第8話 冒険者式、歓迎会
船に乗って約20日。
僕達はガラム帝国の港に到着した。
無事入国審査が終わりガラム帝国に入国した。
物凄く賑やかで活気がある。
港近くには魚市場があり、沢山の人がいる。
「すごい人数ですね…それに…みんな貴族なんじゃないかってくらい、私服が綺麗ですね」
そう。買い物に来ている人に、使い古しているであろう服を着ている人は居なかった。
「ガラム帝国に貴族は居ないわよ。ここでは【領】の事を【州】と言ってね、選挙って言う帝国民の投票で州知事が決まるの。そうね…コーキにもイメージしやすく伝えるとすれば……領主を決めるのは王様では無くその領地に住む国民が決める…って感じね」
カリンが説明してくれた。
なるほど…まさか今世で選挙制度があるとは…
「その州知事のトップが皇帝ですよね?…てことはガラム帝国の皇帝も選挙で選ばれるんですか?」
「州知事のトップは皇帝。これはその通りよ。でも、皇帝は選挙で選ばれない。そこは他の王様達と一緒よ。絶対的なトップは変わらず君臨する。変わるのは領主だけだわ」
ふ〜ん。つまり、日本で言う首相はいないけど天皇はいるってことか。しかもその天皇に絶対的な権力がある…と。
何となくイメージはできた。
「それで貴族はいないってことなんですね」
「そうよ。ここにいるみんな一般人ってわけ」
カリンの口から【一般人】と言う言葉が出るとは思わなかった。
今世では一般人ではなく【平民】と表現されるから。
「とりあえず冒険者のヘルディさんを探すなら、冒険者ギルドを目指しましょ」
「そうですね」
僕達は冒険者ギルドを探す事にした。
――――――――――――――――――――
☆ガラム帝国【冒険者ギルド前】
僕達は冒険者ギルドの前に着いた。
ここに来るまでも、街の様子は賑やかだった。
「あら、すぐ近くに神殿もあるのね」
冒険者ギルドの数件隣に神殿があった。
「ガドーネス王国の男爵領ではお祈りできませんでしたし、せっかくですから今から行ってみては?」
「…う〜ん…そうね!お言葉に甘えさせてもらうわ」
そう言ってカリンは神殿の方に歩いていった。
――――キィィ――――
僕は扉を開け、中に入った。
冒険者達が僕の方を見てくる。
僕が受付の方に向かって歩いていると―――
「おいガキ。おめぇ見ねぇ顔だな。他国の冒険者か?」
4人組の冒険者達が僕の行く手を塞ぎ話しかけてきた。
「はい。ゴースリア王国から来ました」
僕は普通に答えた。
よかった〜。街の雰囲気が今までと全然違ったから…冒険者はどの国でも似たような感じだね。
「はっ!大した事ねぇ田舎の国か。今から俺らが歓迎会をしてやるよ!表だろ」
僕は4人組に囲まれて、外の方に連れて行かれる。
「ちょっと!何やってるのよ!まだ小さい子に…大人気ないわよ!」
奥から受付のお姉さんが止めに来てくれた。
「うるせぇよ。これから歓迎会をするだけだ。すっこんでろ」
絡んできた冒険者は受付のお姉さんに吐き捨てるように言って、再び僕を外の方へ連れていった。
「ちょっと―――――」
「はいはいはい。落ち着きましょーねー」
止めに来てくれたお姉さんは、一部始終を見ていたほかの冒険者に止められてしまった。
―――そして僕は外に連れて行かれた。
「歓迎会をするのにとっておきの場所があるんだ」
そう言って冒険者ギルドの裏の方に回ると、訓練所があった。
訓練所の外は主に魔法使いの人達が、試し打ちの為に使う場所のようだ。
僕達は建物の中に入った。
「てめぇら。悪りぃが今からここ使うぜ」
そう言って中で訓練していた人達を外に追いやった。
「さて、邪魔者もいなくなった。んじゃ歓迎会を始めるぞ。おいガキ。特別に貸してやるよ。これ使え」
そう言って訓練用の剣を僕の方に投げてきた。
そして4人組も訓練用の剣を持ち、僕を囲んで剣を構えていた。
「はぁ…」
僕は思わずため息をついた。
すると――
「随分と余裕ぶっこいてるじゃねぇ〜か、ガキ!!」
