第3話 聖剣デュランダル



アルス様の家にお世話になって、2年経った。


剣の腕も上達し、光魔法もそれなりに使えるようになった。

アルス様とミラさんには全く敵わないけど…。



いつも通り修行を終え、お風呂に入った後、リビングでゆっくりしていた。


―――――ガチャ―――――


ドルグさんとサラさんが入ってきた。


「魔族戦争に動きがあった」


!!!

(何があったんだろう?お父様、大丈夫かな?)


「どうだったの?」


「あぁ、元々二国間の戦争だったが…他国の魔王も参戦してきた。今は魔王3対3で争っている…。おそらく、勝った方の国が大魔王として君臨するだろう。この戦争が終われば、魔族の勢力図は大きく変わる」


「「「………」」」


ドルグさんの話を聞いた3人は、表情が強張っていた。

私にはあまり理解できない話だが、深刻な状況だという事は雰囲気で伝わった。


「……で、国王様は何か言ってた?」

ミラさんが、し〜んっとした空気の中、ドルグさんに問いかけた。


「魔族がまとまり、強力になる危険はあるが、今はそれより互いに消耗してもらった方がこちらに利になる。警戒は怠らないようにしつつ、暫くは現状維持だ」



「そうか…じゃあまだ暫くは今まで通りでいいってことか。よかった。ペルちゃんと修行を続ける事ができる」


「ペルはまだ、預かっていて大丈夫なのか?」


「ああ」


ドルグさんは私が魔族だという事を知らない。

長期で預かっていいのか、心配だったのだろう。



「そうだ!ペルちゃん。これから私と一緒に教会にいきません?ずっとここにいるより、たまには外に出ましょ!」


魔族の私が教会に入っていいのだろうか?

私はアルス様の方を見た。


アルス様はニコッと笑い頷いた。


私も、人間の国には興味がある。

アルス様達がどういうところで育ったのか見たいのだ。

「行きます!」


私は元気よく答えた。


「俺も行くよ。一応、仮とはいえペルちゃんの保護者だ」


アルス様も一緒に来てくれるらしい。


―――人間の国に来て2年。私は初めてアルス様の家の外に出た。



――――――――――――――――――――――


☆教会



私はサラさんに案内され、教会の中に入った。


大きい石像がいくつもある。


「あれが女神様よ。聖女は女神様にお祈りを捧げるの!」


サラさんは聖女だった。


私はサラさんと一緒に、女神像にお祈りを捧げた。


―――――――――――


―――――――


――――


お祈りが終わり歩いていると、白い岩に剣が4本刺さっているものがあった。

1つは穴が空いており、おそらく全部で5本あったのだろう。


「せっかく来たことですし、ペルちゃんもやってみますか?」

サラさんが笑顔で私を見ていた。


「いや…流石にそれは…」

アルス様は額に汗を掻きながら、止めようとしていた。


「チャンスは皆、平等にあります。それに、もしペルちゃんが聖剣を抜く事ができれば…いつかあなたを超える勇者になるかもしれませんよ!」


サラさんの目は本気だった。


あれ、聖剣だったんだ。

ってことはあの1つある空洞。

あれを抜いたのがアルス様なのか。


私は聖剣の刺さった白い岩に近づいた。


1番右にある剣を握った。


――――グッ…――――


…………ダメだ、抜けない。


2本目。


――――グッ…――――


………ダメだ。



3本目。


――――グッ…――――


―――――スポッ――――――


先程とは違い、簡単に抜けた。

剣が光っている。



――――――ザワッ――――――


私が剣を抜くのを見ていた神官さん達が騒ついた。


「まさか…本当に抜けるとは…新しい勇者の誕生だ!!!」


神官達は喜んでいた。


「皆さん、ちょっと待ってください」


歓喜に沸く神官達をアルス様はとめた。


「ペルちゃんはまだ小さな女の子であり、今は俺とミラが修行をつけている。新しい勇者の誕生は、まだここだけの秘密にしてもらいたい」


アルス様が頭を下げていた。


「…し…しかし…」


「頼む」


オドオドする神官に対し、アルス様は頭を下げ続けていた。


「分かりました。では、しばらくの間、ここだけの秘密に致しましょう。皆、今回の事は一切の口外を禁じる」


奥にいた神官長が、約束してくれた。


でも…聖剣が抜き取られて本数減ってればバレるよね?


「ペルちゃん。聖剣を刺さっていたところに戻して。もう聖剣との契約は済んだから、名前を呼べばいつでも手元にくるよ。俺みたいに持ち歩く必要はないんだ」


そうなんだ。


(この聖剣の名前ってなんだろ?)

そう思っていると


〔我が名は聖剣【デュランダル】。主よ、必要とあらばいつでも我が名を呼ぶのだ〕


頭の中に声が響いてくる。

これは…聖剣の声なのかな?


「デュランダル…よろしくね!」


私は聖剣に声をかけ、刺さっていた所に戻した。


―――私達は家に戻る事にした。


「まさか、本当に聖剣が抜けるとは思いませんでしたわ」

サラさんが帰宅途中、私の方を見て笑っていた。


「俺もだよ」


アルス様は本当にびっくりしたと思う。

私が魔族だって知ってるから…。



―――アルス様と同じ、聖剣使いになった私は嬉しくてニヤケが止まらなかった

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