神様は慰安旅行なので私が来ました!
茶碗蒸し
第1話(1話ごと完結)
「今すぐ美人になりたーーーい、神様!」
我ながら大きな声が出た。
その理由は先程、告白して玉砕したばかりだったからである。玉砕どころかもっとひどい。
「俺、彼女作りたいと思ってなくて」
朝一告白した私にイケメンの上司はそう言っていた。たしかに言っていた。耳掃除が日課の私が聞き間違えることはない!
それなのに……
「美人は別だよなーみかちゃんに告白されたら付き合っちゃうでしょ」
とかなんとか言いながら夕方仕事終わりに告白したみかちゃんと付き合いはじめたのだ。
「意味がわからない!せめて1日とか時間空けてよーーむかつく!ブサイク!」
誰もがイケメンと認める容姿の上司を1人部屋で罵倒した。
「うわーーん、うぉーーーん」
ものすごく虚しくなり声を出して泣いた。
「可愛くなりたい……いや、上司を見返したい……いや、上司ブサイクにしたい……それか」
ふられて玉砕、木っ端みじんになったためか変な願いを唱え出していた。
「上司の顔に必ず鳩のフンが落ちてください、神様」
そんなわけわからない嫌がらせのような願いを唱えはじめた時だった。
ボフボフボフーーーーーーーーーン
盛大なおならのような音がした。
(おなら?してないよ??)
「あ、どうも天使です。」
「天使?」
「はい、願いを叶えにきました」
「本当??」
「はい、もちろんです」
頭に光る輪っかがついていて、さらに白の衣服をまとって空中に浮かぶ男の子は言った。
「天使じゃん」
あまりにもイメージ通りの天使だったので疑うことを忘れた。
「信じていただきありがとうございます。神様をお呼びのようでしたが神様がちょっと忙しくて来れず」
「悩める者を救うために忙しいのね、さすが神様です」
「それに加えて神様会の慰安旅行も忙しいので」
「神様も慰安旅行とかするんですか?」
「それは日頃寝る間もないまま皆様の願いを聞いておりますので」
「なるほど、ありがとうございます」
目の前の天使と思える男の子と神様のお仕事についてという訳わからないトークをしていても不思議とその状況を受け入れていた。
「先程のつづきですが、神様の代わりに私が参りました」
「じゃーお願いきいてくれるの?」
「えーーまぁーーそうなんですが」
「願い事か、そうねーー」
「あのですね、願い事を叶えることはできるんですが」
「できるんですが?」
「実は天使にはレベルがありまして」
「レベル??」
「どんな事も叶えられるゴールド天使、だいたいは叶えられるシルバー天使、簡単なことは叶えられるイエロー天使、小さな事しか叶えられない見習い天使」
「へぇーー」
「で、私はその見習い天使という分類でして」
「小さな事だけって事か」
「はい、あいにく私以外の者は慰安旅行の買い出しに行ってまして」
「小さな事か、上司の頭にフンは叶えられる?」
「実はですね、見習い天使の中でも1番の見習い天使でして」
「ふーん、叶えられないのね?」
「叶えられることがすごく小さな事で簡単なことだけでして」
「うーん、簡単な事か」
「すみませんね」
「じゃー上司が食べたいパンが売り切れとか?」
「それもちょっと難しいです」
「何なら叶えられる?」
「その状況になった時に光ることではじめて私も分かりますので」
「なるほど」
「なのでこのままお部屋で過ごしてていいですか?」
「え、それは……」
「そこをなんとか!」
天使はガラスのように美しい瞳を向けて言った。
「わかった、その時になったら教えてね」
青く美しい瞳に負け断ることができなかった。
その後天使はソファでくつろぎはじめた。
(リラックスしすぎじゃない?)
「あ、すいません」
「いいのよ、くつろいで」
「なにかお菓子もらえますか?」
言われるがままチョコを天使に渡した。
「チョコ好きなんですよ」
チョコを頬張り嬉しそうな顔で言った。
その後天使はソファで私のゲームをしてさらにくつろぎはじめた。
「おかまいなく」
天使は整った顔で笑顔を向けていった。
(綺麗な顔!)
そう心でつぶやきそのまま夕ご飯の支度をするためキッチンに向かった。
「とりあえず、じゃがいもを切ってレンジしないと」
手順を口ずさみつつじゃがいもを切った。
つづけて棚からラップを取り出しじゃがいもにラップをかけようとした。
(ここかな?こっちか?どこかな?)
サランラップの切れ目がくっついていつまでも分からないという無限ループにはまりつつあった。
「あーーもーーイライラする!」
ラップの切れ目がどこか分からないもどかしさで叫んだ。
その時
「任せてください!」
くつろいでいた天使がきた。
「え?」
「ここです!」
そう言うと天使は、指からまばゆい光を出しサランラップの切れ目のスタートの部分を教えてくれた。
「すごい!助かったわ!」
「良かったです」
「さすが天使!」
天使のおかげで無事じゃがいもにサランラップをした。
「ではこれで」
「へ?」
「どうやら私は、サランラップがくっついてどこが切れ目なの?というイライラを助ける事だけができる天使のようです」
「え?だけ?ウソでしょ?」
「天使はウソをつきません」
「さすが天使!……じゃなくて」
「それではまた」
そう言い残すと天使は光に包まれてあっという間に消えてしまった。
「え?え?え?」
戸惑う私の前にあるのは光の余韻だけだった。
「ピンポイント!!」
叫ばずにはいられなかった。
「ピンポイント!ピンポイントすぎる!ピンポイントの王者か!ピンポイントのプロか!」
しばらく1人でピンポイントと叫びまくった。
いつのまにかフラれた事などどうでもよくなり元気になっていた。
「ピンポイント!!!」
最後に今までで1番大きな声を出した時には不思議と気持ちはスッキリして上司の事を忘れる事ができた。
天使は叫ぶことでスッキリさせてくれようとしたのかもしれない!
さすが天使!
多分?
おしまい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます