第4章 グリーングラスの戦い

《七色の蝶が天に繋がり、虹に変わる時、金色に輝く天空へと、我らのリュウが舞う》

 ハンナが、この村に来てすぐ、村の子供たちから教えてもらった唄は、伝説をもとにした内容だと、村の精霊使いのパトラが教えてくれた。村のお祭りの時、子供たちは、輪になってこの歌を歌いながら、輪を大きくしたり小さくしたりして回転しながら踊る。最後には天を仰ぐポーズをするのだが、三歳のハンナが何度唄っても、踊っても、七色の蝶は虹には変わらなかった。

 ハンナは《リュウ》というものの実物も見たことは無かったけれど、姿形すがたかたちはなんとなく知っている。村の図書館で見たのだ。

 図書館の入り口の、入ってすぐの所の壁には、大きなタペストリーが掛けてあった。土台が赤い生地で、その上から全体的に金色の糸で刺繍されていて、更にその上から細かい刺繍が幾つも施されている、ずっしりと重そうな布だった。その大きさは、ハンナの家にある一番大きな出窓の大きさよりも、ずっと大きく、中央には二匹の蛇のような生き物が描かれていた。その生き物は、お互いが、背中を向いていて、右の金色の生き物の口からは、赤い炎が、左の銀色の生き物の口からは、青い炎が出ていた。右の生き物の背中には、身体よりも大きなコウモリのような羽が付いていて、立派な太い二本の脚と尻尾で身体を支えて、空に立つように浮いていた。頭が三つもあって、見るからに怖そうで、強そうだ。左側の青い炎を出している生き物は、頭がひとつだけで、小さな角を頭にひとつ持っていた。羽も随分小さく、脚も小さく弱々しい。その代わりに、胴体はかなり長く、その長い胴体は、ぐるぐると大きく渦を巻いていた。その身体にはうろこが沢山描かれていて、同じように右側の生き物の太いしっぽにも大きなうろこが描かれている。そのうろこの様子は、蛇にそっくりで、このふたつの生き物が蛇のように見えるのは、そのためだった。

 ふたつの生き物の周りには、逃げ惑う人々や、焼け落ちる家などが、緻密な刺繍で描かれている。タペストリーの上の方には、連なる山々が刺繍されていて、その山のうちの一つの山だけが、随分と高く尖っていた。山の中腹には、小さな羽のついた精霊たちもいる。下には、広い海と、海の上を飛ぶユニコーンたちも刺繍されている。海の上を逃げ惑っているようだ。右の端には、大きな川が描かれていて、逃げるように向こう岸に向かう船は、どれも朱色の炎に包まれていて、何隻もの船が川に沈んでいく様子が描かれているようだった。川の向こう岸からは、丸い炎が幾つも空に上がっていた。見れば見る程、細かい刺繍だ。タペストリーの下には、説明書きが貼ってあった。

《グリーングラスの戦い》

 三歳の頃、この村に越してきて初めてそのタペストリーを目にした時、ハンナは吸い寄せられるようにその前に立って、その細かな刺繍の一つ一つを長い時間眺めていた。どれくらい眺めていたのかは定かではないけれど、図書館で働くリンジーお姉さんに声を掛けられるまで、言葉も発せずにずっと立ち尽くしていたのだ。

「それね。金のドラゴンと、銀のリュウよ。私もまだ、実物見たことないの」

 声の方向に振り向くと、はちみつ色の大きなウエーブの髪の女性が立っていた。大人のお姉さんだ。幼いハンナは驚いて、少し身構えた。お姉さんが何を言っているか、理解できなかったからだ。

「この辺の子じゃないね。ママはどこ? 迷子かな? 随分と長い間、じっと見つめているけど、刺繍の技術に興味があるなら、いい学校紹介するよ? お裁縫は、好き? あ、まだ無理かなぁ」

