第28話 次の目的地



僕が既に会っている人物!?


アーリジャ大陸に来てから…そんな人はいたか?


考えられるとすれば…


・ジャーロヘガル州のギルドマスター〔ベルビア〕さん


・ソルクド王国に行く途中、一緒に馬車に乗った〔ザーグト〕さん。


・盗賊のフリをした巨漢


この中の誰かだろうか…。


だが…ベルビアさんならヘルディが気付くのではないだろうか?

この中では一番強そうなオーラを放っていたが…


お兄さんもAランク冒険者だと言っていた。

可能性があるならお兄さんだろうか。


盗賊のフリをした巨漢…

あの人がルージア神の使徒だとはとても思えない。


だが素性を知らない以上、可能性としては捨て切れない。



「まだ誰かは分かりませんが…気になる数名に会いに行ってみようかと思います」


僕はゼウス様に言った。



「ちなみに…アーリジャ大陸以外にはどこにいるか分かりますか?」


「すまんのぉ。分からんのじゃ。ワシはお主を介して気配を察知しておる。お主がその大陸に行って、それなりに奴らに近づけば分かる筈じゃ」


そうなのか…。

やはり…ルージア神の使徒は自分で探さないとだな。


「分かりました。では、皆にこの事を伝えてきます」


僕はゼウス様に一礼した。


「うむ。頼んだぞ」


―――――――――――――――――


―――――――――――


――――――


白い光が消え、元の空間に意識が戻る。


「流石コーキ様です。ここまで熱心にお祈りを捧げる方はいません。わたくし、感動いたしました」


大神殿長が目を輝かせて言ってくる。

実の親子では無いが、流石育ての親。

目の輝かせ方がカリンそっくりだ。



「すみません。思っていたより長くお祈りしてしまいました」

僕は右手で後頭部を触りながら言った。


「カリン達はどこに居ますか?」


「ヘルディ様のお部屋でお話ししています」


「そうですか。ありがとうございます」

僕は大神殿長にお辞儀をしてその場を後にした。



―――――――――――――――――――


☆大神殿【ヘルディの部屋】



――――コン、コン――――


僕はヘルディの部屋のドアをノックする。



「はーい!」


部屋の中からユーリちゃんの声がした。


―――ガチャ――――


「コーキお兄ちゃん!戻ってきたのね!入って!」


ユーリちゃんが元気よく僕を部屋に招き入れた。


「コーキ。ちょうどよかった。これからについてなんだが…」


ヘルディが真面目な顔をして、僕を見る。


「うん。僕もみんなに伝えたい事があって。先に話を聞かせて」


僕はヘルディに笑顔で言った。


「そうか。じゃあ……今回コーキが1人でルージア神の使徒を倒しただろ?俺とカリンは手も足も出なかった…。まずは…足を引っ張ってすまん」


ヘルディが頭を下げた。


「いやいや、そんな…足を引っ張っただなんて…」

僕は否定したがヘルディは話を続けた。



「いや…そもそも俺が…タイマンせずにカリンと大神殿に逃げていれば…もう少し結果が違った筈だ。あの時はルージア神の使徒だとは思わなかったとはいえ…俺の判断ミスだ」


ヘルディが暗い顔をする。


「そんな事はないわ。私が…あの時逃げずにヘルディと戦っていれば…」

カリンがヘルディに言う。



「いや、あそこで2人で戦っていれば、2人とも死んでいただろう。……やはり、あの時逃げるのが正解だった」


ヘルディはカリンに、責任は自分にあると伝えたいのだろう。


だが…

「それは結果論ですよ。あの時ヘルディが残ったから、シャコルさんが真実を知り立ち上がった。もし2人で逃げていたら…スヴェール王国の全騎士を相手にしなければいけなかったかもしれない。大神殿も無事では済まなかったかもしれない…。考え出したらキリがないです」