1人が僕目掛けて突っ込んできた。
僕は柄を鳩尾に当てた。
「ぐはっ…」
向かってきた冒険者は倒れた。
「「「……………」」」
数秒、沈黙した。
「どうします?今なら見逃しますけど、まだやります?」
僕は余裕ある表情で問いかけた。
冒険者3人が青筋を立てる。
「舐めやがって!!」
3人が僕に向かってくる。
「はぁ…」
僕はため息を吐き、1番僕に近いところまで近づいた冒険者を剣で吹っ飛ばす。
―――バコッーーーー
――――ドシャーーーン――――
吹っ飛んだ冒険者は壁を突き破り、外にいた魔法使い達の前まで行った。
ピクピクして仰向けに倒れている。
「「…………」」
僕の方に向かって来た2人の冒険者は、吹っ飛んだ仲間の方を見ていた。
「どこ見てるの?」
僕は2人に近づき、話しかけた。
「「待っ――――」」
―――――ドーーンッ―――――
――――バコッ―――――――
―――――ガシャーーーン――――――
1人はさっき吹っ飛んだ仲間と同じ所に。
僕に最初に話しかけてきた冒険者は、僕の正面にあった訓練用の剣が立て掛けてある方角に吹っ飛ばした。
立て掛けてあった剣が音を立てて崩れる。
―――――バンッ――――
「僕!大丈―――………」
さっきの受付のお姉さんが勢いよくドアを開け、様子を確認しにきた。
だが、突き破られた壁、倒れている冒険者を見て言葉を失った。
「大丈夫ですよ。先程は助けようとしていただいてありがとうございました」
僕はお姉さんにお礼を言った。
「……う。……え…?…う…そ!?」
お姉さんは混乱している。
「…え?だって……彼らはBランク冒険者のはず…なんで…!?」
困惑しているお姉さんに僕はギルドカードを見せた。
「受付に話しかける前に絡まれたので出せませんでしたが…この程度の冒険者には僕は負けませんよ」
「…………」
ギルドカードを見て、お姉さんは目を見開いたまま動かなくなった。
「……ハッ!す…すみません。失礼致しました。すぐにギルドマスターに――」
「いえ、ちょっと話聞きたいだけなので大丈夫です」
ギルドマスターを呼びに走ろうとしたお姉さんを止めた。
「いえ…ですが…私に対応できるか…」
お姉さんが不安そうにしている。
「では、もし対応できなそうであれば、ギルドマスターに会わせて下さい」
お姉さんは頷いた。
「実は僕、ガラム帝国のSランク冒険者ヘルディさんを探してまして…どこのギルド出身で、できれば居場所が分かるとありがたいのですが…」
「ああ!ヘルディさんでしたら、ジャーロヘガル州が主な活動拠点です。帝国のギルド間でヘルディさんの情報は回ってきますが、今は特に遠征に出ていない筈です」
へ〜。
帝国のギルドにはヘルディさんの情報が回ってるのか。
これは探しやすくて助かる。
「ありがとうございます。早速向かってみます」
僕は礼を言い、頭を下げた。
「あの、もしよろしければこれからギルドマスターとお話しに――」
「すみません。急いでいるので…」
予定外の歓迎会で時間を使ってしまったため、カリンが待っているかもしれない。
それに、他国でギルドマスターに会うと勧誘してきそうで面倒臭いから…
「あ、そうだ。壁の修理費。足りないと思いますが残りはこの冒険者達に払わせて下さい」
そう言って僕は金貨が入った袋を取り出した。
「いえいえ、頂けないです。修理費は彼らに全額請求致しますので。むしろ我が国の冒険者が大変失礼致しました」
受付のお姉さんが頭を下げた。
そういえばガドーネス王国でもこんな感じで、ギルドマスターが宿まで謝罪に来たな。
今日泊まる宿はもう少し遠い所にしとこ…
――――情報を手に入れた僕は、ギルドの扉の前で待っていたカリンと合流した。
カリンが待っている間に馬車を手配してくれていた。
―――僕達は馬車に乗り、少し離れた所で宿探しをした。
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