第3話

【陸上部の仲間 美記】

 殺された沼田波とは、同じ陸上部でした。一年生の時、陸上部に入ったのは男子10人女子6人でした。

 その中に、私、雪菜と波、柚がいました。入部したとき、3人は仲良しになって毎日一緒にいました。でもその関係は徐々に崩れていくのでした。

 波は美人でリーダー気質がありました。だから、陸上部でも、みんなから好かれていました。ある日、波はこんなことを言いました。

「最近さ、須美うざくね?」

 須美というのは、同じ陸上部で真面目なタイプの子。規律やルールをしっかり守る優等生でした。

 波は、成績は悪い方で、下から数えた方が早い。そんな波から見たら須美が羨ましかったんでしょう。

 私も成績は悪い方だったので、波の気持ちが凄くよくわかりました。

「うん。私もそう思う」

 つい、同意しました。共感したことで、波は笑顔で

「だよね。じゃあ、須美にちょっとだけ嫌がらせしよ」

 と言ってきました。私は、それが少し楽しそうだったので、賛成しました。

 次の日、須美を無視することをしてみました。須美は「機嫌でも悪いのかな?」くらいにしか思っていなかったと思います。

 でも、その行動が柚にバレました。

「そういうこと、良くないと思う」

 柚に言われました。私は、柚の言葉で我に返りました。そうだよね。やっちゃいけないよね。でも、波は違いました。言われたとき、波の顔は曇りました。そして、その日の放課後、波は私に言ってきました。

「柚ってさ、人の悪口とか言わないよね。さっきだって何あれ。いい子ぶって。偽善者気取り? まじ、むかつく。あー、もうやだ。そう思わん?」

 私は偽善者なんて思わなかったけど、波に逆らえなくて「うん」って言ってしまいました。

 そして、いじめのきっかけになる事件が起こりました。

 陸上は、スパイクを履いて走ります。スパイクって何かですって? スパイクっていうのは、滑り止めのために靴底に打ちつける釘のようなものです。

 野球、サッカーでも使用されますよね。種類が違うけど。陸上では、種目、競技場の特性などによっても使い分けますけどね。

 で、そのスパイクで事件が起きたんです。

 須美と柚は、中距離でした。中距離ってのは、800メートルや1500メートルを走る種目です。

 かなりきつい種目って言われていましてね。私なんか、到底ついていけないハード練習を毎日していました。

 いつものように私は短距離の練習を波としているとき、中距離チームの方が慌ただしくなっていたのに気づいたんです。

 先生も中距離に駆けつけていて、騒がしかったので何かあったのだと思い、私たちも向かいました。

 そこには、須美と柚が二人倒れていました。二人とも意識はあり、「大丈夫か」と周りから言われ、起き上がるところでした。

 どうやら、走っている時に柚のスパイクが須美の、ふくらはぎに刺さってしまったようなんです。

 たしかに、須美のふくらはぎからは、血がだらだらと出ていました。柚は、転んだせいでひざから血を流していました。

 須美は、そのあとすぐに整形外科に行き、全治3ヶ月と言われたそうです。

 柚のせいで、須美は練習ができなくなり、見学することになりました。

 この事件の後、波からこんなことを言われました。

「柚ね、須美に謝ってないんだって」

「え、それひどくない?」

「それな。どんな神経してるんだよ。須美に申し訳ないって思わないのかね?」

 柚に対しての不信感から、いじめが始まりました。

 柚が本当に謝ってなかったのかって? そんなの分かりませんよ。ただの噂です。まー、あの頃は、誰かを仲間外れにしたかったのかもなー。誰かを仲間外れにしたら、なんか気分が良くなるというか。優越感に浸れるというか。そんな感じですかね。

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