第25話 力の差
ルージア神の使徒と睨み合う僕…。
「ん…?ありがたい」
どうやらカリンが割るのに苦労した結界をもう一度張ってくれたようだ。
これで、周りを気にせず戦える。
「よかったのか?聖女を逃がすためとはいえ…あの娘も一緒に連れて行ってしまって」
あの娘?
ユーリちゃんの事か?
なるほど…【お前ら】とは、僕とクラさんではなく、僕とユーリちゃんの事を言っていたのか。
「問題ありません。あなたは…僕が倒す!」
僕はルージア神の使徒を睨む。
「ふっ。面白い。……そうだな。決めた。俺が勝ったら、お前を新しい器にしよう」
ルージア神の使徒はニヤッと笑った。
「名は何と言う?」
「……コーキ…」
僕は剣を構えながら名乗った。
「コーキ…か。俺はシャルバ。この国の王だ」
――――――ダッ―――――――
シャルバは名乗った後、即僕の方に向かってきた。
武器も持たずに向かってくる…ヘルディと同じタイプか。
だが、ヘルディとは違い籠手を使っていない。
斬れる!
僕は向かってくるシャルバに剣を振る。
―――――キィンッ――――――
え?
生身の拳からはしない筈の音が響いた。
剣と拳がぶつかった衝撃で、剣を持ってる僕の手に衝撃が響く。
なんて事だ…。
こんな事はヘルディと手合わせした時にもなかった。
しかも…《身体強化・極》を使っているのに…だ。
「がぁぁああああっっ!!」
シャルバが思いっきり拳を振ってくる。
「くっ……」
僕は咄嗟に剣を振り、相殺しようとする。
だが……
――――――ガギンッ―――――
拳の勢いを止められず、僕の手元から剣が離れてしまった。
「ぐあっ……」
そしてそのまま、僕は吹っ飛ばされた。
――――――ドサッ――――――
僕は着地できず、仰向けに倒れた。
「どうした。こんなものか?」
余裕な表情をしたシャルバがこちらを見る。
僕はシャルバを見ながら、ゆっくりと立ち上がる。
3m横に、先程弾き飛ばされた剣があった。
《闘気魔法・雷》
僕は全身に雷を纏った。
普通の身体強化+雷でかなり強化されたのだ。
極+雷なら比べ物にならない程強化されているはず。
――――――バチッバチバチッ―――――
―――――――ヒュッ―――――――
僕は物凄いスピードで横にあった剣を取り、そのままシャルバの方に向かった。
「うぉぉぉおおおおおお!!!」
僕はシャルバに向かって思いっきり拳を振るう。
「ふん…」
《神拳》
シャルバの右腕が光に包まれる。
シャルバは剣を振るう僕の動きに合わせて、拳を突き出す。
―――――ドゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ――――
物凄い音がしながらぶつかり合う。
互角だ。
「うぉぉぉおおおおおお!!!」
「はあああああっっっっっ!!!」
互いに力を込め、ぶつけ合う。
――――――ドンッ――――――――――
―――――ドシャャャャャン――――――
――――――ドコドコドコッ――――――
僕達の周りの壁は衝撃波により崩れていく。
―――――――バシッ―――――――
僕達は互いに吹き飛び、距離を取る。
流石、黒神狼の角で作った剣だ。
あれ程の力を受けて、刃こぼれしていない。
それに……
「やっと、ダメージを負ってくれたみたいですね」
僕はシャルバの右手を見て言う。
ほんの少しだが、切り傷ができていた。
血が垂れている。
「ふん…褒めてやろう。この俺に傷をつけたのだからな」
まだ、余裕のある表情だ。
「随分と余裕ですね…」
「まだ全力は出してないからな。そして…それはお前も同じだろ?」
「そんな事は無いですよ。《身体強化・極》と《闘気魔法・雷》の組み合わせは、今ところ一番強い強化だと思います」
僕は言い返す。
「その割には落ち着いてるな。まだ他にも手の内があるかのような。それに、さっきお前から感じた力はこんなものでなかった。もしその力に気付いてないだけなら…拍子抜けだ」
まじか…。
僕には気付いてない力があるのか?
