第2章 呪われた子供 ― 消えた世界のなかで

 キャンドルに灯していた炎がドアの方に向かって僅かに揺らめいた。大きな丸い水晶玉を見つめていたサラは、ひとつ大きな溜息をついてからキャンドルの灯を消し、その水晶に厚い紫の布を被せた。消えたキャンドルから、白い煙が風にたなびいて部屋の外へと消えていく。

 ……どうやら、誰かが来たようだ。

 木の玄関の内ドアが重そうに軋みながら開く音がして、どたどたと騒がしい足音が聞こえる。大きな荷物を運んでいる時の、姪のライラの足音だ。一度キッチンに行った足音は、しばらくすると、サラがいる奥の部屋の前で止まった。四回のせわしないノックの後、サラが返事をする間もなく勢いよくドアが開いて、ふくよかな身体つきの健康そうな女性が、奥の部屋の中へと、やはり先ほどと同じように、どたどたと大きな音を立てて入って来た。靴のサイズが合っていないのではないかと思うような妙に大きな音だ。ライラは部屋に入るなり、部屋のカーテンをシャッと音を立てて開け、外開きの窓を限界まで大きく開け放った。午後の強い光と、草いきれのむせ返るような匂いが部屋に充満する。テントウムシたちが、一斉に中へ入って来て部屋の中で楽しそうに飛び回る。冷たいくらいに涼しかった部屋が、あっという間に暖かくなった。

「また、《未来》を見ていたのですか? 真っ昼間から、こんなに真っ暗にしてキャンドルを灯して。太陽エネルギーを使う気はないんですか? 贅沢通り越して、エネルギーの無駄遣いです。浪費家ですね。まったく。地道にお金を稼ぐってことはどういうことか、その《頭》じゃなくて、一度は《身体》で知ったほうがいいですよ」

 ライラは、意味不明な怒り方で、自分の感情をコントロールしようとしているようだ。

「ああ、誰が来たかと思ったら、ライラ、あなただったのね。最近は耳も遠くなって、近寄ってくる足音に気が付くのが、ずいぶん遅くなってきたわ。何をしていたかに気づかれるなんてね」

 サラは、ライラに見せつけるように、嘘っぽい溜息をついた。ライラは腰に手をあてて、怪訝そうな顔つきで眉間にしわを寄せたまま、サラをじっと見つめている。

「かなり集中されていたような顔つきをされていますから……顔色も良くありませんしね。それより、お嬢様は、一体いつお戻りになるのでしょうかね」

「さあね……」

「それにしても、まだ、お互いに三十代なのに、耳が遠くなってきたって……嘘も大概にしてくださいね。私がやって来たことが分かったから、慌ててキャンドルを消したんじゃあないんですか? 未来を見ながら、周りに神経を張り詰めて、その上で結界を張り続けるって、それって、妖力を一度に使い過ぎているんじゃないですか?」

 残念ながら、男系の血筋に生まれたライラには、未来を見る能力は受け継がれなかったようだが、それでも直観力は、ユラの一族のものとあって、なかなか優れていた。

「最近ね、不穏な気配が強くなっている気がしてね。いろいろなことが気になってしまって。あなたの言う通り、妖力の使い過ぎかもしれないわ」

 ライラは、サラがそう言い終わるのを聞き終わる前に、走るようにきびきびと遠ざかって行ってしまった。

 全くあの子は、小さい頃から活動的というか、とにかくじっとしていないし、落ち着きがない……。

 サラは、今度は本物の溜息をつきながらも、小さく微笑んだ。むせ返るような空気を肺いっぱいに吸い込んでから、机の上のキャンドルを本棚の上に戻してリビングへと移動した。しばらくすると、ライラが心配そうな顔でトレーにお茶を乗せてやって来た。

