第7話 崩れた神殿



僕達は3日程で男爵領の領都に着いた。


質素だが、落ち着いた雰囲気である。


「宿取れたわ。明日には港に着く予定よ」


カリンは宿を予約して馬車に戻ってきた。


「ありがとうございます。カリンは今日、何か予定はありますか?」


「そうね〜…神殿でお祈りするくらいかしら」


カリンは考えた後、聖女としてお祈りする以外は何も無いらしく苦笑いしながら答えた。



「そうですか。では今日はゆっくりして、明日に備えましょう」



カリンは神殿に、僕は一足先に宿に入った。



(ふぅ〜。ガラム帝国まであと少しだ。へルディさん…どんな人だろう…ルージア神の使徒なら…)


僕は目を瞑った。


――――――――――


―――――――


―――――


「…ーキ……コーキ……コーキ!!起きて!!」


僕は揺さぶられ目が醒める。


「…ん…ふぁぁぁああ〜…どうしたんですか?」


カリンが慌てた様子で僕を起こした。



「神殿が…崩れてるのっ!!」


え?


何だって?


「……どういう事ですか?」


「それは私だって知りたいわよ!お祈りしに神殿に行ったら、崩れてたの…」


え…


神殿って聖なる結界で護られてるんじゃないの?

だから湖の底でも綺麗な状態を維持できている…

道中、馬車の中でカリンと出した結論だ。


「神殿長の聖なる結界で護られてるって言ってましたよね?……ってことは…神殿長の身に何か起こったと…」


僕達の表情は険しくなった。


「可能性はあるわ。そうじゃないと崩れてる証明が出来ない」


僕達は神殿に向かう事にした。



―――――――――――――――――――


☆男爵領【神殿跡地】


「これは…」


惨状を見て、僕は言葉を失った。


一面瓦礫の山だ。


これが神殿だったとは、誰も思わないだろう。


瓦礫の山付近は立ち入り禁止になっている。


僕は付近を監視している衛兵に立ち入り許可をもらう事にした。


「すみません。ここって神殿だった所ですよね?少し、中に入ってもいいですか?」


僕はSランクのギルドカードを提示しながら衛兵に問いかけた。


「!!…はっ!どうぞ、お入りください」


衛兵は敬礼して、許可を出してくれた。


僕達はしきりの中に入る。


「特に斬った後は無いですね…」

「魔法を使った訳でも無さそうね…」


僕達は神殿の瓦礫を見ながら考えた。


「これは…物理的に破壊したのかしら?」


「今の所ですが…その可能性が高いですね…」


僕は瓦礫の山に登った。


頂上付近から見渡して、何かヒントになるものは無いか探すためだ。


――――ブァ〜―――


僕が頂上に近づいたら、黒いモヤみたいなものが瓦礫から出てきた。


――――そして、僕の中に入っていった。


(何だ?今のは…そういえば前にもあったな…あれは確か、黒神狼を空間収納にしまう為触れた時だ)


「なにっ!?今の!?コーキ大丈夫!?」


カリンが心配そうにこちらを見ている。


「大丈夫です。何ともありません。僕にも何だか分かりませんが、以前にも同じような事がありました」


「何も無いなら良いけど…こっちきて。一応浄化の魔法をかけるわ」


僕はカリンに近づいた。


《浄化》


僕の身体が光に包まれる。


「おおーー」


特に何とも無いが、思わず声を出してしまった。


「よく分からないけど、これから先何か異変があればすぐに言うのよ?」


カリンは胸を撫で下ろしていた。


跡地に来ても、結局何も分からなかった。



これは衛兵さんや街の人から聞いた情報だが、


神殿が崩れたのは約半年前。

突然大きな衝撃音がしたと思ったら、神殿が崩れたのだとか。

そして、神殿長は行方不明らしい。

やっぱり神殿長の身に何かが起こったのだろう。

ここの神殿長は前は王都で神殿長をしていたらしい。

だが、ここの神殿では不祥事が相次いだため、自らの意思で男爵領に来たんだとか…。


「とりあえず、今は新しい情報が無いと何も分からないわね…」


カリンは暗い顔をしていた。


「そうですね…それにこれは、僕達に何かできるものでも無いです」


「ええ…」


―――――僕達は考え事をしながら宿に戻った。



――――――――――――――――――――


☆男爵領【宿】


あんな事ができるのはSランク冒険者か神の使徒だけだ…。

カリンの前だったから神の使徒の事には触れなかったがその可能性が高いだろう。


だが、ルージア神の使徒が自分達の主である神を祀った神殿を壊すだろうか?

それか、僕と同じ地球神の使徒?

僕が同じ事をやれと言われれば、おそらく可能だろう。


今の所可能性の高いのはSランク冒険者か地球神の使徒…か…。

だが、そうだとして神殿を壊す理由はなんだ?


………


…ダメだ。全然分からない。


………明日は早いんだ…寝よう。



――――僕は考え事をやめ、寝る事にした。



――――――翌日―――――――


「おはようカリン」


「……おはよう…」


カリンが寝ぼけている。

おそらく寝られなかったのだろう。


まぁそれも仕方ないか。

カリンは聖女。神殿の関係者だ。


もしかしたら故郷の神殿が心配にでもなかったのかな?


―――僕達は朝食を食べ、港に向かった



――――――――――――――――――――


☆ガドーネス王国【西の港】


「無事、船に乗れましたね」


「ええ。やっとお互いの目的地に着くわね」


そうだ。僕もカリンもガラム帝国が目的地。

カリンの目的が何かは分からないが、現地に着いたら恐らく別行動になる。

一緒に旅するのも、この船が最後…か。



「そういえば、カリンはどうしてガラム帝国を目指しているんですか?」


僕はずっと聞いていなかった事を質問した。



「去年…かしら…神殿でね、女神様からお告げを頂いたの。1年後、ガラム帝国を目指しなさいって。だからガラム帝国を目指しているけど、何かをするって言う目的はないのよ」


そうだったのか…。


「コーキは?」


カリンは僕に質問してきた。


「僕は…とある人々を探しに旅に出ています。今回ガラム帝国を目指しているのは、Sランク冒険者のヘルディさんに会いに行くためです。僕が探している人達かどうかは分かりませんが…」


僕は神の使徒と言う言葉を避け、旅の目的を伝えた。


「そうなんだ…」


カリンは何だか考え込んでいる。


「ねぇ…良かったら私も付いていっていいかしら?」


カリンがこちらを見ながら不安そうに聞いている。


「もちろん!カリンが良ければ、また一緒に行動しましょう!」


僕は快く受け入れた。


「ありがとう!」


カリンは満面の笑みでこちらを見ている。



――――ガラム帝国に着いた後も僕達は行動を共にする事になった。

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