第11話 既知との遭遇

 咲良がどこかえ逃げてしまい、モールに一人取り残されてしまった俺は再び本屋に来ていた。


 さっき咲良から『今日は急にごめんなさい。今度ちゃんと謝るからまた手伝ってね』とメールが送られてきた。


 逃げられた理由は……まあ、自分でもわかってる。デリカシーに欠ける行為だとはわかってるけど、あれを放置してたらそれはそれで問題だっただろ! 


 やっぱりあんなストレートに言ったのがダメだったのかな? うぅん、もっと紳士的にか……。


 俺は『これであなたも恋のテクニシャン! 女の子のハートを射留める20の方法!』という、なんとも胡散臭うさんくさい本を立ち読みしながら今日の反省をしていた。


 というかこの本、ホントに参考にならないんだが? 『テクニック1』の時点でカップルとして成立しちゃってるから、彼女がいないヤツにはなんの役にも立たないという……。


 しかも帯に『重版御礼!』と書いてある。世の中にはそんな沢山カップルがいるのか……もういいから二人で家にこもってろ。


 そんな事を思いながら手に持っている本を棚に戻していると、右肩をポンポンと軽く叩かれる。もしかして立ち読みを注意しに来た店員だろうか。


 俺が不安になりながら後ろを振り返ると、そこには見知った顔がいた。


「こんにちは、尋斗ひろとさん。えっと……急に声をかけてしまってすみません」


 そこに立っていたのは、少し不安そうに笑みを浮かべる銀髪の少女……虹本結愛こうもとゆあだった。


「こ、虹本! 偶然だな! 買い物か?」 


 虹本とはこの前の事もあって少し話しづらいと言うか、気を遣うというか……それに、さっきランジェリーショップで色々聞いてしまったし……。


 というか、取り巻きはどこに! こんなとこあいつらに見られたら悪・即・斬どころか、モーションもなしに即処刑だぞ!


 俺が周りをキョロキョロ見回していると、虹本が今度は優しい微笑みを浮かべながらクスクスと笑った。


「そんなあわてて、変な尋斗さん。あの、私今から帰るところなんですけど……もし良かったら、一緒に帰りませんか?」

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【加筆・修正版】隣のツンデレに『可愛い』と言ったらラブコメが始まったんだが。 藤松 燈裡 @hito_fuji

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