7恥目 迷うな、道化の花

 1930年、夏――。


 真っ青な空に、高い雲。蝉のうるさい鳴き声さえ心地よく感じてしまう。僕にとって、昭和に来て初めての夏が来ていた。


 都会のコンクリートが蒸し返す暑さとは違う、自然な暑さだ。カラッとした、さわやかな暑さ。

 クーラーはもちろん、扇風機は金持ちの贅沢品なんていう時代だから、団扇や扇子で扇いで涼んでいる。


 しゅーさんは大地主の坊ちゃんだから、今頃は扇風機にあたって優雅に過ごしているんだろう。「ワレワレハ、ウチュウジン」とか言ってるんだろうか。富裕層の贅沢な遊び。そう考えると腹が立つ。


「要、ご飯食べて行きな」

「いつも悪いからいいよ、おばさんも疲れてんのに」

「子供が気を使うんじゃないよ。悪いと思うんなら、後片付けしておくれ。これなら私だって楽だ」

「子供じゃねぇし……」


 ボソッと不満げに呟くと、頭にガツンとゲンコツ一個。ジンと痛む。


「いだっ」

「子供でしょ! 服脱ぎ散らかして、あんたはもう! さっさと食べなさい!」

「すいません! ……御馳走様です!」


 僕を殴ったのは飴屋の爺さんに紹介された豆腐屋の奥さん。もっと簡単に言えば、爺さんの娘。この方にも本当に助けられている。爺さんの娘夫婦が商いをしている店で、人手が足りないからと訳も聞かずにすんなり受け入れてくれた。


「100円を稼ぐには時間がかかるだろうが、朝飯くらいは御馳走するよ」と、有難いことに毎朝仕事が落ち着くと腹一杯に食べさせてくれたりする。

 夫婦揃って活気がよく、僕も若さじゃ負けていないのに、いつも以上にハキハキしなければ気合いで負かされてしまいそうだ。


 そんな夫婦の元では毎朝4時から働いて、途中休憩で朝飯を食べ、朝9時頃まで豆腐屋で過ごす。その後は飴屋に直行。腰の悪い爺さんの身の回りを世話しつつ、子供や学生達へ駄菓子や、文房具を売り、話相手にもなっている。

 

 帝大が近いので午後はそこそこ忙しく、働いて間もない僕でも目まぐるしく動きまわれてしまう。


「あれ、君は人探しの子じゃないか」

「その節はどうも」

「最近見ないと思ったが、此処で働いていたのか」


 学生にも声をかけられる。彼らは僕を知っているらしいが、僕は知らない。が、2人はまるで久しぶりに会う知り合いに声を掛けるようだった。


「この子が“あまくせ“さん?」

「あまくせ……?」


 店に来た男子学生2人組の片方は目を輝かせている。僕は帝大生の一部に顔が知られていた。人探しの子として帝大付近を探し回っていたと、しゅーさんの下宿先に通っていたのが理由だが、気がかりなのはその呼び方だ。


 皆、僕を見るなり「あまくせさん」と呼ぶ。意味がさっぱりわからない。「くせ」なんて付いているから、呼ばれる度に服の匂いを嗅いでチェックする癖がついた。

 

 臭うのか。僕は、臭うのか、そうなのか。


「誰、“あまくせ“って僕の事? そもそも“あまくせ“って何?」


 ノートを買いに来た学生に聞いて見ると、掌をずいっと前に出して咳払い。何か言いたそうにしている。偉そうにチラッとこっちを見ては咳払い。チラッと見ては咳払い。何だコイツ。夏の暑さには要らない、無駄な合間。こちらから何か言わなければ、こいつらは切り出すことは無さそうだ。


「おいおい風邪か? 首にネギ巻いて寝ろよ。うちには置いてないけど」


 そうしたら2人顔を見合わせて、目を見開いては勢いよく詰め寄ってくる。


「わからんかなぁ、少年、歳上には敬意を払うものだよ。君、年下でしょう!」

「はあ?」


 唾がかかってるのが、わからんのかね! ちょっと頭がいいからって調子に乗りやがって。そのでかい態度は僕を年下だと思っていたからなのか。

 

