第7話 ドルグの過去
「すまん…助かった。ペル」
ドルグさんが、私に礼を言った。
「これは…聖剣……。ははっ、驚いたな。まさかこんなガキが聖剣を使うとは」
冒険者が私とデュランダルを見て笑った。
【
―――スパーン―――――――
私は物凄いスピードで剣を振った。
「「「…………え?…………」」」
ドルグさんもミラさんも、そして冒険者達も理解できなかった。
なぜなら、さっきまで笑っていた冒険者の上半身と下半身が真っ二つになり倒れているのだから。
……私もビックリした。
頭の中で、デュランダルが私の身体を操り技を教えるという提案をのんだ瞬間、こうなったのだから。
奥で戦っていたアルス様とリックさんも、場の異変に気付きこちらを見ていた。
「あれは…聖剣か。驚いたな。まさか聖剣に選ばれた者がまた1人、現れていたとは」
「ペルちゃん…」
「ふん…さっさとお前を殺して、あの子どもも始末するか」
リックさんはそう言って、アルス様に斬りかかった。
また、激しい戦闘になった。
一方、こちらではまだ、静けさが残っている。
私は身体をデュランダルに預け、残りの冒険者達と戦った。
…戦ったとは言っても、一方的に斬っただけだ。
修行により、ある程度身体は出来ていた。
だが、技術はまだ足りない。
私の技術以上の動きをデュランダルは私の身体で行なった。
たった数回、剣を振っただけなのに、私の身体はクタクタだ。
「ありがとう。デュランダル」
私はデュランダルに礼を言い、デュランダルは光に包まれ消えていった。
私はその場に倒れた。
意識はある…が、もう体力がない。
【
駆け寄ってきたサラさんが回復してくれた。
だいぶ体力が戻ったが、それでもフラフラする。
「ありがとう。ペルちゃん。助かったわ。それにしても、ペルちゃんが聖剣を使うなんて思わなかったわ」
「我もだ。本当にびっくりしたぞ。ペル」
ミラさんとドルグさんは横になったままの私に話しかけた。
「これは、あの場にいた者だけの秘密だったのです。アルスが内緒にしてくれ、と神官達に頼み、口外禁止になりました。2人も秘密にしてくださいね」
サラさんが説明していた。
役割を終えた私たちは、アルス様とリックさんの戦いを見ていた。
―――激しい火花が散っている
両者、斬撃をくらい、ダメージを受けている。
激しい鍔迫り合いの中、アルス様はリックを吹っ飛ばし、距離ができた。
【
エクスカリバーを天に掲げると、雷を纏い始めた。
そしてそれを振り下ろす。
すると―――
――――ドンッ――ピシャャャャャャャン―――
リックを中心に雷が落ちてきた。
煙が舞っている。
中心に立っている人物がいた。
リックだ。
あれを食らってもまだ倒れない。
なんて強さだ。
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…」
2人とも息が上がっている。
再度、両者剣を振る。
だが、先程までの激しい戦闘にはならなかった。
両者力尽き、倒れた――――
――――――――――――――――――――
1週間後。
私達はアルス様の家にいた。
リックさんと生きていた冒険者はギルドに引き渡し、牢に入っている。
リックさんは勇者を襲った罪だけでなく、他国の冒険者を雇い勇者を襲わせた。
かなりの罪だ。
私は筋肉痛でこの1週間寝込んでいた。
森から帰る時も、ドルグさんがおんぶしてくれた。
ドルグさんとは仲は悪くないが、どこか壁があった。
でも今回の一件でその壁は無くなった…と思う。
「ペルが助けてくれた時、思わず昔の事を思い出してしまった」
ドルグさんは暗い顔をしていた。
「昔の事?」
「あぁ、我がまだ小さかった頃、我が住んでいた村は魔族に侵略された」
えっ?
「降伏していたにも関わらず、村人達はどんどん殺されていった。我も殺されそうだった。我は転び追い詰められた。ちょうどペルに助けられた時と似たような感じだ。その時、我を庇ってくれたのは…我の母親だった」
そんな事が…。
つまり、ドルグさんは目の前で母親や村の人達が殺されるのを見ていたってことか。
「斬られた母が我に覆い被さった。血は流れ、息はしていなかった。次は我の番。そう思った時、当時の勇者が助けてくれた」
ドルグさんは苦い表情をしていた。
「もう少し早く来てくれれば…。何度もそう思った。だが、それ以上にもっと我に皆を守る力があれば…その思いの方が強かった。だから我は必死に修行し、アルスとパーティーを組んだんだ」
ドルグさんは私の方を見たまま、話を続けた。
「ペル。今回お前に助けて貰った事で、その思いが更に強くなった。我は魔族が許せない。いつか必ず全ての魔王を倒すつもりだ。聖剣を手にしたお前もいつか魔王を倒すという使命が言い渡されるだろう。その時は、よろしく頼む。我らと共に魔族を滅ぼそう」
ドルグさんは私の手を握り、決意を決めた目で私を見ていた。
――――私は、何の返事もする事が出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます