第24話 再会



「はぁ………はぁ………」


私はお腹を抑えながら《回復》を使う。



「なぜ、容易く盾が壊されたのか…そう言いたそうな顔だな」


ルージア神の使徒シャルバは、しゃがみ込むカリンを見ながら余裕の表情で言った。



「簡単な話だ。《聖なる盾》は既に見たことがあるからな」


(そうか…国王は何世代も生きているから…聖女の使う魔法も知ってるって事ね)



「お前の様な借り物の力では無い、お前らの信仰する神と戦った時見たのだ。あの時は不覚を取ったが…その盾の脆い場所など分かる。次戦えば俺が勝つ」



え?女神ミラ様と戦った事があるの?

つまり…地球神達は一度下界に降りて、自分達でルージア神の使徒を倒そうとした…って事かしら?


いや…

それなら国王が不覚を取ったのなら…地球神達は間違いなく始末している筈だ。



―――私はゆっくりと立ち上がる。



「ふふ…私を惑わす為に嘘ついてるなら、意味ないわ。神の使徒が神と戦うなんて…あるわけがない!」


私は両手を国王シャルバに向ける。


「なんだ…お前らの目的はルージア神だと思っていたが…違うのか?お前らはルージア神を倒す為、先に我らと戦っているだと思っていたが…。神と戦う気がある癖に、俺の言葉を嘘認定とはな」


「…っ…うるさいっ!!!」


【聖なる光線ホーリー・レーザー


「…はぁ………だから―――」


―――――ドッ――――――


「きゃぁぁぁぁぁぁ」


「遅いって言ったろ」


両手から光線が発射された時には、既に国王シャルバは私の背後に周っていた。


だめだ…

いつ移動したのか分からない。


今度はモロに拳を当てられた。


私はうつ伏せで倒れたまま、四肢を動かせずにいた。


「うっ…」

私の目からは涙が溢れる。



私1人では勝てない事は分かっていた。


ヘルディと王太子様を助ける為、死ぬ覚悟はできていた。


だが、実際それが現実になるとここまで辛いとは…


痛い…

意識が…遠のいていく。

だがまだヘルディは救出できていないだろう。


もっと…時間を稼がなければ…。



私は左腕に力を込め、起き上がろうとする。


「うっ………ぐっ………っ」


ダメだ…。

起き上がれない。



「ふん…所詮お前らなどその程度だ」


そう言いながら国王シャルバは私に近づく。


――――ガシッ―――――


シャルバは私の髪を掴み持ち上げる。


「うっ…」


痛い…

髪を引っ張られ、私は顔を歪める。


「もう終わりか?聖女カリンよ。これが歴代最高の聖女…笑わせる。まだ仲間の男の方がマシだったぞ」



――――ドゴッ――――


シャルバは私の脇腹を蹴る。


「ゔっ…カハッ……」


回復が追いつかない。


痛い…


苦しい…


(ごめん…コーキ…ヘルディ…)


気付けば涙を流しながら、コーキとヘルディの事を考えていた。



――――――バリィィィィィン―――――


護衛騎士団の施設周辺に張った結界が破られる音がする。


ありえない…あれを破るなんて…


もう一度張らないと…


「む…結界が壊れた…。なら…お前には大人しくしてもらわなくてはな。また結界張られたら面倒だ」


シャルバは私に近づき、拳を握る。


あぁ…死んだな。


どうやら私は…ヘルディも、王太子様も、王都民達も救う事が出来ないようだ。


(本当にごめん…コーキ)