 しかし待て。僕は22歳、この大学生らは同い年や少し下でもおかしくないはずだ。ああ、あれか、見た目の問題か。出ました。お決まりのね。吉次も言っていたっけ。僕は16歳ぐらいに見えると。

 この時代の誰に言っても22歳だと信じて貰えないのは、この時代の16歳があまりに大人びているからに違いない。


 自分でも理解出来てしまうのが悔しい。事実は罪だ。だが。どうせ性別だって偽っているんだから、年齢も「この時代の年相応」に合わせた方が過ごしやすいのかもしれない、と思った。

 あくまで「少年」を装って生きた方が、役に立つことが多そうだ。この街は就活と怪しい奴でさえなければ、あたりがいい世話好きが多い気がする。


「……どうして“あまくせ“なのか教えてください、帝大生様!」

「ふむ、よろしい」


 少しかわい子ぶって、わざとらしくパチンと音を鳴らしながら手を合わせ、前屈みになってお願いのポーズ。ちょろいぞ、帝大生! 満足したのか、腕を組んで得意げに「あまくせ」 について話し始めた。


「津島修治が言ってたんだよ。君が探していたって声をかけたらね、あの“あまくせ“かって」

「しゅーさんが? ……あ、待って。一回だけ言われた気がする」


 確か、トランクケースを持って出かけようとしていた時だったか。


「この、あまくせ!」と怒鳴られた気がしなくもない。就活で忘れていただけで、確かに言われている。思い出した。


「意味を聞いても教えてもらえなかったけどさ。同じ学部だけど学校に来てないから接点も少ないし、あいつはもっぱらシンパさ。聞いた話じゃあ、仏文学科もお情けで入れて貰ったって話しだ。いやぁ、よくわからん奴だよ。噂は聞くけど、どれも確かじゃない。少し気味が悪いよ。そうだ。あまくせさんは、どうして津島にこだわるんだい? 男が男に付き纏うなんて、あやしいぞぉ?」

「な、何が怪しいんだよ……」

「怪しいだろ」


 噂だらけで不登校。底知れぬ闇を感じる。紫色の負のオーラ、お母さんが声をかけようものなら「うるせえババア」なんて返してしまう、実はとんでもない不良野郎なのか……?


 そんな男に付き纏う僕もまた、怪しい男だと認識されているんだろう。ならば大学生の質問に答えるのは余計な事を言わず、簡単に済ませよう。しかし片っぽの男子学生だけがよく話す。片方は美形だけど、あんまり話さないんだな。

 美形の学生と目が合うと、微笑まれたので胸がモヤっと熱くなった。何だか見ていられなくて、思わずよく話す学生の方を向いてしまう。


「僕はしゅーさんの助けになりたいんだ。僕はそう言われて、この街に来たんだから」

「助け? んん? もしかして君は津島の“弟さん“か?」

「弟ぉ?」


 なんだか話しがおかしな方向に行っている気がする。


「そういやぁアイツ、兄弟が多いとも聞いた。あー、なるほど。親御さんに頼まれて東京に出て来て、兄貴を探すのに困っていたのか。それなら付いて回ってもおかしくないな。ああも不思議な奴だと、弟にひっつき回られるのは嫌なのだな?」


