第11話入れ替わる立場に恐怖した彼女
サイクリングから数日が経過したある日、無性に灯莉の隣に居たくなった私は彼女を呼び出すことにした。
彼女を恋しい──と感じることは以前にはなかったと言っても過言ではないはずなのに、何故か彼女と居ないことが不思議と寂しさを感じていた。
どうしてしまったんだろう......私?
インターフォンが鳴り、玄関扉を開けると灯莉の姿があり、サンダルが玄関に出ているにも関わらず履き物も履かずに裸足のままで灯莉に抱き付いた私だった。
抱き付かれた彼女は突然の抱擁に可愛い悲鳴をあげ、驚いていた。
「ひゃあっ!えっ?なっなななに?芽愛ぃ......」
「灯莉ぃ、灯莉灯莉ぃ~!ああぁぁ......」
「くっ、苦しい......芽愛。そろそろ」
「ああっ、ごっごめん!痛かったよね、灯莉......」
彼女に手を合わせながら謝り、浅く頭を下げた私。
「そこまでしないでよ、芽愛っ......今日はどうしたの?」
「灯莉に会いたくなって。ごめんね、急に呼び出したりして。面倒だったよね......?」
「面倒なんかじゃないっ!......嬉しい、芽愛に会いたいって言われたの。私も芽愛に会いたかったよ......」
「ありがとう、灯莉ぃっ......好き、好きだよ、大好きっ!」
「わわっわかったから芽愛の部屋で話そうっ!玄関じゃなくて!」
「そっ、そうだね」
取り乱した彼女に部屋で話さないかと促され、首肯した私は彼女と自室に急いだ。
エアコンの冷房が効いた自室に彼女を招き、彼女の手を取ったまま彼女をベッドに倒れさせ、勢いにまかせ、彼女の唇にキスをした。
舌をいれようとした寸前に彼女が肩に手を伸ばし、拒まれたので諦めた私。
「はぁはぁ......今日はどうしたの、芽愛っ?抱き付いたり、キスしてきたりしてっ!?惚れ薬でも飲まされたの!?」
「灯莉がいつも平然としてきてるやつだよ。何で動揺してるの、灯莉?」
「答えになってないよっ!お兄さんに変なことされておかしくなったの?」
「えぇ~そんなことするわけないよぅ~灯莉ぃ~怖がらないでよ~いつもしてくれるみたいに──」
「いっ、ひぃっ!嫌ぁ~っっ、芽愛ぃぃ正気に戻ってぇ~!!」
灯莉の表情がひきつって、悲鳴をあげ続ける彼女だった。
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