第7話 最近のJKは時空を歪められるらしいですね

 咲良が試着室に持ち込んだ服を全て買い、服屋での買い物……もとい、視察を終えた俺たちは次なる目的地へと向かっていた


 また変なところに連れて行かれる前に、確認をしておいた方が良さそうだ。参考になる場所かもしれないが、俺のメンタルがもたなくなってしまう……。


「なぁ、次はどこ行くんだよ。二軒目も服屋とかじゃないよなぁ?」


「プリクラ……ゲームセンターよ!」


 プリクラ……その言葉を聞いた瞬間、全身に鳥肌がたち、俺の脳内である日の回想が始まる。


※※※


 その日、俺は友達数人と一緒ゲームセンターに遊びに行っていた。新しくできたゲームセンターにテンションが上がっていた俺は、普段なら立ち入らないプリクラコーナーに足を踏み込んだのだ。


 そこはジェケジェケしているJKで溢れていたため、一緒にいた友人達はかなりテンションが上がっていて、その勢いでナンパをしようということになった。


 俺はナンパなんてした事なかったし、そもそもそんなに乗り気ではなかった。だから『可愛い子を探すぞ!』とノリノリの友達の後ろをそろりそろりと歩いていた。


 しばらくしてから、友達のうちの一人がお宝をみつけた時のような嬉しそうな顔をしてを指さした。


『おい、見ろよあれ! 』


 そこにはプリクラの編集画面のような物の前に立っている二人の女子高生がいた。その画面に映っている写真を覗いてみると……なるほど、こいつらがテンション上がるのも納得の容姿だった。


 二人の女子高生は画面に向かっていたため加工されている顔しか見えなかったが、とりあえず誰かが話しかけに行くことになり、俺たちはジャンケンをした。


『いくぞ、最初はグーッ……おい、お前ら』


 グー、パー、パー、パー……掛け声に合わせて差し出された手を見ると、俺以外の全員パーを出していた。


『おい、お前らどういうつもりだ』


『おいおい、尋斗ひろとこそ何言ってるんだよ。普通最初はパーだろ? こんなの常識だぜ? ほら、俺たち全員パーだし!』


 このチキン野郎……なんつう酷い言いがかりだ。結局、パーしか勝たんとか言い続けていた三人に押し負けて、俺は女子生徒に声をかけに行くことになった。


 声をかけたら、あとはあいつらパスする。そうするはずだったのに……。


『あ、あの、突然なんですけど……もしよかったら僕らと遊びませんか?』


『えぇっ、私たちぃ? もしかしてナンパァ? どうしよっかなぁ』


『……』


 詐欺だ……。こちらを振り向いた二人を見た瞬間、俺の脳は混乱してしまった。なぜって、画面に映ってる二人と目の前にいる人物の顔が、全く一致しないからだ。


 偽造パスポート作ってる奴らも驚きの顔の変わり方してるんだけど……。


 やべぇよ、早く退散しよう。そう思った俺は後ろを振り返り、チキン三人組にSOSのサインを出した。


『あ、次あのゲームやりにいかね?』


『おぉ、いいぜいいぜ!』


『あれ得意なんだぜ! 負けねえぞ!』


 見捨てやがったぁぁぁぁ! チキン三人組はこっちから気まずそうに目を逸らし、他のゲームの元へと逃げようとしていた。


 待て待て待て、助けてくれよ! お前らがやらせんじゃないかぁ。そんな俺の訴えも虚しいまま、何のたすけもないまま、あいつらはチラチラ気まずそうにこっちを見た。


『あぁ、君よく見たら結構好みかもぉ』


『まぢぃ〜? ホントだぁ、イケメンじゃ〜ん! うちら3人でプリクラ撮ろうよぉ』


 チキンに見捨てられた俺は、プリクラによる顔の変化にとんでもない衝撃受けてしまい、抵抗することもできずにプリクラを何枚も何枚も撮らされ続けた。


 それからというものの、プリクラや加工写真などがトラウマになってしまい、その単語を聞くだけでも鳥肌が立ってしまうのだ。


 マジで、あれは時空を歪めているとしか思えない……。


※※※


 とりあえず、プリクラを回避しなければ! もう二度とあんなところには行きたくない! なんとか咲良を説得しよう……!

 

「なぁ、俺ああいう狭いところ無理だから、他のとこに行かないか?」


「エレベーターには乗れるのに?」


「……ほら、あんなとこに男女二人ってのはね?」


「あんなとこで何をするっていうのよ……呆れた。それに、私には欲情しないんでしょ? それともさっきのは嘘かしら?」


「……」


 ヤダヤダヤダ。あれだけは絶対に撮りたくない! 考えるんだ、何か回避する方法を。


 俺は全力で脳を働かせながら歩いていた。周りの人間の騒音さえも聞こえないぐらい集中して。



「ゆ……さん、次はどこに行きますか?」


 周りの音が聞こえないぐらい集中して……。


「……あさん。少し休憩した方がいいのでは?」


 んぅぅ、なんだ? さっきから聞き覚えのある声が耳に入ってくる。そのせいでうまく集中できない。


 俺はその声が気になってしまい、声のする方向を見た。そこにいたのは数人の女子の集団だった。


 そしてその中心に……


結愛ゆあさん、あのお洋服屋さんに行ってみませんか?」


 透き通るような銀髪に、通行人が二度見してしまう程の整った顔。スラっと伸びている脚からは、健康に気を遣っていることが伺える。


 そして何より、あの取り巻き……虹本こうもと 結愛ゆあがいる! 今、ここに!


 災難だ、災難すぎる。なんでよりによって虹本がここに。しかも、あんな人数連れてショッピングモールって……。


 プリクラなら、咲良に事情を話して回避できるかもしれない。しかし、虹本御一行に見つかったら命の危険が出てくる……マジで。


 とりあえずどっか店に入って身を潜ませるしかないしかない。咲良はあいつらに気付いてないようだ。でもわざわざいることを知らせていたらすぐにあいつらがこっちに来てしまう。


 そう思った俺はとっさの判断で、咲良の腕を掴んですぐそこの店に入った。


「痛い……なに、どうしたの?」


「あぁ……いや、この店、前から気になってたからさ。悪い悪い」


 もちろん嘘です! ここがなんの店かなんて知らん! 早急に身を潜めるため、俺と咲良はすぐ目の前の店入った。


 いきなり飛び込んでなんの店かもわからない俺は、とりあえず状況を把握するために店の中をキョロキョロと見回した。


 ピンク、白、水色、黄色……その他さまざまな色が並んでいる。


「あなた……前からこの店が気になっていたって……まぁ、男子だものね」


 フォッフォッフォッ。なるほど、どうやらここは女性用の下着を取り扱う店らしい。


 あぁ……人生詰んだw

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