 お気づきだろうが、しゅーさんの弟ではない。大体、兄を探し回って東京を一人でぷらぷら歩く弟なんているもんか。


「もしかすると“あまくせ“は、裏で兄が弟を呼ぶときに使う名前かもなぁ。おっと、そろそろ行かねば。あまくせさん、お兄さんと仲良くな」

「学校来いって言ってあげるといいよ」

「え、あ、はい、ありがとう、ございました?」


 店の時計を見て用事を思い出したのか、大学生らは誤解したまま帰って行った。よく話す学生ではない美形の学生は、どこかで見たことがある気がした。

 しゅーさんのことを尋ねるときにあったのか、それとも豆腐屋の客か。きっとそのくらいのことだ。

  にしてもあの学生を見ると暑さを余計に感じてしまう。おかげでワイシャツが濡れてるよ。


 一部始終を見てた爺さんは「とんでもねぇ兄貴だ」と腰を抑えながら爆笑していた。何が面白いんだ。

 

 何度も言うが、しゅーさんは兄ではない。しかし僕には、兄がいない訳じゃない。僕には実は4人の兄が居たりする。兄達に煙たがられるのは慣れっこだが、仮にしゅーさんを兄にしたとしても、あまり良い気分にはならないだろう。


『やめてよ、お兄ちゃん』


 フラッシュバックと言うんだろうか。僕には拒んでも、受け入れるしかない痛みがある。何気なく「兄」と言うだけで体が震える。記憶がないのに、恐れている。腕に力を入れ、治るまで待つと、震えは止まった。

 あの親父、本の内容を消すくらいならこういう曖昧な記憶も消してくれたらいいのに。


 しゅーさんは兄弟が多いのか。けれどしゅーさんは、僕の知っている兄とはきっと違うだろう。不登校であっても、僕の兄さん達のようなことはしないはずだ。


 いけない。肝心なことを考えなければ。そうだ、あまくせって何だっけか。悪口でつけたあだ名だとしたら、やっぱり臭いのか? 自分で体の匂いを嗅いでもわからない。


「僕は臭いか?」

「放屁でもやったか」


 爺さんに聞いたのが間違いだった。


「してねぇよ!」


 僕は放ってもいないのに、なぜか尻を抑えた。爺さんはそれを見てまた笑って、腰をやったようだ。笑いすぎである。


 もしかすると“あまくせ“とは、放屁のことなのか……?


 *

 

 ――それから季節はあっという間に移り変わった。9月には浅間山が噴火して、東京にまで灰が降り大騒ぎになった。まさか昭和に来て初めての降灰に合うとは思わなかったが、先生だけは不謹慎にもテンションが上がっていた。

 この噴火に関わらず、毎日の新聞を見ては、学生時代に習った歴史を思い返す。時々、その先を知っている事件を見てしまうと心苦しくなってしまう。まるで人の人生を決めつけているようで。


 そんな日常を何気なく過ごしていれば、あっという間に夏の暑い日も、残暑もさっさと過ぎ去った。しゅーさんには相変わらず会えずじまい、本のページも戻りはしない。

 

 今は100円を貯めることに一生懸命になっている。11月27日現在、48円溜まっている。半分もいっていないなんて、先はまだ長い。


 今は冬の入り口の11月。帝大近くのこの店の前を大学生達は試験だと忙しそうに通って行く。黙っていてもノートや鉛筆は売れていくし、僕の顔を知っている人は試験の愚痴を言いに来たりもした。


 こんな事、平成ではなかった。どんな話でも僕はしっかり聞いて、笑ってくれるまで付き合った。


「もうすぐ試験だっていうのに、津島は来ないよ。あ、ノートを頂戴」

「はいよ。また、シンパってやつ?」

「さあなぁ。あまくせさんも会ってないのか」

「そうだよ」


 ノートを買いに来た例の、よく話す同学年、同学部の男子学生は買い物に来るたびに情報をくれるようになっている。

 しかし、最近は試験だからとさっさと帰って行ってしまう。


 しゅーさんが心配だ。せっかく東大に入学したのに、それでいいのか? 人生が学歴じゃないのはわかっている。それでも、退学することになったりしては、そこでつまづいてしまうんじゃないだろうか。