 ハンナには、聞いたことのない国の言葉で話し続けるお姉さんがとても不思議な人に見えた。

「これなあに?」

 ハンナが西の国の言葉で聞くと、お姉さんは、ああ、という顔になって、優しい笑顔で今度はゆっくりとハンナに分かる言葉で話し始めた。

「それはね、金のドラゴンと、銀のリュウ。どこから来たの? お名前言える?」

「あのね、さっき来たの。ドラゴンって、こんな形? リュウってなあに?」

「ああ、初めて見たのね。お年はいくつ? お名前言えるかな?」

 ハンナは、指を三本、リンジーの前にぐいっと出して、はにかみながら答えた。

「ハンナっていうの。三歳。もうすぐ四歳なの。ママ、一緒に来たよ」

 お姉さんは、ふふと笑って、ハンナとタペストリーの間に立ち、右の赤い火を噴くドラゴンを指さした。

「こっちは、火を噴くドラゴン。そして、こっちが、水を吐くリュウ

 ハンナが青い炎だと思っていたものは、水だったようだ。

「悪いやつ?」

「どうかなぁ。どっちも悪いとも良いとも言えないかな」

 ハンナには、その時の、お姉さんの答えの意味がよく判らなかった。難しい顔をして考え込んでいると、お姉さんは急に消えていなくなっていた。きょろきょろとお姉さんを探していると、管内のアナウンスが聞こえ始めた。ハンナには判らない言葉だった。

《迷子のお知らせでございます。入り口受付カウンター前に、ハンナちゃんという女の子が、お母さんを探しております。ハンナちゃんのお母様、おられましたら、一階、入り口前、図書貸出受付カウンターまでお超しください》

 続けて、西の言葉でアナウンスが同じように始まった。今度はハンナにも判った。どうやら、ママを呼んでくれているようだ。自分の名前が、呼ばれたなとハンナが思っていると、ママが慌てて走ってくるのが見えた。

「あれが、ママかな?」

 横を見ると、さっきまでいなくなっていたお姉さんが、またハンナの横に腰をかがめて立っていた。指さされた方向には、髪を振り乱して走るママがいる。

「うん。ママだよ」

 言い終わらないうちに、ママは、斜め前にある受付カウンター前へバタバタと駆け込んで行った。お姉さんとハンナは、怖い顔のママを、少し離れた斜め後ろの位置から見つめるかたちになった。

「ハンナは? あの……母、です。さっき、館内……放送で……」

 たどたどしく、この国の言葉で話すママが、必死な顔をしているのが分かった。その時ハンナとママの目が合った。

「ハンナ!」

「ママ!」

 ハンナが駆け寄ると、ママはハンナのことを、ギュッと一度抱きしめてから、腕を伸ばして、ハンナの目を見て、怖い顔で、小さなひそひそ声で叱った。前にいた西の国の言葉で。

「勝手にうろうろしちゃ駄目って、何度言ったら分かるの? ママ、凄く探したのよ。ここの村のこと、まだよく知らないんだから、前までのようにすぐに見つけられないのよ! もし悪い人たちに連れて行かれたら、ママには二度と会えないよ。それでもいいの?」

 ママに二度と会えなくなる。そう言われて、幼いハンナの心はぎゅっと痛んだ。ママの目が涙でいっぱいになっているのに気が付いて、ハンナは何も言えなくなって、泣き出した。いつも何かに夢中になると、周りが見えなくなって、ママに叱られていたのだ。ママも、ハンナも、何かに夢中になると周りが見えなくなるのは同じだった。 

「ごめんなさぁい。ママ、ごめんなさぁい」

 ふたりが外国語で、ひそひそと話しているのを隣で聞いていたお姉さんは、その会話を完全に理解していて、今度はママと同じ言語で話し始めた。

「とにかく、何事もなくてよかったです。この村も、昔ほど物騒ではありませんが、最近はよそから来る悪い人も増えているので、気を付けてくださいね。あっと、失礼しました」