「具合でも悪いんですか? 薬草をお持ちしましょうか?」

「いえ、少し疲れているだけよ」

「そりゃそうですよ。二十四時間、五年近くも、ずっと絶え間なく結界を守り続けていたら、普通の身体なら、とっくに壊れています」

 怒ったようにサラの前にお茶だけを置くと、もうライラは踵を返してリビングから消えていた。ライラは口は悪いが、心根はとても優しい。サラのことを気遣って、こうやって、週に一度は、お説教がてらサラの様子を見にやって来る。そして、ちゃんと周りを見ることのできる能力も持ち併せていた。

 サラが温かいお茶を啜っていると、またライラがリビングに戻ってきた。手も口もしっかり動かしている。本当に働きバチみたいに落ち着きがない。ところがライラは、拭き掃除を始めた暖炉の上の写真立てを手に取ると、突然ぴたりとその動きを止めてしまった。

「お嬢様、修行に出られて、もうすぐ五年ですよね。これは、ここを出られた時のお写真ですよね。きっと美しくなられていることでしょうね。ユラ神様として身分を受け継ぐには十分な年齢になられました。まだ覚醒していないなんて、おかしいと思いませんか。一日も早く戻って来ていただきたいものです。東の果ての国イーストエンドの王が、何度もこちらへ使いを送ってきていると聞きましたが」

「どうやっても、この国には入れないから、それは安心してちょうだい」

「それは、ユラ神様が、この国にいる限り、の話ですよね。本当に、いつかこの国は亡びるんじゃないかと、私は最近思いますけれど」

 大きなデッキブラシを持って、前かがみに掃除をし始めたライラは、不服そうに口をへの字に曲げて、強い口調でそう言った後、まっすぐに背筋を伸ばしてサラをぎろりと睨んだ。それからまた大きな足音を立てて、バケツを持って台所へと向かった。ライラは思ったことを、何でも遠慮なく言う性格だ。裏表のないその性格を、サラは気に入っていた。

 サラは、この国では《ユラユラガミ様》と呼ばれ、人々は、何か困ったことがあるとその解決策を求めサラの元にやって来ていた。先祖代々、女系にだけ伝わる不思議な能力を使って、人々にその時々の最も必要となる言葉を授けるというものだ。信仰の対象というよりは、進むべき道を迷う困った人々にとっての頼れる存在のようなものだった。五年前、サラがある予言をするまでは、この国の人々は妄信的にこのユラ神という存在を信じていた。

 この国は、取り入ることが上手なものが王に気に入られるような国だった。国王が、若い世間知らずの王に変わってからは、なお一層その傾向は強くなっていた。何か困ったことがあれば、すぐにサラに泣きついて来ては、「どうしたらいい?」と、聞くような王だった。その内容は予言で見るまでもないようなことがほとんどだったので、サラはいつも思ったとおり答えただけだったが、そのサラの言葉に、いつも王は忠実に従い疑うことを知らなかった。サラのアドバイス(予言ではなく)に従うと大抵のことが旨くいくので、王は、サラのことを信用しきっていて、国民にもサラの能力は本物だと声高らかに広めてくれていた。そのおかげでサラは、数年前まではお供え物だけで生きていくことが出来ていた。予言者がサラでなくて、もし悪い魔法使いだったならば、とっくにこの国は乗っ取られていた事だろう。

 サラは、『東との繋がりを絶て』などと予言したつもりはなかった。東の果ての国イーストエンドからやって来るであろう災いに繋がる《子供》によって、この国は亡びると予言しただけだった。その予言が、どこをどう伝わって、伝言ゲームの果てにこういう形に変わってしまったのか、分からなかったが、とにかく国王は、サラの予言の次の日には、東の国から来るものを一人残らず追い返せと命令を下し、その責任者にサラを任命した。サラは、その前に修行と称して、慌てて自分の娘を精霊の住む山へ送った。恐ろしい予言を目にして、なんとか娘を守ろうとしたつもりだったのだ。それから五年もの間、サラが自分の妖力を使い、命を削るように村を守っていることなど誰にもわからなかっただろう。

