をしてきた身分なのに・・・・。
因みに、当のよろずのは、ただ単に遥香の興味が逸れないように配慮していただけで、そういう思いは全く無かった。
「二種類ですか・・・、それはキャピタルゲインとインカムゲインのこと??」
遥香が自信なさげに答える。
「それは、投資から得られる利益の種類だから、投資法ではないよ。」
「じゃぁ、短期投資と長期投資ですか??」
「それは単なる時間的な長さを言ってるだけで、投資法ではない。」
「えーっ、それじゃぁ・・・・、現物取引と先物取引。」
「それも、取引の形態を言ってるだけだから、投資法ではない。」
「えーっ・・・・、じゃ、分からないです。」
多少ふてくされ気味に遥香が言う。
「そうだよね、分からないはずだよ。オレ自身、今までそういうことを書いてある本見たこと無いから。」
「えっ、じゃ、どうしてそんな意地悪なこと聞くんですか??」
よろずのに弄ばれたと思った遥香が、口を尖らせながら言う。
「それは、今まで出版された投資本に書かれていないということは、門外不出の秘法だということだよ。弟子だから教える。それを実感してもらうために、質問したんだよ。」
「あ、そういうことですか!?」
「そういうことだよ。だから、この2種類はしっかりとノートに録っといてね。」
「はい。」
よろずのに言われて、遥香はノートに録るために身構えた。
「2種類の投資法というのは、『損切り投資法』と『戻り待ち投資法』の2つ。」
「損切りと戻り待ちですか・・・。」
「儲け続けるってことは、再起不能になるような大損はしないってことを意味する。つまり、儲け続けるってことは、大損を回避する投資法の意味になる。」
「大損をですか・・・・。」
「小さい損も積み重なったらと思うかも知れないけど、今はその部分は流してくれていい。後で説明するから。」
「はい。」
「大損するのは、株を買った後に下がっているのに騰がると思い込んで売らず、大きく下げた後に諦めて売るから大損になる。だから、大損しないってことは、買った株が下がる前に売るか、下がっても持ち続けて再び上がって来たところで売るかの二種類しかなくなる。」
ここでよろずのは、二種類の投資法の要諦を細かく説明した。
損切り投資法は、買った銘柄が下がって損失が小さい間に売る投資法を言う。
戻り待ち投資法は、買った銘柄が下がっても持続し、再び騰がって来るのを待ってから売る投資法を言う。
「なるほど。でも、この二つって損したときの投資法ってことですよね。」
「違うよ。どんな投資法でも儲かったら、自由に利食い売りしたら良いんだよ。投資の世界に、百発百中は無い。良くて5割。3割程度の勝率でも、億り人と言われている投資家は、いくらでもいる。つまり、投資家にとって最も大事なのは、買った時の対処方法ではなく、負けた時の対処方法ってこと。」
「負けた時のですか・・・・。」
「そうだよ。10万円を100回儲けても、1回で1,000万円損したら、100回の儲けも無かったことになるでしょ。」
「そうですね。」
「だから、投資の世界では、いかに上手に勝つか、儲けるかよりも、いかに上手に負けるか、損するか、の方が重要な問題になる。」
「そうなんだ・・・・。」
「勝負って勝ち続けなければいけないと勘違いしている人は多いよね。高校野球みたいに1回負けたら終わりのトーナメント戦で優勝するならそうなんだけど、プロ野球みたいなリーグ戦、それも同じ相手と20試合以上するみたいな状況で優勝するなら、勝ち方より負け方の方が大事になるんだよね。スポーツニュースとかで、次に繋がる負け方とか、次に響く負け方みたいに言われてるの聞いたこと無いかな!?」
「あたし、余りスポーツに興味無いから・・・・。」
遥香はあいそ笑いをしながら答えた。
「まぁ、投資というのは、そういうもんだから、1回や2回負けたって、どうってことない。逆に、最初から1回や2回負ける覚悟でやるべきもんなんだよ。」
「はい。」
そう言われて、何か分かった気になった遥香だった。
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