私は目を瞑った。


―――――パリィィィン――――――


今度は私とシャルバを囲ったいた結界が割れる音がした。


「大丈夫ですか!?カリン!!」


この声は…コーキ。


そんな…絶対間に合わない筈なのにどうして…


―――ひと目見たいカリンだったが、コーキが来た安心感から目を瞑ったまま回復に努めるのだった。



―――――――――――――――――――――


☆スヴェール王国【上空】


「なんだ、あの光の壁は」


クラさんが思わず声を上げる。


どれどれ…。


「なんだあれは…」


遠くに見える光の壁を見て、僕は驚くのと同時に嫌な予感がした。


「クラさん。あの壁のところまで行って。もしかしたら、仲間がいるかもしれない」


「え?でもクーデターは1〜2週間後じゃないの?!」


ユーリちゃんが声を上げる。


「予定が早まったのかもしれない…。それか…そこで匿ってもらっているか…」


匿ってもらっている方であってほしい。


「とりあえず、行ってみよう」


僕達は光の壁の所まで行く事にした。


――――――――――――――――


―――――――――――


―――――――



「どうやら、クーデターが早まったようだな」

クラさんが下を見ながら言う。


「そのようだね…」


僕は兵同士で争っている所を見て相槌を打つ。


「…ってことは…この結界を張ったのはおそらくカリンだね」


よかった。詳しくはないが、結界が維持されていると言うことは、カリンが生きていると言うことだ。


「コーキお兄ちゃん…あれ!」

ユーリちゃんは結界内の奥の方を指す。


結界内にさらに結界が張られている。


「あそこじゃない!?」


「その可能性が高いね。お手柄だよユーリちゃん」


そうと決まれば早速中に…


「この結界内に入るには、壊すしかないな。だが…このレベルの結界…我でも一筋縄ではいかなそうだ」


クラさんでも壊すのに苦労する結界か…

さすがカリンだ。


「僕が壊すよ」


僕達は下に降りた。


《身体強化》

《闘気魔法・雷》


僕は身体強化を使い、更に全身に雷属性を付与した。


そう、ヘルディの身体強化を真似てみたのだ。


―――――――ドンッ――――――


1発、拳を結界に当てる。


「…………」


綺麗な結界がそこにはあった。

ヒビすらできなかった。


――――ドンッドンッドドンッ――――


何発も当てる。


ヒビもできない!?


超級魔法を使いたいが街に被害が出る。


どうすれば…


「おい、その雷、我にも付与できるか?」


「!!できるよ」


「よし。じゃあ我と共に攻撃し結界を壊すぞ」


《闘気魔法・雷》

僕はクラさんに雷を付与した。



クラさんは口元に闇の玉を作る。


僕は剣を抜き、身体に纏っている雷で剣を覆う。


――――ヒュン―――――


「グォォォ」


僕は剣を投げ、一点集中の槍のように。

クラさんは闇の玉を解放し、雷を纏った光線を放った。


―――――――バリィィィィィン―――――


割れた!!


僕達はクラさんに乗って、もう1つの結界の方へと向かう。


「なっ…」


僕達が着いた頃、カリンは蹴り飛ばされていた。


許せない。



僕とクラさんはさっきと同じやり方で、空を飛んだまま行おこなった。



―――――パリィィィン――――――


今度は先程よりは簡単に壊れた。


「大丈夫ですか!?カリン!」


ぼくはカリンの前に立ち、声を掛けた。


カリンは安心したように目を瞑り、気を失っていた。



「何者だ?お前ら…聖女カリンとも、あの男とも違う」


シャルバは警戒するようにコーキ達を睨む。


「そうか…あなたがルージア神の使徒…よくもカリンを…」


僕は全身の魔力を高める。


《身体強化・極》


「ユーリちゃん、クラさん。カリンを連れて大神殿まで向かってください。ここは僕がやります」


「1人で!?無茶だよ!」


ユーリちゃんは心配そうに僕の顔を見て言う。


「大丈夫だよ。それよりもカリンが心配だ。お願い」



「……分かったわ!でも、送り届けたら戻ってくる!」


カリンをクラさんの背中に乗せ、大神殿に向けて飛び出す。





「…まっ…て……」

カリンがかすれる声で言う。


「あれ?気を失ってなかったのね!」

ユーリちゃんが驚きながらカリンを見る。


「残った力で……結界…だけでも……」

カリンが結界を張ろうとする。


「待て、それを張られると、我があいつの助けにいけん」


「大…丈夫…よ…。コーキは…負け…ない…」


「ふん。あいつ。相当信用されてるな」


《聖なる結界》


再び、護衛騎士団の施設に結界が覆われた。


「これ…で…思う…存分に…戦える…わ…コーキ…」


――――そう言ってカリンは気を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る