第4話

【陸上部の仲間 須美】

 ふくらはぎの怪我のことですか? あれは、最悪でしたよ。

 あの日、ダッシュの練習をしていたんです。男女構わず、横一列になって、「よーいどん!」って感じで、飛び出しました。飛び出した瞬間、ふくらはぎに激痛がきました。と思ったら、その瞬間私は倒れていました。

 痛すぎるふくらはぎを見ると大量の血が流れていました。血のせいで意識を失いそうになりましたよ。その少し後ろに柚も倒れていたんです。

 最初、何が起こったかさっぱり分かりませんでした。え? なんで私倒れてるの?ってね。

 柚も何が起こったか分かっていないようで、呆然としていました。

 陸上部のメンバーや先生が駆け寄ってきて、やっと何が起こったのか分かりました。

 柚のスパイクが私のふくらはぎに刺さってしまったんです。

 こんなことある!?って耳を疑いました。柚は、事態を理解した後、何回も謝ってきました。私は、「全然いいよ。しょうがないじゃん」って笑顔で言いました。えらいでしょ?

 その後、すぐ病院に行って、全治3ヶ月と知った時、それまで「痛いなー」としか思わなかったのに、急にドン底に落ちた気分になりました。

「夏の大会出れないじゃん」

 私は、がっかりしました。そして、急に柚のことが許せなくなったのです。

 しかも、柚は謝ってきたけど、柚の親は謝ってこなかったんですよ。普通、自分の子が他人に怪我させたら、菓子折りとか持って謝りに行きますよね?

 それが一切なしですよ。ありえません。どんな神経してるんだか。まぁ、柚の親は片親しかいなくて母子家庭なんで、そんな余裕がなかったんでしょうね。

 ほんと、母子家庭って困りますよね。そういう常識が無いっていうか、気が回らないっていうか。

 だから、陸上部の中で1番影響力のありそうな波に

「柚ね、全然謝ってくれないんだよ。ほんとありえない」

って嘘つきました。

 そしたら、あのバカ、それを信じちゃって柚をいじめようなんて言い出したんです。うけるよね。

 私にとっては好都合だったから、いじめに乗っかりましたよ。やー、いじめをしてるときは快感でしたよ。

「おまえが私を怪我させたから悪いんだよ」って心の中で思いながら、いじめてました。

 ま、私自身はいじめてませんよ。ただ、見てただけです。

 だって、いじめると見つかった時先生から面倒臭い説教受けることになるし。

 いじめていたのは、波と美記ですね。

 見ながら心の中で

「もっといじめろ」

とは思っていましたけどね。

 どんないじめされていたかって? 

 内ばきに砂入れられていましたね。あとは、「死ね」とか「きもい」などの悪口を書いた紙を机の引き出しの中に入れるとか。陸上部の倉庫あるんですけど、そこに閉じ込められてたこともあったかな。水を頭からぶっかけられたこともあったな。

 もちろん、私はしていませんよ。ただ、見ていただけです。

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