 最近では、サラの予言のせいで五年近く東の国々と交易が止まってしまったことで大損害を受けた村人の中から、『ユラ神の言葉は、実はでまかせだ』と陰口を言う者も出てきていた。しばらくの間は、王がその動きをけん制してくれていたのだが、国境閉鎖に不平を言う者たちの間で、物騒な小競り合いも起こり始め、王はやむなく月に一度、王の軍に交易を命じ認めるようになった。けれど極秘に行われていた交易の品々も結局は市場でとんでもない価格で取引されていて、今度はそれが王の財源とされていると噂になっていた。サラはそれに協力する形で結界を外したりまた閉じたりとかなりの力を消耗させられている。最近では、王の力もあてにできないほどに、交易で稼ぐ者たちは力を持ち始めていて、その裏で王の軍は、王に隠れて潤沢な資金を持つ者たちと結託し、私腹を肥やすようになっていた。サラがどんなにそのことを王に伝えても、怯える王の耳にはもうまともに届かなくなり始めていた。

 サラは、外出した際に石を投げつけられてから、すっかり外に出かけなくなってしまっていた。ユラ神様に石を投げるなど、これまでの歴史になかったことだ。ユラ神様の権威も、生きるために必要なお金や欲には勝てないという事だった。お供え物も日に日に減り、自分の身の回りのことや生活に必要なことは全て姪のライラに任せきるようになっていた。

 ユラ神であっても、見たい未来は自分で選ぶことは出来なかった。天から突然降ってくる未来の映像を、自分の言葉で口にする。それが人々に予言と呼ばれていたものだった。メッセージがくるそのタイミングは様々だったが、往々にしてそのメッセージは、災いに繋がるかもしれない事柄か、人々を幸福へ導くための言葉だった。突然に目の前に映像として現れるメッセージは、その映像の中に自分がいるかのような不思議な感覚のものだった。まるで時空を超えているような奇妙な感覚だ。その言葉を得る度に、サラのエネルギーは大きく消耗していった。メッセージを得ようと祈り続けることは、命を削ることでもあった。

 サラは、幼いころからユラの血に繋がる一族の子として様々な修行を受けてきた。幾つかの能力は、生まれながらに備えていた。虫たちと会話したり、精霊を操ったり、様々な薬草から薬を作りだしたり、そんなことは簡単だった。けれど、千里眼を得られたのは、幾つもの辛い経験をした後に、母から与えられた水晶を使いこなせるようになってからだったし、未来を見る力にいたっては、厳しい修行の果てに、十五歳になって初めて得ることが出来たのだ。夢のような映像を母に話した時の、母の喜びようは凄かった。『ようやく精霊に認められた』そう言って、村人皆が、長く待ち望んでいた新たなユラ神の誕生を国中で祝ったのは、二十年以上も前のことだ。

 キッチンから、野菜スープと香草が混ざり合う美味しそうな香りと、パンが焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。またどたどたと足音がして、バックヤードの扉が開く音が聞こえ、部屋に夏の終わりの風が通り抜けた。洗濯石鹸のすがすがしい香りが、枯れた夏草の香りに交じって吹き抜けて、リビングまで届く。どうやら洗濯も終わったようだ。ここに来てから、一時間以内に、ライラは、五つ以上の家事を終わらせたようだ。この国に、マルチタスク選手権というものがあったなら、きっとライラは、ぶっちぎりの速さで優勝できるだろう。娘には、何もさせてこなかったことをサラは後悔していた。もっといろいろなことを教えてから修行に出すべきだった。と、サラの後悔は日々大きくなっていた。