 助けに来たなら、まずはそこから――とは言っても、学校に通ってもらうにはどうしたらいいんだろう。頭を悩ませても、怒涛の「あまくせ」返しで終わると想像出来てしまう。


「要、ちょっと用事を頼みたい」

「なんだよ。便所の手伝いか?」

「バカ。買い物だ」


 店先で悩んでいると、爺さんが声をかけて来た。腰が悪いから大抵は便所だ。しかし今回は買い物だと言う。そこらに店があるから、フラフラしながらうまく歩けないと悪態をつきながら自分で行くクセに、今日はニコニコ機嫌が良さそうだ。


「買い物? 何を、どこに?」

「あんぱんを銀座に。娘夫婦には話をしてある。明日1日休みをやるから買って来てくれ。どうしても食いたいんだ、あんぱん」

「いいけど、腰大丈夫かよ。1日1人になるんだぞ?」

「ぼ、僕が、お手伝いします!」


 爺さんと僕の会話に、聞き慣れた恥ずかしがり屋さんの声。店の前に学生服を来た少年が「ただいまです」と会釈して立っていた。学校帰りに東大まで先生を迎えに来る吉次だ。


「吉次! 出来んのか!?」


 吉次は恥ずかしがり屋で、人前に立つと泣き出してしまうような男の子だ。しかし、変人だとわかっている奴にはナチュラルに毒を吐ける才能を持っている。極端すぎる吉次に、爺さんの世話と店番、初対面の人間と会話が出来るんだろうか?


「心配するな、顔見知りだ。お前ん家の先生が朝早く来て、急に古在って人と用事が出来たから預かってくれってよ。お前も吉次も、今日は泊まりだ」

「先生から一言も聞いてねぇし」

「か、要さんは僕らが帰ってきたら寝てましたし、起きる前にお仕事へ行っちゃいましたから……」

「確かにそうだな」


 先生と吉次とは生活が完全にすれ違っていた。だから吉次とは久々に話す。爺さん家に泊まるなんて今初めて聞いたが、吉次はとても嬉しそうだ。


「要さんが頑張っているので、僕もお手伝いしたら、お、お役に立てますか?」


 吉次もこう言っている。爺さんも「心配すんな」と、あんぱん欲しさにそう言っている。


「まぁ、吉次なら大丈夫か」

「はい! ぼ、僕なりにしっかり、やらせて頂きます!」


 力強い返事にを信じる事にした。吉次だって成長したいのだ。大人になりたい、そうなんだろう。それなら僕は、あんぱんのついでに、久々の休暇をのんびり楽しむ事にしよう。


「あ、あの……だから、僕もあんぱん……を」


 モジモジと恥ずかしそうにあんぱんを強請る。やっぱり吉次は子供だ。


 *


 翌日、爺さんから渡された金と風呂敷、それから何故か気になった中身の無い小説一冊を持ち、自転車で銀座に向かった。

 爺さんはバス賃なんかをくれると言ったが、銀座だけではなく、いろんな所を見て回りたかったので自転車で出かけた。


 僕の知っている東京は駅と駅が近すぎる迷路のような大都会だが、昭和は違う。コンビニや高いビルは無い。ペダルを濃くたびにギシギシと音を鳴らす錆びた自転車を走らせながら、古くて新しい東京の街を見て回る。


 うろちょろしていると、太陽は西に傾き始めている。やっぱりバス賃をもらえばよかったと後悔したが、迷う事もまた旅だ。

 さあ銀座はどっちだ。あっちか、こっちか。角を曲がって、道をまっすぐ、ここが銀座か? なんか全部違う気がする、絶対違う。


「銀座? あらやだ、あなた迷ったのね」

「えっ、じゃあここは?」

「品川」

「品川」


 通りかかったご夫人に声をかけてみた。そうしたら銀座の「ギ」の字もあっちゃいない。だから思わず繰り返す。夫人はクスッと笑った。


「そう、品川。嘘じゃなくってよ」

「あ、ありがとうございます……」


 ご婦人はここを品川だと言う。しかし僕の出身は宮城県女川町。いくら情報技術が発達した平成に生まれたからと言っても、東京の地理はちんぷんかんぷんだ。

 つまり品川と言われてもピンと来ていない。この方向音痴と計画性のなさ。毎度の事だが、そろそろ学習してほしい。戻ろうにも何処からどう来たか道を忘れている。


 これは不味い、非常に不味い。あんぱんの買い物は謝って許して貰おう。買いに行っていたらあっという間に日が暮れる。爺さんと吉次には申し訳ないが、こればっかりは勘弁してほしい。

