第7話灯莉に壁まで追いやられ

あれから一週間経ったが未だに灯莉と会話を交わせずにいた。

彼女が近付いて声を掛けてきても思わず避けてしまうようになってしまった。


だって、あんな......あんなことをされれば。


放課後になれば、そそくさと教室を出て、帰宅を急ぐようになった私。

そんな私にクラスメート達が疑問を抱き始めていた。


「最近、やけに帰るの早いね。どうしたの?」、「何かあった?」といった声を掛けられるようになっていた。


本日の放課後、現在──灯莉に呼び止められ、捕まらないように逃げていた。

追いかけてくる足音が背後から聞こえている。

階段に差し掛かり、階段を駆けおりるが足音の勢いが一向に落ちない。

体育館に繋がる渡り廊下に出るが距離を詰められてしまう。

渡り廊下の死角になる所に来てしまい、追い付いた彼女に追いやられてしまった。


ドンッと両手を壁に付け、私の逃げ道を無くしてきた彼女。

彼女の荒い息づかいが間近に聴こえ、熱を感じる吐息が顔に掛かって、あのときのことを鮮明に思い出させるには充分なものだった。

「はぁはぁ、待っ、待ってって言ったのに......あのときのことをっ、はぁはぁ......謝りたくて」


彼女の紅潮した頬と全力で追い掛けてきたために流れた汗でブラウスが透けてブラや素肌が露になって、視線を逸らしたくなる。


「......」

「ごめん、芽愛......嫌がってたのに、無理や──」

「そっ、それ以上はっっ!言わなくて......いい、からっ。私もごめんね、つい......あの、気まずくて。思わず避けてしまって......灯莉と一緒にいるとあのとき感じたことがよみがえると思って」


胸の鼓動がとくんとくん、とくんとくんとくんとくん、どくっどくっどくっと早まるのを感じていた。

この状況を誰かに見られでもしたらといった不安が脳内に駆け巡る。


「芽愛と話せない日々が続いて、胸が苦しかった。悲しくて悲しくて......以前みたいには戻れないかな?芽愛......」


「まだ整理が......整ったら。私から声を掛ける、のはどう?灯莉」


「う......うん。また話せるなら......」


こうして、二人の間にできた溝は多少ではあるが浅くなった。



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