 大柄で豪快なライラは、自分の娘から見れば従妹にあたる。サラの長兄の娘だ。サラは、兄と十五歳以上も年が離れていたので、ライラの年齢は、サラの娘より、サラの年齢の方に少し近かった。サラの母は、男兄弟ばかりを七人産んでいて、なんとかユラの血筋を絶やすまいとして、八人目の子供でようやく生まれたのがサラだった。八人の子供を育てながら、ユラとしての務めを果たしていたサラの母は、無理がたたったのか、とても若くして亡くなった。サラが、ユラ神として覚醒したすぐ後のことだ。母と過ごした時間は、とても短かった。そのせいか、自分の子供にどう愛情を表現すればいいかが分からなかった。夫は、サラが子供を身ごもるとすぐに亡くなり、ますます頼る人はいなくなった。

 ユラ神は、覚醒する頃には皆、育ててくれた家族から離れる運命なのだと母はサラに小さい頃から教えていた。ユラ神の夫となるものは皆短命だった。まるで、遺伝子を繋ぐためだけにユラ神と出会うようだ。ユラ神のことを良く思わない村人は、陰でサラのことを、《カマキリ》と呼んでいた。カマキリのメスは、交尾の間にオスを食い殺すことがある。という事から、そう呼んでいたのだ。

「あのカマキリめ、国を滅亡させるのはお前だろうが。今度会ったらひねりつぶしてやる。カマキリなんか、この国には要らないさ。何の役にも立ちゃしない。奴らをこの国から完全に追い出すべきだ!」

 ある時、数人の村人がそう話すのを聞いていたサラの兄の農園に住むカマキリが驚いてサラの家にやって来て、『何とかしてくれ』と訴えたことがあった。サラが、あなたのことではないと隠語の意味を教えると、カマキリは、オスを捕食することがあることに対し偏見を持たれていることに憤慨しつつ、とても気の毒そうな顔をしてサラを見つめ、『気にすることないよ、何かあったら力になるよ』と、サラを励ましてくれた。サラには、その励ましは有難かったが、自分が村でどう思われているのかをそんな形で知ったことがショックで、もうこの国に居場所はないのではないかと考えるようになっていた。

 何も言われなくても、てきぱきと動いているライラを見つめながら、サラは、一体自分の娘は、どうなってしまっているのだろうと、また気分が沈んだ。

 あんなに素直で、いい子で、文句ひとつ言わずに修行だけを続けてきた子が、あんな男のためにユラ神になることを放棄して、国を捨てるというのか。けれど、あの男の命も、きっと長くはないはずだ……。

「この国、どうなっちゃうんでしょうねぇ。最近じゃ、もう手に入らなくなっている東の国の商品が、法外な値段で取引されているそうですよ」

 ひと通りやるべきことを終えたライラは、そう言いながら、再びサラのところへやって来て、サラの隣にどすりと腰をかけ、美味しそうなお菓子をお皿に並べ出した。サラよりも先に一口かじって笑っている。

「これは毒見です、この前、命を狙われるかもって気にされていたので。あ、大丈夫そうですね。てか、これ、すんごく美味しいや」

 ユラ神を信じる者たちの中で、そのユラ神であるサラの隣に座り、先にお菓子を食べる度胸のある者は、おそらくライラくらいだろう。菓子を頬張りながら、ライラは機関銃のように話を始めた。

「夕食、作っておきました。オーブンの中です。あと、消化にいいスープもありますから、必ず召し上がってくださいね。パンは全粒粉で、ユラ様がお好きな木の実をいっぱい入れておきました。昨日から仕込んでおいたので、いい感じに仕上がってます。あと、ミルクと、自家製のチーズとバター、家で漬けたピクルスと、私が作ったレモンのジャムも、冷蔵庫に入れてあります。父が、今年の畑では、とても良い野菜が採れたと言っていたので持ってきました。カゴの中の葉物野菜は早めに召し上がってくださいね。腐らせると、父にまた叱られますよ。来月は、キノコをいっぱい持ってきますから、楽しみにしていてください。お洗濯は、今日の日差しだと、二時間もあれば乾くと思うので、取り込むのを忘れないでくださいね。後、キッチンの床、ワックスがけしているので、暫く滑るかもしれませんから、気を付けてください。バックヤードの雑草は、刈り取って、たい肥ポストに入れてます。そろそろいっぱいになってきたので、次に来た時にでも、花の植え替えをします。外の軒下に吊るしてあった鳥のエサかごが、空っぽでしたので補充しましたけれど、もうストックが無いので、次に来るとき持ってきますね。今の季節はいいですけれど、木の実が吊るされていないと、冬に赤い鳥のロビンが来なくなっちゃいますよ。

