第18話 国王シャルバとは
国王様がこちらに近づく。
なんで?
あまりに無用心過ぎない?
相手はSランク冒険者なのよ?
でもこの状況…ラッキーかもしれない。
今この場には私達と国王様だけだ。
逃げられる!
私はヘルディとアイコンタクトを取る。
ヘルディも察したのか頷いた。
いける…!
――――――――――――――――――――――
俺はスヴェール王国に着いて早々に牢に入れられた。
抵抗しようと思えばできたが、カリンの立場を考えしなかった。
衛兵に連れられ、大広間に行くとカリンがいた。
(え?なんでカリンが捕まってるんだ?)
この光景を見た俺は真っ先にそう思った。
もしかしたら、俺が考えている以上にヤバい状況だったのかもしれない。
カリンの祖国で聖女だから、カリンは丁重に扱われるかと思っていた。
だがあの状況を見るに、俺と扱いはたいして変わらないだろう。
だが王城で暴れれば、指名手配は確実だし、カリンも殺されてしまうだろう。
やはり…大人しくするしかないのだろうか…。
そんな時―――
「ガラム帝国の冒険者ヘルディ、並びに我が国の聖女カリンを死罪とする」
国王からとんでもない事を言った…。
カリンを死罪!?
なんだそれ!?
………
そんな事があるのか?
カリンは歴代最高の聖女として、ガラム帝国にも噂が広がるほどの人物だぞ。
俺は冷や汗が流れる…。
「では、処刑を執行する」
なんと、執行者は国王で周りにいた人々はいなくなった。
これならカリンを逃がす事ができるかもしれない!
カリンの方を見ると、カリンも俺を見ていた。
どうやら考えは一致したようだ。
……国王が近づいてくる。
《身体強化・3速》
一般人相手に3速はやり過ぎだが、カリンを逃がすためだ。
俺は手錠を強引に壊して外した。
――――ガシッ――――――
カリンを抱え、大広間にある窓を突き破り、飛び降りた。
「カリン!先に逃げろ。俺は追ってくるであろう衛兵を食い止める」
「わたしも―――」
「これは俺の役目だ。いけ!」
カリンは若干涙目になりつつ
「わかったわ。大神殿で待ってる。敵かもしれないけど、国王様の権力が及ばないのはそこだけだから。すぐに来てね」
俺は頷いた。
カリンはそう言い残し、大神殿に向かって走っていった。
さてと―――
―――――ドカーン!!!―――――
俺は地面を殴り、クレーターを作った。
1箇所だけだが、これで少しくらいは時間を稼げるんじゃないか?
俺はジャンプして、先程の大広間に戻った。
「ふん…きたか」
国王は俺が戻ってくるのが分かっていたかのように、大広間の中央で腕を組んで立っていた。
横には槍が置いてある。
「お願いします。カリンの死罪だけは…どうか…」
俺は頭を下げた。
「ならん。お前もカリンも…死罪だ」
そう言うと国王は槍を持ち、構えた。
(すまねぇ…カリン)
《身体強化・4速》
俺は万が一にも殺されるわけにはいかねぇ。
過剰だとは分かっていても4速まで上げた。
だが―――
――――――キン――――――
ものすごいスピードで国王が槍を突き出した。
決して見えないスピードではない。
だが、油断していた俺は、鎧に一撃食らってしまった。
―――――ピシッ―――――
鎧にヒビが入る。
「おいおい…本当に国王か?」
なんだよこの一撃。
間違いなく熟練の手練れだ。
《身体強化・5速》
さっきは4速にしておいてよかった。
こりゃ間違いなく、6速使うことになるかもしれない。
まさか使徒以外に6速を使うことになるとは…
いや――――まさか…
「ふん。どうやら気づいた様だな」
「さっきカリンに言った【邪魔な邪神】とはそう言うことか」
そうだ。
ルージア神にとって地球神は外の神。
ルージア星にとって、ただの邪魔者。
国王は俺とカリンが地球神の神だと気づいていた。
だから死罪。
だから周りの人を退却させた。
「ふん。今更分かったところで遅い」
―――――ガギンッ――――――
俺とルージア神の使徒シャルバは激しくぶつかり合う。
―――その音は、王城周辺にも響いた事だろう。
――――――――――――――――――――――
「はぁ…はぁ…」
私は大神殿に向け走っていた。
もう少しだ。
―――――ド〜〜〜ン―――――
物凄い音がしたので思わず振り返った。
ヘルディだ…。
無事、戻ってきて!
私は祈りながら再び走った。
「はぁ…はぁ…」
大神殿が見えてきた。
入り口に誰がいる。
―――大神殿長だ!
「カリン!待っていましたよ!」
久し振りの大神殿長だ。
私を育ててくれた人。
だが…ルージア神の使徒の可能性はある。
警戒しながらも近づくことにする。
「アドガルザ様っ!」
私は大神殿長の名前を叫ぶ。
アドガルザは私を迎え入れてくれた。
いつもの温かい抱擁で。
あぁ…やっぱり落ち着く…。
「アドガルザ様…私、死罪と…国王様から…」
私は大神殿長の胸に顔を埋めながら言った。
「そうですか…カリンが捕らえられたと聞いた時、もしやとは思いましたが…嫌な予想が当たってしまいました」
大神殿長は私の頭を撫でながら暗い顔をした。
「とりあえず中に入りましょう。大神殿の中なら国王様でも簡単に手出しはできない」
大神殿長は私の肩に手を置きながら、反対側の腕を大神殿の中に向け、私を誘導した。
「はい。それで実は、私の他にもう1人――――」
ドーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!
「「「!?」」」
私が話している途中、王城の方で凄い音がした。
私達全員その場を振り返った。
「「「……え…」」」
私達は言葉を失った。
なんと、王城付近一帯に炎の柱が立っている。
う…そ……。
ヘルディは炎属性の魔法が使えないはず…
―――私は嫌な予感がした。
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