第14話 これからについて
まさか…カリンも前世の記憶があるとは…。
「…ってことは…もしかして!」
「ふふっ、そうよ!私も地球神の使徒よ!」
カリンが笑顔で答える。
「ははっ…ははははははははは」
ヘルディさんが緊張が解けたのか笑い始める。
「そっか、ならカリンとは敵対するどころか、むしろ仲間だったってことだな」
ヘルディさんが笑顔になる。
「そうね!コーキは地球神の使徒ってのは分かりやすかったけど、ヘルディさんは全然分からなかったわ」
カリンも笑顔だ。
「え?僕そんな分かりやすかったですか?」
僕だけ困惑した表情だ。
「ええ。だって、ガドーネス王国の宿で嬉しそうに〔姫路城の様な城があった!〕とか〔琵琶湖みたいだな〕とか、この世界にはないはずのもので例えてるんだもの」
「…あっ……」
心当たりがある僕は何も言い返せない。
「コーキも日本出身なの?」
カリンが聞いてくる。
「はい。前世では日本人で、17歳の高校生でした」
僕は前世の事を言う事にした。
「カリンとヘルディさんは…前世は何してる方でしたか?」
僕は気になったので聞いてみた。
「私は日本人で、20歳の大学生よ」
「俺は日本人とイタリア人のハーフだが、住んでいたのは日本だ。25歳の料理人だ」
大学生と料理人か…。
「前世でも2人は年上なんですね」
「ん?コーキとカリンは同い年だと思ってたが、違うのか?」
「ちょっと!!それはどこを見てそう判断したのかな?」
カリンから黒いオーラが溢れ出ている。
「………」
冷や汗が止まらない様子のヘルディさん。
「僕は10歳、カリンは13歳ですよ」
「…そっ…そうか。3歳も離れていたのか!いや〜…コーキが大人っぽすぎて…悪かったな!同い年と勘違いして!」
ヘルディさんが慌てながら笑顔で釈明している。
絶対嘘だ。間違いなく、カリンをもっと年下だと思ってたはずだ。
「………」
カリンにジトッと見られながらもヘルディは笑顔を崩さない。
だが背中は汗でびっしょりだ。
「ヘルディさんは今いくつですか?」
「俺は18歳だ。既に成人も迎えている」
僕に話しかけられ、助かった〜と言わんばかりに、食い気味に質問に答えてくれた。
うん。もう、力関係ははっきりと決まってしまったな。
もう…ヘルディさんはカリンに逆らえない。そんな雰囲気が漂ってる。
「でも…ルージア神の使徒ってどこにいるのかしら…」
カリンが考え込む。
「女神様の話だとね。アーリジャ大陸に2人、ルージア神の使徒があるって話だったの…」
なんと、女神様情報では、このアーリジャ大陸に2人もいるらしい。
「その内の1人なら、おそらく俺が倒したぞ」
ヘルディがカリンに話しかけた。
「え?」
カリンは驚いた表情をしている。
「…と言っても、倒したんだか消えて逃げられたんだか…よく分からんがな…すまん」
ヘルディさんが頭を下げた。
「どこで戦いましたか?」
「ガドーネス王国の港近くの神殿だ」
「あの崩れていたところですよ」
僕は補足して伝えた。
「そうなのね…」
「あ、そうだ。これからは仲間なんだ。俺の事は呼び捨てでいいぜ。カリンの情報が確かなら、もう1人ルージア神の使徒がいるって事だよな」
「どこかめぼしいところはありますか?僕ゴースリア王国出身なので…アーリジャ大陸はあまり詳しくないです…」
僕は俯く。
「そうだな…。俺の中では2つ候補がある。
1つ…アーリジャ大陸最西端に位置する国にいると言われる【災厄の魔王】
2つ…スヴェール王国大神殿の【大神殿長】
このどちらかは神の使徒では無いかと思ってる。
ガドーネス王国の神殿長がそうだったんだ。元締めが神の使徒の可能性はあるだろう」
ヘルディが2つ候補を上げた。
「う〜ん…大神殿長が神の使徒なら…女神様が私に警告するはずよ」
カリンが悩みながら言ってきた。
たしかにそうだ。
カリンは聖女として、大神殿で生活していたらしい。
それならカリン自身も気づきそうだし、何より女神様から情報があるはずだ。
…って事は1つ目の災厄の魔王の方が可能性は高い。
「…てか、この世界に魔王なんているんですか?」
僕は純粋な疑問をヘルディに聞いた。
そう。モンスターはいるが、この世界には魔族が居ないはずだ。
そんな存在がいれば、僕だって真っ先に神の使徒と疑う。
魔王が神の使徒だと思う人は少ないだろうし…その方が正体を隠すのにピッタリだからだ。
「いや…俺も詳しくは知らないんだが、本当の魔王では無いだろうな」
ヘルディは髪をポリポリ掻きながら言った。
「まず、これは噂話だと思ってくれ。なんせ情報が錯誤してるんでな。噂ではその魔王は屈強な戦士だとか、はたまた小さな女の子だとか、人物像の時点で既に大きな違いがあるんだ…」
「なるほど…屈強な戦士ならまだ何となく分かりますが、小さな女の子なら…なぜ【災厄の魔王】などと呼ばれるのでしょうか?」
小さな女の子が超級魔法連発してるとか?
