第6話「実力」

 「いいぞ、いつでもかかってこい!」


 「ふぅ、では、いきます!!!」

 

 ライラの言葉を合図に一呼吸置いたメリィが切り込む。


 「――ライラ様、お久しぶりの再会……いきなりで申し訳ないのですが――今回こそは勝たせてもらいますよっ!」

 

 メリィは勢いを活かした鋭いパンチと蹴りでライラに迫る。

 しかしメリィの拳も蹴りもあっさりとライラに躱され空を切るばかりだ。

 

 流石に一筋縄で勝てる相手ではなさそうだ。


 「あいつ、やるなぁ……だが」


 これは作戦通り。

 まずメリィが突っ込み隙を見てからオレが奇襲する。

 

 今後の戦いの基本になってくるであろう役割分担だ。


 「ただメリィもライラも様子見に徹していて本気を出していない、これじゃあまるでお見合いだ……仕方ない」


 オレも出張るか。

 武器使用許可の条件、オレは試合前に装備した木刀を握り、戦闘中の二人との距離を急いで詰めていく。


 「このままじゃ埒が明かない、メリィ! オレも行くぞ!」


 「了解しました!!」

 

 その言葉を合図にメリィは薙ぎ蹴りでライラを後方へと下がらせた。

 

 「もらったッ!」

 

 ライラが退いた先には木刀を振り下ろすオレ。

 ベタな作戦ではあるが、スキル使用禁止のルール下。

 

 つまりは所詮、ただの人間が前後両面からの連撃に綺麗に対処できるハズがない。


 「……甘いな」


 ライラは後ろを振り返る事もなく少しだけ体を横にずらし、オレの剣を容易く躱した。


 「なっ」


 力強く空振りしたオレはライラがサッと出した足に引っかかり、顔面から盛大にコケる。


 「……まったく、戦場なら――」


 「いてて……」


 カッコ悪いが隙を作った。

 そう、オレがコケるのに目を取られているライラの一瞬の隙。


 「これなら!!!」

 

  その僅かな隙にメリィはライラの視覚外から飛び蹴りをぶちかます。


 「判断は良いが飛び蹴りは動きが単調になる欠点があるぞメリィ」


 ライラはその場でピョンと飛び、メリィの飛び蹴りをヒラリと上空で躱す。


 「ならばッ!」


 そのまま蹴りを放った足をバネに後方にバク転。

 その回転を利用したオーバーヘッドキックでメリィは空中で身動きが取れないライラへと追撃を行う。


 「ふむ、やるようになったね、メリィ」


 この戦いで初めてライラは手を使い、メリィ渾身の回転蹴りを受け流す。

 ――だが、受け流しは完全ではなく食らった蹴りの威力が推進力となりライラは地面に向かって斜めに、猛スピードで落下する。


 こうなればどんな達人でも次の攻撃を防ぐ事は難しいだろうぜ。

 

 「……お前は終わりだ」


 オレはライラの落下予測地点にしれっと移動していた。

 「直線的な攻撃は容易く回避される」ライラと戦う前にメリィが教えてくれた事だ。

 

 だからオレは敢えてメリィに読みやすく躱しやすい大技な攻撃をメインで戦う事をお願いした。

 

 「作戦は単純、次から次の裏取りに重ねる裏取りだ、メリィの一撃が重い技ばかりだからこそお前は避ける事しか選択できなかった」

 

 剣を野球のバッターの様に構え、オレはただ真っすぐに背中から落ちてくる事しかできないライラに勝ち誇る。 

 

 「おりゃああああああああ」


 ジャストミートのタイミングでオレは全力で木刀を振りかぶった――。


 「はッ!!」


 ――刹那、ライラは体を空中で切り返して正面を向き、オレが振り上げた木刀に回し蹴り。

 木刀はバラバラに砕け散り、同時に衝撃波が地面を抉り直進。

 花壇や木々を粉々に破壊して十数メートル離れた場所にあった噴水を大破させた。

 

 「……うっそだろ? おい、まじかよ」


 こいつ本当に人間なのか?


 ストンと優雅に着地したライラを隣にオレは茫然と立ち尽くす事しかできなかった。


 


 

 「そこまでッ!!!!! バカタレどもが辺りかまわず庭を破壊しおって……だがよく分かっただろう互いの実力が」


 キタハシは庭の惨状にそこまで怒っておらず、寧ろこうなる事も想定内という感じの態度のまま話を続ける。


 「いいか? サク君、メリィ君、それにライラもだ……強くなれ、今以上に――そして魔人を撃退し必ず一人残らず生きて帰ってこい……これ以上私の言葉は不要か」


 「いやちょっと待ってくれ」


 最後にこの男の言葉に偽りがないかオレは聞いておきたいと思う。

 コラーク領主アルベルト・キタハシが誠の心でオレ達に向き合っているのかを、口八丁で体よく利用しようとしているだけではないのかを。

 

 「……最後に聞きたい、キタハシさん、貴方は何故転生者にそこまで肩を持ち……そして信じる事が出来る? 少し役に立つかもしれないが、たんなる流れ者に過ぎないオレ達を」

 

 「――簡単だ、私がコラーク解放の英雄『勇者キタハシ』の28人目の息子であるからだ、我が父と同じ境遇を持つ転生者を救いたいと願うのは至極当然の事だと思うがね」


 ………………なるほど……納得できる理由だね、うん……。

 

 それにしても先代キタハシさんもしかしてエロゲ主人公?

 

  ~~~~~~~


 名 前:ライラ・リ・アレクサンドル・ジブリール・サナエ


 レベル:77


 スキル:【???】


 ライラの能力値


   H P: 1111


 こうげき: 578


 ぼうぎょ: 280


  まほう: 113


 すばやさ: 720


 かしこさ: 80


  そうび:剣士の鎧【白銀】


     :聖剣アルファシア


     :退魔の水晶+


 称号「剣姫」


 ~~~~~~~

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