第17話 巨乳vs虚乳
私が牢に入れられて3日程経ったかな?
明日、国王様と謁見する事になった。
スヴェール王国の国王、シャルバ・ガルフ・スヴェール様は見た目は渋い髭を生やす40歳くらいに見える。
だが、実年齢は誰も知らない。
噂では100年生きてるだとか言われている。
100年も生きていればあんなに若々しくないだろう。
だが私は、その噂は本当なんじゃないか?と思っている。
私が6歳の時、聖女候補として大神殿で過ごしていた時に国王様を見た事がある。
その時と、今の姿は全く変わらない。
中年では早々見た目は変わらないと言われればそれまでだが…。
そして、国王様の第一印象はとても怖かった。
笑顔で大神殿長と話をしていたが、その裏には何かを秘めているような…そんな感じがした。
聖女になり何度か会ったが、その時も毎回ゾクゾクする。
謁見…。やだなぁ〜。
でも謁見しないと、ヘルディが危ない。
スヴェール王国の国王様なら、他国のSランク冒険者であろうと構わず処刑するだろう…。
私は憂鬱になりながら時間が過ぎるのを待った。
―――カッカッカッカッカッ――――
ヒールを履いているのだろうか。
足音が聞こえる。
そしてその足音はどんどんこちらに近づいている。
―――カッカッカッ――――
「久し振りねカリン」
足音の主は私の前に止まり、声をかけてきた。
「ノール…!!」
私の目の前には、綺麗なドレスを着て、なんかこう…胸のあたりに無駄な脂肪を沢山蓄えた女がいた。
「ふふっまさか本当に牢に入れられてるなんてね」
ノールはニヤニヤしながら私を見る。
「何しに来たのよ」
私はノールを睨みつける。
面倒くさい。早くどっかに行って欲しい。
「あら、私にそんな口の利き方していいのかしら?聖・女・さ・ま!」
ノールは嫌みたらしく言ってくる。
ノールは元々、私と同じく大神殿で聖女候補として育てられた。
でも聖魔法は私の方が圧倒的に上で、彼女は聖女になる事ができなかった。
だから私のことを凄く憎み、嫉妬し、毎日のように嫌がらせをしてきた。
だが、王太子様の妃は普通なら聖女である私がなるところをノールが選ばれた。
私は別にそれでよかった。
むしろ好きでもない王太子と結婚して、国に縛られたくなかったから。
まして国王様と王城で暮らすなど耐えられないだろうし。
だが、ノールは自分が妃に選ばれてから我儘の限りを尽くした。
王太子様もノールには何も言えず、好き勝手させている。
ヘルディを捕らえたのも、おそらく私の行動を誰かに監視させ国王様にチクったのだろう。
「王太子妃なのに、護衛も付けないの?」
「王城で私に手出しする輩はいないわよ。安心して!あなたも誰にも狙われないわ!幼女……聖女を狙ったらどうなるかくらい全員分かってるわ」
ノールは私のとある一部分を見ながら言った。
「ちょっと!今幼女って言わなかった?」
私は青筋を立てながらノールに迫る。
「ごめんなさ〜い。その壁…というか、手の平に簡単に収まる膨らみを見るとつい…」
ノールはニヤケながら私を見る。
「無駄な脂肪の塊よりマシよ!」
別に嫉妬じゃないわよ!
私だってあと3年経てばあんな感…あんな脂肪よりもっと良い膨らみができるはずよ!
「あら可愛い。嫉妬しちゃって!でもあなたでは私みたいな巨乳にはなれないわ」
ノールが哀れみの目でこちらを見る。
「あなたはずっと貧…虚乳よ。だって…今でも詰め物してるでしょ」
「なっ!」
私は慌てて胸を手で隠した。
本当、こういう所だけ鋭いんだからっ!
