ぼっちの俺には青春というものは似合わない。
結城 白舞
第1章
第1話 かくして俺の高校生活は始まりを告げる。
突然だが、1つキミ達に問おう。友達、とはなんだ?
俺は友達というものが居ない。いや、そんな存在を作ろうと思ったことが無い。
そもそも、何処からが友達なのか俺は知りたい。学校やクラスで話すから? いいや、違うね。そんなのはクラス、班といった小さなコミュニティの中、誰かをハブくといった事実を作らないための偽善である。
だから俺は友達というものを作らなかった。得体の知れない友達という存在に依存し、縋ることの無いように。
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今日は高校の入学式、殆どの人からするとこれからの高校生活を決める大切な日だ。しかしこの俺、
高校の玄関に貼ってあるクラス割りの表を見る。クラスは1ーB。他の名前を一応見ておくが、知った名前の奴は一人もいなかった。直ぐにその場を離れ足早に教室へ向かう。
教室に着き、ガラガラとドアを開けると先に教室に来ていた人達からの視線を浴びる、が直ぐにその視線は元の場所へと戻る。教卓の上にある座席表を見て自分の席へ向かう。運のいいことに俺の席は窓側の1番後ろだ。
持っていたカバンを足元に置き、持ってきていた文庫本だけを取り出す。そして椅子に座り文庫本に目を落とす。こうすれば話しかけるハードルは上がる。わざわざ本を読んでいる見知らぬ人に話しかける奴はいないだろうから。しかし例外というものは常に存在する。俺にとっての例外は厄介なことに隣の席の少女だった。
「ねぇ。」
と声をかけられて1度顔をあげる。声の主を探すためにキョロキョロと辺りを見回すと、隣の席の人がこちらを見ていた。
「私、
隣の席の少女、鬼怒は輝く笑顔でそう言う。
黒くサラサラとした髪は肩ら辺まで伸びていて、一目見た印象は可愛らしい陽キャ少女。恐らくセンターでは無くともそれに近しい立場をこれから持ちそうな人だ。こういう俺とはほぼ遠い存在の人が声をかける人はクラスの人全員に優しいタイプの人間だ。しかしその優しさは時には反対の意味となる。それが異性慣れしていない人間なら尚更だ。今後鬼怒とは関わることは無いし、面倒くさいので一言だけ言葉を発した。
「…神崎だ。」
必要最低限の自己紹介。相手に与える印象は最悪だが、それもぼっちの俺には関係の無いこと。しかしそんな返し方をされても鬼怒は笑顔ひとつ崩さず答える。
「神崎くんだね。うん、覚えた。」
そして鬼怒は視線を前へと戻す。俺も読書を再開しようと思ったが、教室のドアが開き担任らしき人が入ってきたせいで1時中断となった。
俺も視線を教室の前へ向ける。担任は俺たちの方を見て話し出す。
「私がお前たちの担任となった
川内先生にそう言われた右前のやつが立ち上がり自己紹介を始める。特に興味は無いので視線を文庫本へと落とし、読むことに集中することで外部からの雑音をシャットダウンすることにした。
しばらく読んでいると横から二の腕をつつかれる。驚いてその方向を見てみると、鬼怒が俺の二の腕をつついていた。そして小さくこう囁く。
「次、神崎くんの番だよ。」
読むことに集中して自分の番が来たのに気付いてなかったらしい。俺は立ち上がって必要最低限の自己紹介をする。
「神崎 結羽です。 趣味は読書。これから1年間よろしくお願いします。」
席に座ると鬼怒が改めてよろしくね、と言っていた気がしたが無視した。
自己紹介の時間も終わり、今日はもう学校が終わりとなった。素早く帰る準備をした俺は誰よりも早く教室を出る。こういう時素早く帰れるのはぼっちの特技だ。自転車置き場まで行き、鍵を取り外しサドルにまたがる。サドルを漕ぎ始め、スピードをあげる。4月の少し温かい風が俺の周りを吹き抜ける。俺の通う高校、
自宅の玄関をあけ、
「ただいま。」
と言うと、奥から人が走ってくる音が聞こえる。そして玄関で靴を脱いだ俺に抱きつき、
「お兄ちゃん、おかえりなさい!」
と言ってくる。俺の事をお兄ちゃんと呼ぶこの人は俺の妹である神崎
「ただいま。」
と言って頭を撫でてやると可愛らしい声を出して頬を擦り付けてくる。可愛い。癒される。
リビングへ行き制服をハンガーにかけ、おれは自室へ行く。俺はベットに寝転がる。久しぶりに家族以外の異性と会話をした疲れがどっと押し寄せた。明日も話しかけられるのかなぁ…という今まで思ったことも無い心配をし、押し寄せる眠気に身を任せて眠りに落ちた
ぼっちの俺には青春というものは似合わない。 結城 白舞 @hakumu46
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