 いつも道に迷うという欠点を忘れていたのだから。


「か、帰ろう! 帰ろう!」


 焦りすぎて笑ってしまう。しかし胸はドキドキ、バクバク。気が気でない。とりあえず自転車を来た方向へ向き直し、立ち漕ぎでタイヤを転がした。

 ああ、遠目に海が見えている。僕は港町の出身だが、あいにく海は苦手だ。一度、命を落としかけたからだ。助かったのが奇跡だったが、あの時あの日の事はきっと永遠に忘れないし、忘れられない。

 

 海は冷たい。広くて、深くて、恐ろしい。しょっぱい、辛い、暗い、最期に還る場所。そんな場所を自らの命を断つ場所として選ぶ奴がいるのを、僕はとても信じられない。


 海で死のうとする奴なんか――。


「海……」


 また、だ。またあの花を意識した。海の事を考えたら、ムラサキケマンが気になって仕方がない。絶対に何かある。海としゅーさんが、確実に何かで繋がっている。

 すると頭の中で、古い新聞記事と小説の一部だと思われる文章が鮮明に浮かんでくるのだ。


【鎌倉で心中を図る 女は遂に絶命 修治氏も目下重態】

【その前夜、袂ヶ浦で心中があつた】


 ハッとした。

 妙な胸騒ぎがして袴の中に閉まっておいた真っ白な小説を開くと、「道化の華」が書き込まれている。頭の中に、今までなかったこの話に関する知識が急に入り込んで来た。そうだ、道化の華には心中描写がある。葉蔵と園という男女が、鎌倉市袂ヶ浦に身を投げて心中するのだ。


 道化の花の作者は太宰治。つまりしゅーさんが書いた作品だ。


 何故、今この作品をきちんと読まずとも内容がわかるのか。

 何故、僕は大嫌いな海の記憶と海での自殺志願者の事を考えたのか。

 

 今日、僕が銀座に買い物を頼まれて道に迷ったのはきっと意味がある。海が見える場所に来たのだって、偶然じゃない。きっとそうだ。先生が言っていた。


『――花がそうさせたと思えばいいんですよ。僕だってありましたよ。大事な時に急に意識させる』


 ムラサキケマンを意識したのはそういう事なのだ。心中、海、修治と書かれた新聞、鎌倉。そうか、そういうことなのか。


「すいません! 鎌倉ってどっちですか!?」


 また、道行く人に尋ねる。案内を受けたその人に示された指のさす方へ、自転車を走らせる。道は悪いが、構ってはいられない。


「おい! 鎌倉まで自転車で行くのかい!」


 後ろから、道を尋ねた人の声がする。


「迷ってられないんだ!」


 僕は迷ってちゃいけない。しゅーさんを助けに行かなきゃ行けないんだ。どれだけ遠くても、この足と気持ちが止まる事は絶対に許さない。待って、まだ早まらないで。ダメだ。いけない。間違えてはいけない。


 貴方に生きていてもらえなければ――。

 

 高ぶった感情に自転車のスピードが追いつけないほどであった。気持ちと漕ぐ力が上手くあわず、ペダルから何度も足が離れてしまう。

 

 それでも叫ばずにはいられない。


「太宰治、しゅーさんの、助けになるから! 待ってて!」


 ギシギシ、ギシギシ。自転車の軋む音は、僕の気持ちを焦らずばかりだった。

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