「そうそう。良いこと教えてあげるわ。あなたのお仲間の冒険者、明日処刑されるわよ」
ノールは冷たい表情をして私を見る。
「ヘルディはSランク冒険者よ。返り討ちに合うだけね」
私は余裕のある表情で答える。
そう、ヘルディが暴れればこの国に止められる人はいない。
「馬鹿ね。その為にあなたがいるんじゃない」
「!!!」
牢に入れたのは、私を人質にして抵抗させない為…
「ふふふっ明日を楽しみにしてなさい!じゃ〜ね。カリン」
ノールは絶望した私の顔を見て、嬉しそうにその場を去っていった。
―――私のせいで、ヘルディが死ぬかもしれない。
コーキが一緒じゃなくてよかった。
コーキも間違いなく、私が人質にされてたら抵抗しないだろう。
どうしよう…。
――――色々な案を考えるが、無情にも時は過ぎていった。
――――――――――翌日―――――――
王の謁見という名の処刑執行まであと少しだ。
私は一睡もできなかった。
なんとかしないと、ヘルディが殺されてしまう。
だが、良い案は浮かばない。
――――ガチャ――――
「聖女様、お時間です」
衛兵は牢を開け、私を立たせて移動した。
どうする。
逃げるなら今だ。
《拘束》 を使えば、この場は逃げられる。
逃げればヘルディも抵抗し、脱出できるだろう。
―――いや、ダメだ。
国王様の事だ。
ヘルディが暴れたらガラム帝国に文句言い、無理にでも処刑しようとするだろう。
暴れるなら今じゃない。
やはり、なんとか説得して釈放してもらった方がいいだろう。
――――私は歩き、大広間に入った。
私は大広間の中心に座る。
しばらくすると、錠で繋がれたらヘルディが入ってきた。
ヘルディは私の横に座る。
…が、私とヘルディの間に1人の衛兵が立ち、会話をさせないよう監視している。
――――カン、カン、カーン―――――
合図が鳴った。
どうやら国王様が入ってくるらしい。
―――ドッドッ、ドッ、ドッ――――――
国王様の足音が響く。
皆、跪く。
「面をあげよ」
国王様は王座に座ると、言葉を発した。
私たちは顔を上げる。
「突然の、手荒な真似してすまなかったな。聖女カリンよ」
「いいえ、国王様のお考えがあってこそだと思っております。お気になさらず、国王様」
私は返答した。
まさか国王様から謝られるとは思わなかった。
これなら、ヘルディの釈放も認められるかもしれない。
「実はな。その男と共にお主も一緒に牢へ入れるように命令したのはワシだ」
「存じております」
「…そうか。なら話は早いな」
きた。
ここで何としてもヘルディの無罪、またスヴェール王国にとって無害であると証明しなければ。
国王様の言葉を聞いたあと、釈明を…
「ガラム帝国の冒険者ヘルディ、並びに我が国の聖女カリンを死罪とする」
「「……え?」」
私とヘルディだけじゃない。
参列している貴族達も理解が追いついていないようだ。
なぜ聖女様が?
みんなそのような言葉を呟いている。
「すみません。発言をお許しください。なぜ、カリンが死罪なのでしょうか」
ヘルディが国王様に問いかける。
「黙れ!誰が言葉を発していいと――――」
「よい」
宰相を制止し、国王様が答えた。
「簡単な話だ。聖女カリンは女神ではなく、邪魔な邪神の信仰者だからじゃ」
「なっ!私は大神殿にある女神様の石像に祈りを捧げているのです。邪魔な邪神などではないです」
私は思わず言ってしまう。
大神殿にある石像を否定するという事は、全世界の神殿にある女神様の石像を否定すると同じ事だ。
いくら国王とはいえ、これはかなりの問題発言である。
「ふん。カリンとヘルディはそのままに、全員速やかに退出せよ」
国王様は参列している貴族達に言う。
貴族達は部屋を出て行く。
大広間には、私とヘルディ・国王様の三人になった。
「では、処刑を執行する」
―――なんと、執行者は国王様自らだった。
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