 よそ者のママに向かって、言ってはいけない言葉を言ってしまい焦ったのか、お姉さんは慌てて自己紹介を始めた。

「あの、わたし、ここで働いている司書のリンジー・ファレルといいます。西の国へ少数民族の文化を学びに去年まで1年程いたので、少しは西の言葉も話せます。最近引っ越してこられたようですので、村の細かいルールなどは、二階のD列の棚あたりに関係する書籍が結構ありますので、ぜひご覧ください。この村の暦とか、慣習、歴史の本とかも……」

 そこまで言って、リンジーお姉さんは、ママが手に持っていた本に目を止めた。

「あ、もうすでに、ご確認済みでしたか」

「ええ、おおかたの本は、見つけることができました」

 リンジーお姉さんは、より一層焦った様子で、頭を掻くような振りをしながら、今度はハンナのことをフォローしだした。

「あ、お嬢さん、このタペストリーが気に入ったみたいで、ずっと、ここでじっとしていましたよ。悪いことは何もしていなかったです。とてもお利口さんでした。私、小さな子が、ひとりでいるのが気になってて、ずっとカウンターの中から、お嬢さんのこと見ていたので」

 ママは、お姉さんが見つめた先のタペストリーに目をやった。

「グリーングラスの戦い……」

「ええ、かなり前の話なんですけど。数十年、いや、百年だっけ。とにかく、すんごい昔の話らしいので、事実かどうかは分かりませんけれど。この村の者は、皆信じています。村人全員で、当時のことを忘れないようにと、二十年おきに作り直すんです」

 リンジーお姉さんの話を聞きながら、まだ泣きじゃくり、しゃくりあげ続けているハンナを、ママはもう一度強く抱きしめた。

「ハンナ、これが見たかったのね。ママ、気が付かなくてごめんね」

「ママ、ほんとう、に、ご……、ご、めん、な、さぁあい」

 ママは、しゃがんだ姿勢のまま、ハンナが落ち着くまで、ぎゅっと抱きしめ続けていた。ようやくハンナが泣き止んだのを確認してママが立ち上がると、リンジーお姉さんもハンナの頭を優しく撫でた。

「ご迷惑をおかけしました。あの、リンジーさん、とおっしゃったかしら?」

「はい」

「とても流ちょうに私の国の言葉を使われるので、本当に驚きました。ところで、このグリーングラスの戦いについての記録も、この図書館にあるのでしょうか。見当たらなかったので」

「へぇ。この話、ご存じだったんですね。村の者は、あまり話したがらないんですけど、他の国でも有名だなんて、なんだか鼻が高いな。あ、でも関連する書籍は、もうここにはないかもしれません。以前は、ここの保管庫に沢山記録された本があったようなんですけれど、火事で殆ど燃えてしまったみたいです。前の図書館、木造だったんですよ。で、今、このように石造りに造り替えた時に、残っていた資料なんかは、村長の指示で、南の島にある保管庫に眠っていると聞いています。貸し出しはしてもらえると思うんですけれど、調べてみましょうか?」

 ママが、お願いしますと言うと、リンジーお姉さんは、急いでカウンターの奥へと戻って行った。ママは、目線をハンナに戻した。

「ねぇ、ハンナ、どうしてこのタペストリーが気になったの」

 ママに、どうしてと言われても、勝手に足が止まったのだから、ハンナには理由など分からなかった。上手に説明できそうになくて、ハンナは首をかしげてしまった。

「ふふ。分からないのね。じゃあ、赤い火を噴くドラゴンと、銀のリュウ、どっちが好き?」

「……んとね。青いお水を出してるほう」

「どうして?」

 ママは意外そうな顔をしている。

「赤いほうはね、強そうだから」

 ママは、一層分からないという顔をして、ハンナの言葉を理解しようとしているようだった。ママが何かを言いかけた時、リンジーお姉さんが戻って来た。手には黄色い紙を持っていて、それをママの目の前に差し出した。

