神様は慰安旅行なので私が来ました！

第2話（1話ごとに完結）

『かなり食べるんですけど、マミ太らないんですよー昔から』

　そんな夢のような事をテレビの中の若手女優がいった。

「いいなーマミリン、なんで太らないのかな」

　テレビにうつる女優のマミリンが羨ましくて独り言を言った。

『あと、肌もなにもしてないんですよーー』

「なんだそれ！神様不公平過ぎない？おかしいよ！」

　高い化粧水をつけてもなんの効果も感じられない悔しさで言葉を吐き捨てた。

「あーマミリンになりたい！あのぱっちりした目でも、あの高い鼻でも、折れそうなウエストでも、唇でもどこでもいいから！神様ってば！もーーー」

　顔がへこみそうなほど強い力で美顔ローラーをしつつ叫んだ。

「変えてあげましょう！」

　聞き覚えのある声がして振り返った。

「先日はどうも」

　綺麗な青いガラスの目を向けて言った。

「あの時のラップ天使じゃん！」

「また会えるなんて嬉しいです」

「そうね久しぶり！どうしたの？」

「もちろん神様の代わりです」

「やっぱり……今回も神様は？」

「今回は残念ながら同窓会に行かれまして」

「同窓会なら仕方ないですよね……」

（タイミング悪いよ、同窓会）

「なので私が参りました！」

「今回はラップくんにはちょっと難しいと思うのよ、気持ちは嬉しいけど」

「大丈夫ですよ！入れ替わり系流行ってるので頑張って習得してきました」

「本当⁉︎女優のマミリンにできる？」

「やってみます！目を瞑ってください」

「うん！」

　ワクワクしながら目を閉じた。

ボフボフーーン

（また、おなら音か）

（マミリンになってますように）

　自信ありげな天使の声を信じつつ祈った。

「では、目を開けてください」

　おそるおそる目を開けた。

「これがマミリン？！」

　視界に広がったのはマミリン………ではなくのっぺりとした顔のいつもの私だった。

「私じゃん！なんも変わってないじゃん」

　ガッカリして言った。

「いえいえ変わりましたよ」

「慣れ親しんだ私のままだよ？」

「もうしばらく待てば分かるのでお待ちください」

「どういう事？徐々に変わるの？」

「お腹も減りましたしオムライスでも食べながら詳しい話はしませんか？」

「いいわね」

と答えたところで自分が作るのだと気づきキッチンに向かった。

「オムライス楽しみだなー」

　天使の無邪気な声が聞こえた。

「いただきます」

　天使は子供らしいかわいい大きな声で言った。

「おいしい！おいしいです！」

　天使の嬉しそうな顔がかわいいなと思いつつオムライスを食べた。

「あれ、お腹いっぱいにならないな」

　珍しくおかわりをして食べる事にした。

「入れ替わりましたよね？」

　おかわりを綺麗に完食したところで天使は言った。

「え？」

「マミリンさんという女優の胃と交換しました」

「どういう事？」

「どこでもいいからマミリンさんになりたいと言ってたので」

「待って！待って！なんで胃なの？」

「そこが彼女のアピールポイントでもありますし」

「目とか鼻とか口とかあったでしょ？」

「最大限がんばったんですけど、なんせ見習い天使なもので」

「それで胃だけ？」

「すいません、なので彼女のように食べると太りますからご注意ください」

「なにそれ？」

「ですから胃だけしかマミリンさんじゃないんですよ……」

「なんでやねん！」

　ツッコまずにはいられなかった。

その後の食事は

夜　ステーキ2人前とケーキとプリン

朝　焼き肉丼とラーメンとタピオカジュース

昼　大盛りチャーハンと唐揚げとアイス

「太る太る太る！むりむりむり！限界！！」

「マミリンさんかなり食べる方なので」

「これ以上無理！戻して！！」

「せっかく憧れのマミリンさんになれたのにですか？」

「うん！戻して！」

「2度とマミリンさんになりたいと言わないなら元に戻せます」

「言わない！口が裂けても言わない！」

「わかりました、戻しますね」

　ボフボフン

「さあ、戻りましたよ」

　目を開けると何も変わらない私がいた。

　おそるおそる焼肉丼を一人前食べてみた。

「お腹いっぱい！やった！」

「良かったですね、一件落着ですね」　

　天使は無邪気な笑顔で言うと光に包まれ前回同様あっという間に消えた。

「マミリンの胃だけってなんやねん！」

　見えなくてもまだいるかもと思いツッコんでみたが返答はなかった。

　その後一度たりともマミリンになりたいと思わなくなった。

すげー自分が愛しい！

自分（の胃）サイコー！

天使のおかげかも？

多分？

おしまい