第27話 腑に落ちない


シャルバを倒して1週間程経った。


ヘルディも回復し、王太子様も無事。

今回は僕達の完全勝利で終えた。


あの時は喜びを噛み締めていたが、今はどうしても腑に落ちない事がある。


……本当に、シャルバを倒す事ができたのであろうか?


いくら超級魔法とはいえ、シャルバの頑丈さを考えると跡形もなく無くなる程だろうか?


大技を二回も出して消耗していたから?


分からない…。



「コーキ。何そんなに難しい顔してるの?」


カリンが考え事をしている僕の隣に来た。



「う〜ん…どうにも腑に落ちなくて…。僕…本当にシャルバを倒したのかな?」


僕は額に手を当て考える。



「それなら黒龍も言ってたじゃない。シャルバの気配が完全に消えたから、私に結界を解くよう指示したって」


「そうなんだけどね…」


「そんなに気になるなら…ここは大神殿よ?神様に祈りを捧げれば答えてくれるわ」



たしかに。

大神殿にいるんだ。

もしかしたらまた、あの白い空間で神様達に会えるかもしれない。



「そうだね。お祈りしてみるよ」

僕は笑顔で、カリンの方を見た。



――――コンッコンッ―――――


「失礼します」


僕が寝ていた部屋に王太子様が入ってきた。



「王太子様!…失礼しました。国王様」

王太子様は今日からスヴェール王国の新国王になった。



「体調はいかがですか?コーキ様」

新国王様は笑いながら僕に問いかける。



「ええ…もうすっかり。お陰で嫌な事を考えてしまうくらいには…」

僕は苦笑いしながら答えた。



「ああ、父が…生きているかもしれない…と」

新国王が少し真面目な顔をし、僕はそれに頷いた。



「生きてる確証は無いですが、逆に言うと跡形もなく消した確証もありません。正直、遺体の一部は残ると思っていたので…」


僕はどうしても引っかかっている事を伝えた。


「なるほど…私には到底理解できない次元のレベルなので何とも言えませんが…1つ事実なのは、貴方は私達を救ってくださり、スヴェール王国の未来を変えてくれた。それだけで十分です」



まぁ、シャルバが国王だった時も、国はしっかりと機能していた。

国民からしたら、どちらが王でも変わらない。

事実、何故王太子派がクーデターを起こしたのか、理解できずにいる国民も多い。



この1週間、王太子は新国王となる事を国民に演説していた。

今は復興に力を入れている。



たしかに…スヴェール王国の未来は変わった。

現状維持だったのが、いい方向か悪い方向か…これからどちらがに進んでいくのだ。



「そう言っていただけると気が休まります。国王様」


僕は国王様の顔を笑顔で見る。


「国王様だなんて…シャコルとお呼びください」

そう言って新国王様はお辞儀した。


「分かりました。シャコル様」


「様はいりません」


「………シャコルさん」


「あっそうだ。もう一つお礼が言いたかったんです」

シャコルさんは話題を変えた。


「実は…スヴェール王国の復興費用がものすごくかかると言う話をカリンさんにしたら、沢山の硬貨をいただきました。その中の金貨40枚がコーキ様の物だと聞きまして…」



あれだけ派手に王城や騎士団施設等が崩れれば、出費は凄いことになるだろうな〜。


金貨40枚……あ〜。

ガドーネス王国でギルドマスターから謝罪で貰ったお金か。


「あれは僕のでは無いです。カリンが必要な時に使うよう渡したお金です。礼ならカリンに。それと、僕がシャコルさんに様をつけてはいけないのに、何で僕に様をつけてるんですか!」