「お待たせしました。申し訳ありませんが、保管庫にある資料は、村長の許可なく見ることが出来なくなったそうなんです。ただ、ご希望であれば、閲覧申請は出来ますので」

「記録、閲覧、申請書、ですか」

 リンジーお姉さんは頷きながら、ご希望であれば、どうぞカウンターでご記入くださいと案内した。ママはその用紙に目を通してからカウンターへ移動し、何やら沢山の文字を書き始めた。

「この国の文字は、良くご存じなんですね」

 リンジーお姉さんが、不思議そうにママを見つめる。

「ええ、読む、のと、書く、のは、好きだったんです。ずっと昔、に、習っていて。昔は、もう少し、話せたんですけれど、グリーングラスの言葉と、いくつかの単語が、違うくらいで、ほとんど同じだと聞いています。でも使わないと、言葉って、話せなくなる、ものなんですね」

 この国の言葉で、ママがたどたどしく答えると、リンジーお姉さんは、笑顔になった。

「それくらい話せたら、十分ですよ。この国の言葉のレッスンが必要な時は、いつでも声かけてください。レッスン料は、ケーキとお茶で充分ですから!」

 ママは、にっこりと笑顔になり、お礼を言い頭を下げた。その日から、リンジーお姉さんは、この村では、ママの数少ない理解者のひとりになった。

 それからしばらくして、資料の閲覧ができる日程の連絡があったのだが、村の図書館では見ることが出来ないという事だった。『あいにく資料が古すぎて、持ち運ぶと破損する可能性があるので、外へ貸し出すことはできない』と、いう事で、南の島の保管庫まで行けば、閲覧は可能ですと聞くと、ママは大丈夫です、行きます。と言って、指定された日に、ハンナを連れて南の島へと出発することになった。ハンナは、ママが何をそこまでして知りたいのかわからなかったが、それよりも、また馬車に乗れることが嬉しくて興奮していた。

 三時間ほどかけ、リンジーお姉さんの書いた地図を頼りにようやくたどり着いた島は、島というには名ばかりの小さな出島だった。島の前には、メガネ型のアーチがふたつある石の橋が架かっていて、ちょっとの嵐では壊れなさそうな頑丈な造りだった。島の周りには、見たこともないくらいの数の精霊たちが、羽をひらひらさせて飛んでいるのが見えている。花々が咲き乱れていて、ハンナには南の暖かい風がとても心地よかった。目の前には海が広がっているのだけれど、海の匂いがしないのがハンナには不思議だった。保管庫と呼ばれているその建物は、どう見ても、普通の民家だった。橋を渡って、木でできた門扉のところまで来ると、門扉に《フラワーバレー記録保管庫 南島別館》と書かれていた。

 ママは、ここよねぇ。と首をかしげながら、暫くの間、門扉の中に大きく広がる花畑を見回し、垣根を右から左へと覗くようにしていた。ハンナは、その間、門の外で飛び回っている精霊たちを捕まえようと、家の前ではしゃぎまわり、声を出してひとり笑っていた。

「うるさいねぇ。今日は、あたしの百歳の誕生日なんだがねぇ」

 前庭の花畑の右端の方から大きな声がして、ママとハンナは、一瞬動きを止めて固まった。声のする方に目をやると、腰がえらく曲がったおばあさんがいた。銀髪のポニーテールの上に紫のシュシュが結ばれていて、カラフルな花柄の半袖ワンピースを着て、エプロンをつけている。

「何か用かい?」

 ママは、どぎまぎしながらも、手に持った地図と、《閲覧許可証》と書かれた紙を、慌てて鞄から取り出し、前に差し出した。

「あの、こちらで、グリーングラス、の、戦い、について、の、貴重な資料が、閲覧できると伺いまして。あの、これ、許可証、です」

 たどたどしいママの言葉を聞いて、おばあさんは、怪訝な顔になった。

「物好きだねぇ。まぁ、いいわ。精霊たちが歓迎しているところを見ると、なんか意味があって来たんだろうさ。さ、おはいり」

 おばあさんが手招きをしてから、背中を向けて玄関へ向かうと、ハンナたちの目の前にあった門扉がするするっと開いた。ハンナは一瞬、機械仕掛けの自動ドアなのかと思ったが、木の門扉の後ろ側から精霊たちが一生懸命押している姿が目に入った。その様子があまりに可愛いらしくて、ハンナは笑顔になり、手を振る精霊たちに向かって、ハンナも手を振り返した。