それで街を滅ぼしたとかならわかるが…
「これはまた一部の噂なんだが、その小さな女の子は【魔物使い】って言われている。だが、そこらの魔物使いと違い、使役するのはドラゴンだとか…」
「「ドラゴンを使役!?」」
僕とカリンは思わず声を上げる。
「あくまで噂だぞ。正直、俺も信じられない」
ヘルディは苦笑いしながら言う。
「魔物使いって滅多に見ないけど、普通ならどれくらいのモンスターまで使役できるの?」
カリンがヘルディに問いかける。
「そうだな…俺が知ってる中で1番強い魔物使いで、オーガ等Bランクのモンスターだ。
そもそも、モンスターを使役するには、まず使役する相手より強いのが前提条件だ。
それだけなら俺らは無理なく達成できる。
だが…一瞬で相手を降伏させるだけの力・オーラ・殺気等の要素は…俺らでもどこまで通用するか…
まず間違いなく、ドラゴンは無理だ。
俺らでは、ビビらせ、一瞬怯ませることはできるが、降伏させる事などできない。
もしあの噂が本当なら、その魔王は俺らより強い」
「「……」」
噂だからこそ、過大に伝わっている可能性は高い。
だが、神の使徒ならあり得てしまう。
「言ってみますか?災厄の魔王の元へ…」
僕は2人に聞いてみる。
「私としては、ガドーネス王国で見た水底神殿の事を聞いてみたい気もするわ。だから、大神殿長が神の使徒なのかついでに確かめに行きたい」
カリンが真剣な表情で言う。
確かに、あの琵琶湖みたいな湖に沈んでた神殿は気になる。
だが魔王がいる国とスヴェール王国は逆方向であり、どちらも行くまでに相当時間がかかる。
「水底神殿…そういえばあいつも神殿が何とか言ってたな…」
ヘルディが呟く。
「俺も、神の使徒の可能性は低いかもしれないが…その神殿の事が聞けるならスヴェール王国に行ってもいいと思う」
ヘルディがこちらを見る。
「分かりました。ではこうしましょう。僕はアーリジャ大陸最西端に行き災厄の魔王を探す。カリンとヘルディはスヴェール王国に行き、水底神殿の事、大神殿長が神の使徒かを確かめに行く」
僕は二手に分かれて行動する事を提案した。
「ただし、神の使徒だと言う疑惑が出たら、3人揃うまで戦わない。やむなく戦闘になった時は…勝てそうなら戦う。勝てなそうなら離脱する」
――――コクッ
2人は僕の提案に頷いた。
「どうせ二手に分かれるなら、この分け方がいいかもな。俺らの中で最強は間違いなくコーキだ」
「そうね!私1人でルージア神の使徒とは戦えないかもしれない。コーキかヘルディが一緒に来てくれるなら心強いわ」
「連絡はそれぞれの国の冒険者ギルドで取り合おう。連絡取るのに時間はかかるが、確実に連絡を取る手段はギルドだけだ」
「そうしましょう」
僕とカリンは頷いた。
――――こうして僕達は別行動をとる事にした。
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