 あ、これは、ユラ神様への、お供え物ですって。珍しいお菓子ですよね。スミレの花びらの砂糖づけが入っていて、スミレの香りがほのかにしてなんだか幸せな気分になりますよ。とっても美味しいです。私は、バラのクッキーよりこっちの方が好きです。荷物が多すぎて、甘いお菓子だけが持って来られなかったから、ほんとにちょうど良かったです。ついさっき、玄関に置いてあったのを見つけたんですよ。で、これが、お供えと共に置いてあった、お願い事が、書かれたお手紙のようです」

 次から次へとクッキーを口に運びながら、ライラは《言っておかねばならないこと》を、まくし立てていた。ライラが口を開く度に部屋中にスミレの香りが広がってゆく。けれど、サラには、ライラが最後に言った《手紙》のこと以外、何も頭に残らなかった。

 手渡された封筒の表には、《ユラ神様へ》と書かれていて、裏には《願いを託すものより》と記されていた。受け取った封筒に染みついたライラックの香りに気が付いたサラは、思わず封筒から手を離し、床に落としてしまった。

「もう、今日はほんとに変ですね。どうしちゃったんですか?」

 床に落ちた封筒を拾い上げたライラが、この封筒いい香りしますよね。と、お菓子を頬張りながら微笑んでいる。サラは、ゆらゆらと立ち上がり封筒を受け取ると、無言のまま奥の部屋へと向かった。

「本当に大丈夫ですか? 何か、要るものありますか?」

 ライラは、気遣って後ろからついて来る。

「大丈夫よ。いろいろとありがとうね。きっと少し横になれば、落ち着くから。そのお菓子、全部召し上がれ。お供えだから、決してこの家の外に持ち出してはダメよ」

「え? 本当にいいんですか? すっごく美味しいのに、味見もしないなんてもったいないですよ。じゃあ、夕飯後のデザートに少しだけ分けておきますね」

 サラは、それに答えることは無く、ドアを部屋の内側から閉めながら、ライラに向かって笑顔で軽く頷いた。ライラは、何かあったら呼んでください、私はもうしばらくいますからと言って、隣の部屋へと戻っていった。おそらく、あのクッキーは全てなくなるだろうが、そんなことはサラにはどうでもよかった。

 サラは、机の上にあったペーパーナイフで、封筒を恐る恐る開けた。封筒から取り出した三枚の便箋には、何も書かれてはいなかった。大きくため息をつくと、サラは引き出しから小さな香水瓶を取り出し、何かを唱えながらその便箋の上に軽く香水を振りかけた。サラが息を吹きかけると、白い紙から紫色の文字がするすると踊るように浮かび上がり、真っ白だった三枚の紙の上に、びっしりと文字が並んだ。そこには、サラが最も恐れていたことが綴られていた。サラは、さっきまで見ていた、厚い紫の布を被った水晶玉を見つめた。

「この国は……亡びる……」

 この村に災いをもたらす子供がやって来る。その子が両親と共に笑顔で写真を撮っている光景が水晶に映っていたのは半年ほど前のことだ。ただ娘の無事を確認したかっただけだった。突然消えてしまった娘がどこへ行ったのか、毎日水晶を見続けたが、水晶は答えてはくれなかった。ようやく探し当てた時には、ウエストエンドとグリーングラスの血を受け継ぐものが生まれていた。そして、今朝、娘が村外れの宿にいる映像が水晶の中に浮かび上がった。夏の輝かしい光の中で数日前から続いていたこの不穏な気配は、近づく終わりの足音だった。


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