「この子、精霊使いかい?」

 おばあさんは、振り返りもせずに歩きながら尋ねた。背中に目でもあるようだ。

「いえ、私の、ウエストエンド、の、ユラの血を、継いだのかと、思い、ます。この子は……、グリーングラスとの、混血、です」

 おばあさんは目を見開いて振り返り、その動きを止めた。

「なんだか、厄介なことになりそうな、匂いがプンプンしてきたね。少し前から、このあたりの風向きが、渦を巻くように変わったのは、あんたたちのせいだったのか」

 ママは、何かを言いたそうな顔をしたが、おばあさんが玄関のドアを開けたまま扉を押さえて待ってくれていたので、頭を下げて黙ったまま中へ入っていった。後ろから追うようにハンナもママに続こうとしたのだが、飛び跳ねるように玄関の敷居をまたいだ瞬間に、深い落とし穴に落ちたような感覚になった。足を踏み外したのかと下を見るが、真っ暗で何も見えない。身体は、まだ着地しない。怖くて、ママ!と叫んだが、声は水の中で話すようにくぐもって聞こえた。

 水の中?

 上に上がろうともがけばもがくほど、息ができなくなる。

 ママ! 

 もう一度助けを呼ぶと、大きな空気の丸い球が、口から上に向かって登って行った。底なしの沼に沈むように、身動きが取れないまま、徐々に意識がなくなっていく。頭上のはるか彼方、丸い空気の上にステンドグラスのように様々な色がモザイク状にキラキラと輝いているのが見えた。それは次第に色ごとに分かれて列になり、繋がって揺れる虹になった。

 虹じゃない。蝶々だ。

 そう気づいた瞬間、蝶の虹の向こう側に、銀色のまっすぐな光がひとすじ光るのが見えた。光はどんどん強く大きくなり、渦を巻き始めた。

 これは光じゃ……ない。蛇のような生き物、小さな足……リュウ……。

 薄れる意識の中で、異国の言葉で歌われる悲しい音階の歌が聞こえてきた。幼いハンナには、その言葉の意味はさっぱり分からなかった。けれど、その声のトーンは、明るく透き通る子供たちの声で、悲しい音階の音と不思議と静かな調和をみせていた。子供たちが歌う明るい声が、幼いハンナの耳に繰り返し遠く響く。さっきまで、息ができずに苦しかった呼吸がふと楽になった。金色の生き物は、渦を巻きながら空高く飛んで行く。

 突然、水は消え、今度はピンク一色の世界にいた。目の前に緑色の目をした人が自分を見つめているのが分かって、ハンナは身体が全く動かなくなった。いや、動かないのではない、その人にぎゅっと抱きしめられているせいで、動けないのだ。深い緑色の服を身にまとったその人は、眉毛を下げて、今にも泣きだしそうな瞳をしてこちらを見ているのだが、口元は震えながら微笑んでいた。その人の肩ごしには精霊と虫たちが飛びまわっているのが見える。

 その人は、まるで王冠のようにずらりと繋がった虫たちを頭に載せていた。王冠のセンターにはくれない色の蝶がいる。ハンナは、意識が途切れようとする中、その人に何かを話しかけられたのだが、それは聞いたことのない言葉だった。リンジーお姉さんが話していた言葉に少し似ている。その人の慌てふためく姿と、虫たちでできた奇妙な冠を頭に乗せたを見て、ハンナは思わずクスリと笑った。遠くに子供たちの声が聞こえる。その意味は相変わらず解らないのだけれど、音階が変わるとその音色は温かくなった。

《七色の蝶が天に繋がり、虹に変わる時、金色に輝く天空へと、我らのリュウが舞う》

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