第15話 それぞれの旅路
これからの方針が決まった後、僕達はご飯を食べる事にした。
「暫くドリアが食えなくなる。今日は食いまくる」
ヘルディが熱々のドリアを凄いスピードで食べていく。
「そんなに勢い良く食べて大丈夫?火傷しない?」
カリンが若干引き気味にヘルディを見ている。
「温かい料理は熱々のうちに食べるのが最高の贅沢だ。これからまた旅に出れば、温かい料理が食えなくなる。今のうちに食っとかないとな!」
ヘルディは笑顔でカリンに言った。
「まぁ…たしかに…。今までコーキとの旅では順調に行き過ぎていただけよね」
カリンが納得した様に頷き、ドリアを食す。
僕もドリアを食べ、温かい料理を堪能する事にした。
――――――――――翌日―――――――――
☆ジャーロヘガル州【冒険者ギルド】
僕達は昨日のレッドドラゴンの素材が査定終了し、冒険者ギルドまで来ていた。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
ギルドに入るなり、受付のお姉さんが応接室に案内しようとする。
「いや、あまり長居するつもりはない。そのまま受付の方で済ませるつもりだ。ギルドマスターには昨日のうちに全部伝えてあるしな」
ヘルディが受付のお姉さんを制止し、受付カウンターの方に歩いて行った。
「では、こちらがヘルディさんの素材報酬です。そしてこちらがコーキさんの素材報酬になります」
受付カウンターに硬貨が入った袋が置かれた。
その後ろにお盆の様な木の板が置かれた。
おそらくそれで中身を確認するのに、出せる様にするためだろう。
「ん?素材報酬もコーキに渡してくれてよかったんだが…」
「そうはいきません。ドラゴンの素材ですからね。ちゃんと倒した人が報酬を受け取るべきです。なので僕がわける様お願いしました」
僕はヘルディを見て、ちゃんと自分で受け取る様に言った。
「そうか…じゃあカリン。持っててくれ。これを旅の資金に使おう」
ヘルディは振り向き、カリンに受付の前に来るよう促した。
「ちょっ…コーキもヘルディも…なんで私にお金を渡すの?」
カリンは困惑した表情で僕達を見た。
「ではまずヘルディさんの素材買取金額です。レッドドラゴン一体で白金貨10枚・大金貨20枚になります」
そう言って受付のお姉さんは袋の中にある硬貨を並べた。
硬貨の枚数を確認し、袋にしまう。
「続いてコーキさんの買取金額です。白金貨15枚・大金貨20枚になります」
そう言ってまた中身を取り出し硬貨を並べる。
「あれ?同じレッドドラゴンなのに僕の方が高いんですね」
「はい。ヘルディさんのドラゴンは拳圧により鱗がバラバラになってたり、傷付いていました。ですがコーキさんのドラゴンは頭部を一刀両断されており、極めて状態が良かったため、その差が査定額に出ました」
なるほど。
それにしても、一体持ち帰ると素材報酬全然違うんだな。
国王様に倍で頂いたブルードラゴンの買取より高い。
僕達は報酬を受け取り、冒険者ギルドを後にした。
―――――――――――――――――――
「さて…それじゃ二手に分かれて行くとするか。無茶するなよ。コーキ」
ヘルディが僕の肩に手を置き、僕の顔を覗き込む。
「はい。カリンとヘルディも気をつけて」
僕は笑顔で答える。
「コーキがガラム帝国を抜ける頃には、私達は船に乗ってると思うわ。風次第だけど…スヴェール王国に着き次第、ギルドに連絡するわ。順調にいけばコーキが目的地に着いた時、ちょうどその手紙が届くはずよ」
カリンは心配そうな顔をしながらも、僕にこれからの事を言う。
「はい。僕も着き次第連絡します」
僕達は手を振り、僕は西へ、カリン達は東へ歩いて行った。
―――――――――――――――――――――――
僕は乗合馬車に乗り、アーリジャ大陸最西端を目指す。
とりあえずガラム帝国を抜けるまでは乗合馬車を乗り継げば行ける。
問題はその前に個人に貸し出してくれる馬車を探さないとだ。
国を超える場合、なかなか見つからない。
最悪身体強化使って走ってもいいんだけどね。
むしろそっちの方が早く着くし。
カリン達と別れて3週間は経っただろうか…今頃港に着いた頃だろう。
何事も無く無事でいてほしい…が、ルージア神の使徒を探す手がかりをいっぱい持ってきてもらえれば…
今のところ分かっているのは
・Sランク冒険者とは限らない
・加護の他に才能を授かっている
・倒した時に消える、または逃亡の手段がある
ってところだろうか。
探すのは一筋縄ではいかないな…。
…う〜ん…。ゴースリア王国を出て、旅を始めてからずっとカリンと行動を共にしていたからな〜…。
1人でいると話し相手もいないし…1人で色々考えてしまうな。
そうそう盗賊やらモンスターに襲われる様な事もないし…。
暇だ…。
―――僕は乗合馬車に揺られながらぼーっとしていた。
――――――――――――――――――――――――
☆ガラム帝国【港】
「やっと港に着いたな」
カリンとヘルディは馬車を降り、港に向かって歩いていた。
「問題は出航時間ね」
「どうすんだ?たしかガドーネス王国からここに来たんだろ?帰りもガドーネス王国を経由していくか?」
ヘルディがカリンに問いかける。
「いえ、ここからスヴェール王国に行くにはダスフィリ王国から行った方が早いわ」
「んじゃ、船探すか」
カリンとヘルディは船を探しに歩いた。
「ねぇ…ガドーネス王国行きの船が少ない様な気がするんだけど…」
カリンは通りがかったガドーネス王国行きの待合所にある時刻掲示板を見て言った。
「そういやそうだな。いつもはもっとあるはず…」
ヘルディも不思議そうに見ている。
「あっ、あったわ。ダスフィリ王国行き、夕方出発よ」
「あと3時間近くありそうだな。ちょうどいい。チケット買ったら昼飯にするか」
―――2人はチケットを買い、昼飯を食べ、時間が来るのを待った。
―――時間が経ち、2人は船に乗った。
―――――コーキ達3人はそれぞれの目的地に向かうため、順調(暇)に足を進める事になった。
………順調。
……今だけはね。
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