第8話 お別れ会


まさか、ドルグさんにそんな過去があったなんて…。


そういえば初めてここに来た時、ミラさんが2人の前では角を隠した方がいいって言ってたな。


もしかして、サラさんにも何か魔族に対して嫌な過去があったのかな?



―――私は心が痛くなった。


――――――――――――――――――――――


リックさんとの戦闘から2年が経った。


――――バンッ――――


「魔族戦争が終わったぞ!」


ドルグさんが勢い良く入ってきて、修行が終わりくつろいでいた私達に伝えた。


「なにっ!それは本当か!?」

アルス様が驚き、ドルグさんに聞き返していた。


「ああ、確かな情報だ」


「それで…どうなった?」


「第1魔王ドルザーク、第2魔王ヒューリ、第5魔王グラトバーク率いる連合国の勝ちだ。これで、6国あった魔族国家は実質3国になる。そしてその3国の長である3魔王は大魔王を名乗ることになった」


ドルグが苦い表情で伝えている。


(そっか…!お父様達、勝ったんだ!!)


約7年に及ぶ戦争、長かった!

けど…大魔王になったと言うことは、お父様は無事ってことだ。

本当に良かった!



「それで、国王様が我等に直接伝えたい事があるらしい。今すぐ準備して行くぞ」


「分かった。すぐ準備する。すぐ行くから外で待っててくれ」


そう言ってアルス様は着替えに自室に戻った。


「ペルちゃんはここでお留守番しててね!すぐ戻ってくるから!」


ミラさんが私にお留守番するよう言ってきた。

流石に王城に行く訳にはいかないから、大人しく待つ。


ドルグさん達が外に出て行く。


着替え終えたアルス様が私の所に来た。


「ペルちゃん。いよいよお別れだね。明日、ペルちゃんを故郷に送り届けるよ」


アルス様は寂しそうな顔をして私に言った。


「……」


私は頷いた。

アルス様の好意でここに住ませてもらっていただけだ。

戦争が終われば、故郷に帰る。当たり前のことを。

だが、アルス様と離れ離れになると考えると、目から涙が溢れ出てきた。



――すると、アルス様は私をそっと抱き寄せた。

私は、アルス様の胸元に顔を押し付け泣いた。


――――――――――――――――――――


6時間程経った頃だろうか、アルス様達が帰ってきた。


「ただいま!ペルちゃん」


アルス様が一目散に私の元に駆け抜けてきた。


「ドルグとサラにもペルちゃんが明日、故郷に戻る事を話した。今日はお別れ会をしよう」


――そう言うと、どこから持ってきたんだろうと思うほどの料理が庭のテーブルに置いてあった。


―――――パチッ……パチッ――――


焚き火で魚を焼いている。


外はすっかり暗くなっており、焚き火がとても綺麗だ。


「さて、みんな集まったね。帰り道で言ったけど、明日ペルちゃんは故郷に帰る。7年間一緒に過ごしたペルちゃんは、もう俺らのパーティーの一員であり家族だ。別れは辛いが、今日は楽しもう!乾杯」


そう言うとアルス様はグラスを掲げた。


「「「「乾杯!」」」」


――――ゴクッゴク―――


「ぷはぁ〜」

美味しい!!!


「ペルちゃん。これ美味しいわよ!食べてみて」

ミラさんが平べったい円状のパンを指差していた。

切れ目が入ってる。

私は1つ取って食べてみた。


「!!!美味しい!!」


なにこれ!すごく美味しい!!


「これはね。ピザっていうの」


ピザ。なんて美味しい食べ物なんだ。もっと早く出会いたかった!


「ペル。これも食え」


ドルグさんが差し出したのは、骨つき肉。


「でか〜!でもこれ食べたらもう何も食べられなくなっちゃうよ」


私はお肉よりピザが食べたい!


でも美味しそうに食べるドルグさんを見て食べたくなった私は、ドルグさんのを一口貰った。


「ふふっ。何だか…親子みたいですね。父と娘みたいでお似合いです」


サラさんが私とドルグさんを見て言った。


「なっ!親子みたいなのは俺だろ!」

アルス様がサラさんにアピールしている。


「アルスさんはお父さんと言うより…お兄ちゃん?だと思いますよ」


サラさんは笑いながらアルスの方を見ていた。


「……お兄ちゃん…か…。悪くないな」

アルス様は腕を組み、右手の甲を顎に当てながら考えていた。



「じゃあ私はお姉ちゃんね!サラはお母さん」

ミラさんが会話に入ってくる。


「何でよ。お姉ちゃん。お姉ちゃんがペルちゃんのお母さんでしょ」


サラさんが頬を膨らましながらミラさんに文句言っていた。


「「「ハハハハハハハ」」」


みんなで笑った。



(あ〜楽しいな〜!私みんなに会えて本当に良かった!)



――――ずっとこの時間が続けばいいのに。

ここにいる皆、そう思った事だろう。


この日は夜遅くまで騒ぎ、家で寝ず敢えてテントを張った。


初めてみんなと冒険した時の話をしながら、夜更かしをしていた。


――――気が付いたらみんな、眠りについていた



―――――――――――――――――――――


☆王都ギルド


ペルセラーナ達がお別れ会をして、盛り上がっている頃。

王都ギルドは騒然としていた。


「大変だ!大魔王が攻めてくるかもしれない」

「何故急に!?ついこの間まで戦争していたじゃないか!そんな余裕があるのか?」


「大魔王グラトバークの娘が行方不明らしい。なんでも戦争途中にいなくなったとか」


「はぁ!?そんなの俺らが知るかよ!?」


「攫ったと疑っていた魔族が失敗した事が判明したようだ。他の魔国に攫われていないなら人間の国しかないと…1番近いこの国が狙われたのだ」


「それで…この写真の娘が大魔王の?」


そこには、5歳のペルセラーナの写真があった。


「ああ、幼少期の頃の写真だそうだ。周辺の人間国にこの写真を送ったみたいだぞ。1ヶ月待ち、それまでに返さなければ滅ぼす…と…」



「「「…………」」」


――――この情報は直ぐに王都中に広がった

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