だが、現状僕はこの強化状態で剣技や魔法を使うくらいしかできない。
「どうやら……。本当に気付いて無いみたいだな…」
シャルバは呆れた顔をして拳を握る。
《紅蓮月光拳鳳》
シャルバの周りに炎が渦を巻く。
いや…シャルバの周りに見えるが、おそらく右手を中心に纏っているのだろう。
あの一撃は…ヤバイ。
《風雷一閃》
僕はシャルバの技の準備が整う前に攻撃した。
待ってやる必要などない。
だが、炎を纏っている拳に、僕の一閃は止められてしまった。
「残念だったな…」
そう言うとシャルバは拳を振るった。
拳を振るった先から、巨大な炎の鳥が僕に向かってきた。
僕は吹っ飛ばされる。
―――――ド〜〜〜〜〜ンッ―――――――
吹っ飛ばされた先で、炎の鳥が地面に当たるのと同時に、そこを中心に炎の柱が立った。
そう。これはあの時カリンが見たやつだ。
「あ゛あ゛ああああぁぁぁ」
強い…
ルージア神の使徒とは…ここまで強かったのか…。
黒神狼にも、ヘルディにも、苦戦はしたが《身体強化・極》を使えばすぐに勝負がついた。
まだ余裕があった。
だが、シャルバにはそれ以上の力を使ってもこのザマだ。
「ほう。まだ意識があるか。お前の仲間はこの一撃で気を失っていたが…。やはり、お前とあの娘は別格か」
シャルバが近づいてくる。
少し息切れをしている。
それほど消耗の激しい技だったのだろう。
「これ程とは…」
僕は力を振り絞り、起き上がりながら呟いた。
「ふん。何故、ここまで差があるのか…。そう思ったのだろう」
シャルバは僕を見ながら言う。
「簡単な話だ。お前らは奴らから力を授かり、たいした努力もしないで強力な力を手に入れた。俺らは【才能】を伸ばすため、『努力』をした。洗練された技・力に、ただ与えられただけの付け焼き刃で勝てるわけがない」
「才…能……」
ヘルディの言った通りだ。
ルージア神の使徒は才能を授かっているのだ。
僕らが地球にいた頃授かっていた【才能】。
殆どの人は自分の【才能】に気づかないまま死んでいく。
だが、ルージア神の使徒は自分の【才能】が何なのか知っているのだろう。
だから努力をし、伸ばした。
僕らは【才能】ではなく【祝福】を授かった。
思い返してみれば【祝福】を授かった後は、効果が凄まじかった。
8歳の戦闘経験なしの僕が、雷鳥を倒せるくらいだ。
努力以前にいかに手加減するかばかり考えていた。
今…その差が出ていると言うことか…
「ふん。どうやら理解したようだな。じゃあ最後だ。お前の身体は俺のものになるんだ。特別に俺の【才能】を教えてやる」
どうやら【才能】を教えてくれるらしい。
時間が稼げる。
「俺の【才能】は、〔格闘家の才能〕〔魔力コントロールの才能〕〔見切りの才能〕〔炎魔法の才能〕〔鉄壁の才能〕だ。特に伸ばしたのはな。他にもあるが…戦闘には関係ない」
なるほど…。
拳がなかなか斬れないのも、早いスピードに反応したのも…何もかも【才能】を伸ばしたからか。
「他にある【才能】って…掃除とか?あれ?加護は授かってないの?」
僕は時間を稼ぐ為、質問する。
「加護もあるが…どうせ死ぬんだ。そこまでお前に説明してやる義理はないな」
そう言ってシャルバは拳に炎を纏う。
「じゃあな。人類の敵よ」
――――そう言ってシャルバは拳を振るった。
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すみません。
投稿設定間違えて23日投稿できませんでした。
本日二話投稿させていただきます。
〔後日これは消します〕
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