第5話 謝罪


僕達は男爵領の領都にあるギルドに着いた。


捉えた冒険者達も大人しく着いて来ている。


「ん〜〜〜!やっと着いた〜」

カリンは馬車から降り、伸びるように両腕を挙げた。


「さてと、さっさとこの人達をギルドに渡して宿探しましょ」


「そうですね」


僕達はギルドの中に入って行く。


僕が中に入るとすぐ、中にいる冒険者達はちびっ子冒険者が来たと思い、野次を飛ばしてきた。


僕に続きカリンが入る。


まだ野次は続いている。


拘束された冒険者達が2列になり入ってくる。


だんだんと声が小さくなってくる…。


最後の自称Bランク冒険者がギルドに入る。


野次を飛ばしていた冒険者達は顔が青ざめ、口を開けていた。


僕はギルドの受付に声をかけた。


「ゴースリア王国の冒険者、コーキです。この後ろにいる人達ですが、僕達が港街からこちらに向かう際、徒党を組んで襲ってきました」


そう言って襲ってきた冒険者達を指差す。


「え…そ、それは本当ですか?」

受付のお姉さんは驚きと疑いが入り混じった表情で聞いてくる。



「嘘をつく必要があります?もちろん事実ですし、なんならその場に居合わせた御者さんに確認を取っていただいても構いません」


まぁ、疑いたくなる気持ちも分かるけどさ…


「なるほど…分かりました。ではそれぞれ個別に尋問させていただきます。申し訳ございませんが、あなたにも尋問させていただきます。事実確認をしないといけないので」


受付のお姉さんは疑いの目を向けたまま僕に答えた。


はぁ…


「ゴースリア王国から来たと言っていましたね。冒険者でしたらギルドカードの提示をお願いします」


お姉さんは無駄な仕事が増え、面倒臭そうに僕にカードの提示を求めた。


―――イラッ―――


僕はちょっとムカついたが、怒りを抑えながらギルドカードを提示した。


「!!!!!し、失礼致しましたっっ!!!」


お姉さんの大きな声で放たれた謝罪が、ギルド内に響いた。


し〜ん…と静まり返ったところに隣にいた受付のお姉さん達と他で受付していた冒険者達が寄ってきた。


「「「!!!!!!!!!!!!」」」


「え、Sランクだと…!!」

横に寄ってきた冒険者が声を出した。


――――ザワッ―――――


し〜んっとしていたギルド内がザワザワし始めた。


僕達に連れてこられた冒険者達の顔は真っ青だ。

今頃、誰を相手にしていたのか理解したのだろう。

実力差は理解していただろうが、どれ程離れているのかは、まだ実感がなかったと思える。



先程、僕に野次を飛ばしていた冒険者達は、存在を消すかのように縮こまっていた。



「…で、尋問するんですよね。あまり長く滞在できないですし、今日の宿も探さないといけません。手短にお願いします」


僕は内心イラっとしていたので、冷たく言い放った。


「い、いえっ!!あのっ!ほ…ほんと!も…申し訳ございませんでしたっっ」


受付のお姉さんは今にも泣きそうだ。

Sランクは国が認めた冒険者であり、ずば抜けた実力、実績を持たないと昇格できないのだ。

Sランクというだけで、信用度は高い。

知らなかったとはいえ、Sランク冒険者を尋問にかけようとする人など滅多にいない。

お姉さんが慌てるのも無理はなかった。


「その…尋問は、大丈夫ですっ!」

お姉さんが泣き出した。


あらら…


「そうですか、ではこの人達お願いしますね」


僕達は襲って来た冒険者達を引き渡し、ギルドを後にした。



―――さて、宿探しだ。



――――――――――――――――――――


☆ガドーネス王国【男爵領。領都。宿】


無事、宿も見つかり僕達はゆっくりしていた。

僕の部屋で明日の予定を立てるため、カリンも一緒にいた。


「明日は朝出発すれば、夕方には伯爵領の端にある町に着くわね。とりあえず明日はそこを目指して進みましょ。今の所、野宿しなくて済んでよか―――」


―――コンコン――――


誰かが部屋をノックした。


「はい?」

誰だろ。こんな時間に。しかもここには知り合いはいない。

不思議に思いながら僕はドアを開けた。


「突然のご訪問、失礼致します。本日、うちの部下が大変ご迷惑をお掛け致しました。申し訳ございません」


僕がドアを開けるなり、深々と頭を下げる細身のおじさんがいた。


「どちら様でしょうか?」


誰だ?知らないぞ?


「マチス領のギルドマスターをしています。サヴァと申します。以後、お見知りおきを」



なんと、領都に着いて早々に向かったギルドのマスターだった。

へぇ、ここマチス領って言うんだ。知らなかった。


「それで、例の冒険者達の件ですが、少々お時間頂いてもよろしいでしょうか?」


ああ、その話ね。

もう尋問は済んだのかな?早いな〜


「どうぞ」

僕はサヴァさんを部屋に案内した。


「失礼致します」

サヴァさんは椅子に座り、話し始めた。


「まず、冒険者達はあなた方を襲ったことを認めました。なんでも港街での件でプライドが傷つけられたと思ったのが、犯行理由だそうです。仲間の冒険者達も、話を聞き、面白そうだからと着いて来たそうです。我が国の冒険者が大変ご迷惑をおかけしました。こちらは迷惑料と引き渡し料です。お受け取り下さい」



サヴァさんは机の上に袋を置いた。

まぁやっぱりあの一件か…

それにしてもよく認めたな。

流石にあの大きさの炎球で戦意喪失した所に、僕がSランクだと知ったからか。



僕は袋の中を見る。


金貨80枚

大銀貨40枚

銀貨50枚


多っ!!


「え…これ…流石に多すぎません?」

僕は額に汗をかきながら言った。


「迷惑料の中には、冒険者襲撃もありますが、私の部下の態度に対しての謝罪でもあります。多くはないです」


なるほど…確かにあれにはイラッとした。

けど…正直こんな大金を貰うほどではない。


「う〜ん…確かにイラッとはしたけど、こんなに貰うほどではないです。では半額お返ししますので、ギルドの人材育成の足しにでもしてください」


そう言って僕は半額返金した。

全額返金したらサヴァさんの立場がないからね。

謝罪を受け入れる形で半額は貰うことにする。


「……わかりました。ではありがたく頂戴いたします」

サヴァさんはまた、深々と頭を下げた。


――暫く話をして、サヴァさんは帰っていった。



「カリンは魔法バックありますか?これはカリンにあげます」

僕は金貨40枚をカリンに渡した。


「えっ?なんで?大金ではないけど、私もお金はあるわよ?」

カリンは不思議そうにこちらを見ている。


「万が一の為です。何かあった時、大金が必要になるかもしれません。持っていて損はないです」


「それならあなたが持っていても同じでしょ?」


「僕は持ってます。白金貨10枚と大金貨20枚」

黒神狼の討伐報酬を、僕の領地の開拓に使った余りだ。

ダムルスに渡すつもりだったが、断られた。

こういう時くらい、親を頼れ!そう言われた。

僕、結構ダムルスには頼ってるんだけどね…。



「な…なんでそんな大金…」

カリンはかなり衝撃だったのか、そう呟いたままボーッとしてしまった。

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