僕はヘルディに伝える。


「兵士達の犠牲こそありましたが、僕達は誰も死なずにルージア神の使徒を倒せたのです。まずはそれを喜びましょう」


僕の言葉に、カリンとユーリちゃんが頷く。



「……すまない。ありがとう」

ヘルディが涙目になりながら、笑顔でお礼を言う。



「そうだ。話が途中だったな…」

ヘルディは袖で涙をぬぐいながら言う。



「今後についてなんだが…大神殿長アドガルザさんの話だと、ドュラザ大陸にかつての大賢者様が生まれ育った国があるらしい。そこに色々な文献があるのだとか…」


ドュラザ大陸…アーリジャ大陸の隣にある大陸だ。


アーリジャ大陸程広くはないが、8つの国がある。

もしかしらそこにもルージア神の使徒がいるかもしれない。


「大賢者様の文献ですか…興味はありますね」


大賢者様…僕の師匠ナチールさんが教えてくれた偉人だ。

師匠の話だと…闇魔法が存在していると言っていたのが大賢者様だとか。


実際…闇魔法は存在していた。

なら、大賢者様の残した文献に何か載っているかもしれない。



「俺の戦闘スタイルに合わせた魔法、カリンの聖魔法…色々ヒントになるものがあるかもしれない…。だから、次の目的地をドュラザ大陸にしたい」


なるほど。


僕が祈っている間、その話をしていたのか。

いいと思う。


だが…ゼウス様からの情報をみんなに伝えなければ。



「なるほど。分かりました。僕も大賢者様の文献には興味があります。ですが…それは一般公開されてませんよね?」

僕は疑問に思った事を言った。




「それは平気よ。アドガルザ様が一筆書いてくれた。文献の管理者とは知り合いらしいわよ」


カリンが封のされた手紙を持ちながら言う。


「そっか。なら安心だ!」


僕は笑顔でカリンに言った。



「……で、コーキの話って何よ?」


「うん。……実は…アーリジャ大陸にもう1人ルージア神の使徒がいるらしい。しかもそのもう1人は僕と会った事があるって…」


「「「……………」」」


みんな黙って、真剣な表情になった。

あの元気なユーリちゃんですら。



「正直、誰だか分からないけど…考えられるとすればジャーロヘガル州ギルドマスターのベルビアさん。僕がソルクド王国に向かう途中、共に馬車で行動したAランク冒険者ザーグトさん。もう1人、盗賊のフリをしていた巨漢。この中の誰でもなければ、僕はもう…誰だか分からない」


僕は候補者を言った。



「……ベルビアさんは違うだろうな。あの人もかなりの手練れだから候補者に上がるのは分かるが…。ベルビアさんは元々神殿の人間でな。特に女神様に信仰している。カリンが聖女だと知ったら、自分の命をかけて護ろうとするだろう。そう言う人間だ。俺はあの人がルージア神の使徒だとは思えない」


なるほど…。


そういえば…ルージア神にも女神っているのだろうか?

もしそっちの女神を信仰していたとすれば…

ルージア神の使徒である可能性も捨て切れない。


「ルージア神の女神を信仰していたら?」

カリンが僕と同じ事を思っていたのだろう。

ヘルディに問いかけた。



「そうだとしても、聖女であるカリンを護る事に変わりはない。それに…本当にルージア神の使徒なら俺はもう生きていないよ。なんせ…ベルビアさんだけには俺が他神の使徒だと打ち明けてあるからな」



地球神の使徒だと知っていて無事。

まぁ…たしかに普通は消そうとするはずだが…。


「あの…その巨漢って…もしかしたら私の叔父さんかもしれない…」

ユーリちゃんが右手を申し訳なさそうに上げ、言ってきた。


「そういえば……【災厄の魔王】を探してると言ったら、血相変わった。それにあの子って言ってたな。って事は…ユーリちゃんの叔父さんで間違いないって事?」


ユーリちゃんが頷く。


「コーキお兄ちゃん!叔父さんと会ったのはソルクド王国の国境線入ってすぐの村?」


「そうだよ」


「なら間違いない!叔父さんだよ!!」

ユーリちゃんが笑顔で答える。



「なんで盗賊のフリなんてしてるの?」

僕は気になった事を聞いてみた。


「前に私が攫われてたから、叔父さんが私を護る為…冒険者と商人を監視するようになったの…もちろん物は取ってない筈よ。目的を確認するために襲ってたから…。でも、本物の盗賊が叔父さんと同じ手口で襲って本当に奪っていく事件もあったの。だから他国から来ると狙われるって噂が…」


なるほどね…。

じゃああの巨漢はユーリちゃんを護る為だったのか。


【災厄の魔王】の噂に出てくるのもそのためか。



「……じゃあ、あとはザーグトさんだけか」


僕はみんなを見て言う。


「ザーグトさんのいるミュノラム王国に立ち寄ってもいい?それでザーグトさんがルージア神の使徒じゃなければ、今のところ検討がつかないし、ドュラザ大陸に向かおう」


僕の提案に3人が頷く。



―――――僕達は次の目的地を決め、出発を3日後にした

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