「命の恩人ですので!!」

ドヤ顔で即答された。

ここまで即答されると何も言い返せないもんだね。


「……復興資金、僕からも少し…出させてください」

僕は《空間収納》からお金の入った袋を取り出す。



「!!!いえいえっ!!命の恩人にこれ以上して頂くわけには…」


シャコルさんは慌てて両手を振り断る。


「いえ…僕の戦いで崩れたのもあるので…」


神の使徒の戦いなんだ。

他の人には関係ない戦いで崩壊したんだ。

僕も出すべきだろう。



僕は袋から白金貨15枚を取り出した。

レッドドラゴンの素材報酬貰っといてよかった。


「…………!!!!!」

シャコルさんが目を丸くし驚いている。


そんな大袈裟な。

国王なら白金貨くらい湯水の如く…は言い過ぎだけど、それくらい使えるでしょうよ。


「こ…こんなに…頂く訳には…」

シャコルさんが何とか言葉を出しながら言う。


「いえいえ、受け取ってください。正直、白金貨持ってても使い道無いんですよ。旅しながら祖国に送る手段もないですし…だからこれが、今一番有効な使い方だと思っています」


そう言ってシャコルさんに白金貨の入った袋を渡した。


「…………………」

シャコルさんは無言で、涙を流している。



「本当に…ありがとう……ございます。ヘルディさんにも白金貨を寄付していただいて……このご恩は一生忘れませんっ!!」


シャコルさんが大泣きした。


そっか…ヘルディも白金貨渡したのか。

無理やり渡したレッドドラゴンの素材報酬を寄付したのだろう。



ヘルディとは出会ってから月日は経っても、一緒に行動した事は少ない。


だが、人の事を思いやれる良い人なのは間違いない。

ヘルディが地球神の使徒で良かったし、助け出せて本当に良かった!



「では僕はそろそろお祈りしますので」


そう言ってソファから立ち上がった。


「ああ、失礼しました。ではお暇させていただきます」

シャコルさんは泣きながら、これ以上いると僕に迷惑がかかると思い、部屋の外に出た。


さて、祈りの間に行きますか!



――――――――――――――――――――――――


☆大神殿【祈りの間】


僕が寝ている部屋から1分程歩くと、祈りの間がある。


祈りの間の入り口には大神殿長がいた。



「これはこれはコーキ様。この度はスヴェール王国並びに聖女カリンをお救い頂きありがとうございました」

大神殿長は丁寧に頭を下げる。



「いえいえ、当たり前のことをしただけです。少し、祈りの間をお借りしてもよろしいでしょうか?」


「どうぞどうぞ!」

そういうと大神殿長は祈りの間の扉を開けてくれた。



――――――キィ〜〜〜〜ッ――――――



おお〜!!!


流石大神殿。


祈りの間の石像がどれも立派だ。


しかも見た事もない石像が沢山ある。


ルージア神以外の石像もあるのか?


僕は奥へ進み、中心の円台に跪き祈りを捧げた。


――――――――――――


―――――――


――――


暫くすると、また白い光の世界にいた。


「待っておったぞ。コーキ」


ゼウス様が僕に話しかける。


僕は顔を上げる。


「ご無沙汰しております。ゼウス様。この度ご報告したい事が…」


「うむ。ルージア神の使徒を1人倒したのじゃな。やつら独特の気配が消えておる」


!!!!


「ゼウス様でも気配を感じないと言う事は…やっぱり…倒したのでしょうか?」


「うむ。お主はもっと自分に自信を持つのじゃ。それに…逃げるにしても神であるワシが辿れないわけないじゃろ」


ゼウス様が自信満々に言う。


そっか…。

なら…倒せたんだ!!


「それを聞けて安心しました」

僕は悩みが晴れ、笑顔で言った。



「まぁ…スヴェール王国にいたルージア神の使徒は無事倒したがの…この大陸にはもう1人いるぞ」


ゼウス様が真剣な顔をする。


「……え?そのもう1人はヘルディが倒したんじゃ!?」


「そうなのか?じゃがワシは気配を感じるぞ」


もう1人…いるのか。


「そうそう。姿はわからんが、お主そのもう1人とは既に会ってるはずじゃぞ」



――――はい?


ゼウス様から衝撃の言葉が放たれたのだった。

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