第3話 聖女カリン
「ぐっ、誰だ!解きやがれ」
男性が喚いている。
「ダメです。あなたはこのまま拘束します。処分は衛兵さんに任せますが…」
白いローブを着た水色の髪の女の子は男性の顔を見ながら、拘束を強化した。
「それにしても、あなた凄いわね!気づいたら腕掴んでるんだもの。あなたまで巻き込みそうだったわ」
女の子が僕に話しかけてきた。
「いえいえ、こちらこそ驚きました。腕を掴んだら拘束されてるんですから…凄いですね。この魔法」
僕は光の鎖を見ながら言った。
《拘束》か…僕も使えるようになりたいな。
これは…光属性の魔法なのか?
「私はカリン。よろしくね!出身はスヴェール王国よ」
カリン…か。ゴースリア王国には余り無さそうな名前だな。日本っぽい。
まぁ僕も何故かコーキだし…そういうこともあるのかな?
そういえば…なんで僕、前世と同じ名前なんだろ?偶然?
「ゴースリア王国から来ました。冒険者のコーキです。こちらこそよろしく」
僕は自己紹介してカリンと握手した。
「その格好だから冒険者だとは思ったけど、あなた相当強いわよね」
カリンはじ〜っと僕を見ていた。
そんな見つめられると照れる…
「そんなことより、ここ入国審査する場所だったわ…」
「そうだったね…並び直さなきゃ」
僕達は列に並び直すため戻ろうとした。
「お待ちください。是非お礼をさせていただきたい。こちらにお越しいただけませんでしょうか?」
衛兵のリーダーらしき人が僕達に声をかけてきた。
僕達はついて行き、近くの建物内に入った。
「改めまして、部下を助けていただきありがとうございました」
衛兵のリーダーらしき人は頭を下げた。
「いえいえ、たまたま居合わせただけなので」
僕は答えた。
横ではカリンがうんうん、と頷いている。
「本当にありがとうございます。あの男は以前、王都で問題を起こし入国禁止になっていたのです。今回、剣を抜いて衛兵や周りの方を危険に晒したので、牢に入れられるかと」
なるほど。
何やったんだろ、、、
「あ、そうだ。僕達まだ入国審査終えてませんが大丈夫ですか?」
「そうですね…助けていただいたので大丈夫です!…って言いたいところですが、決まりですので申し訳ございませんが何か身分を証明できるもののご提示をお願いします」
申し訳なさそうに衛兵のリーダーらしき人は頭を下げた。
「はい。これで良いかしら?」
カリンは白色のカードを出した。
「な…なんと!スヴェール王国の聖女カリン様!!大変失礼致しました」
物凄く慌てている。
へぇ〜聖女様だったのか。
白色のローブを着て、優しそうな見た目だから何となくそんな感じはしていたが。
「僕はこれで」
僕はギルドカードを提示した。
「「……!!!!!!……」」
衛兵のリーダーらしき人とカリンは目を見開き、僕のギルドカードを見ていた。
「強いとは思っていたけど…まさかSランクだったなんて…もしかして…」
カリンがボソッと独り言を呟いている。
「Sランク冒険者の方だとは…初めて見ました。ゴースリア王国のSランク冒険者…まさかあなた様があの噂の方だとは…」
噂?やっぱり僕の事噂になってるの?
まさか海を越えた他国にまで情報がいっているとは…Sランクはやはり別格なんだな。
「ねぇ。コーキ。あなたこれから何処行くの?もしよかったら暫く私と行動しない?」
カリンから提案された。
「ガラム帝国に向かうつもりです。それまでなら――」
「あら、私もガラム帝国を目指してたのよ!丁度いいじゃない!」
なんと、カリンもガラム帝国を目指していたみたいだ。
「ではよろしくお願いします。カリンさん」
「カリンでいいわ」
僕達は改めて握手をした。
――――入国許可を貰い、僕達はガドーネス王国に入国した。
――――――――――――――――――――――
☆ガドーネス王国【東の港近くにある街】
僕達は宿と馬車を探しに近くの街に着いた。
まずは宿探しだ。
街の第一印象は穏やかな街…といったところだろうか。
暫く歩き良さそうな宿を見つけた。
「すみません。今日泊まりたいんですけど、2部屋空いてますか?」
僕は受付のお姉さんに声をかけた。
「はい。空いてますよ。料金は前払いになりますが、よろしいですか?」
よかった。空いていた。
1人1泊銀貨5枚だそうだ。日本円で5000円だ。
僕は大銀貨1枚出し、2人分払った。
「はい。コーキ。私の分」
カリンは銀貨5枚を僕に渡そうとしてきた。
「いえ、大丈夫です。ここは僕に払わせてください」
せっかく旅の仲間ができたんだ。
お金は余ってるし、ここは僕が出したい。
「じゃあ今日のご飯は私が奢るわ」
そう言ってカリンは銀貨5枚を戻した。
部屋に案内され中を見ると、思ったより広かった。
これで5000円ならかなりお安い。
「宿も確保できたし、馬車の予約とご飯食べに行きましょ」
僕はカリンと一緒に宿の外に出て、明日の馬車を予約した。
護衛は僕がいるから必要ない。
僕達はご飯屋さんに入った。
定食屋かと思ったら、居酒屋だった。
でも客はあまりいなかった。
食事と会話を楽しみ、少しゆっくりしていた。
――――バンッ――――
勢いよく扉が開いた。
「あ゛ーやっと終わったぜ。おい、婆さん。飯と酒ー」
ガラの悪い3人組が入ってきた。
席に向かう途中に僕達の方を見てきた。
「おー、中々上玉じゃねぇか。おい嬢ちゃん。ちょっと俺たちの所に来いよ。ガキ、お前はいらねぇ、さっさと失せろ」
僕達に絡んできた。
「お断りするわ」
カリンはつーんとした感じで目も合わせなかった。
僕は思わずニヤけてしまった。
「おい、ガキ。何笑ってやがる。てめぇ、覚悟できてるんだろうな?」
僕の胸ぐらを掴み、ガラの悪い3人は僕を囲んだ。
「う〜ん…とりあえず、店の中では迷惑なので外出ましょうか」
僕の提案にイラっとしたのか、怒りの形相をしながら動き始めた。
僕は胸ぐらを掴まれたまま、外に連れてかれた。
僕は外で投げられた。
まぁ、普通に着地したけど。
「舐めやがってガキが!」
3人組が殴りかかってくる。
―――ドコッ、ドカッ、ボコッ―――
僕は一瞬で3人の顔、腹をそれぞれ殴った。
3人は地面に蹲りながら、何が起こったのか分からない様子だった。
僕は3人を見下す。
すると店の中からカリンが出てきた。
「やっぱり、もう終わってたわね。じゃ、そんなの相手にしてないで戻るわよ」
そう言ってカリンは宿に向かって歩き出した。
僕はそれに着いていった。
………
「……クソがっ、あのガキ、覚えてやがれ」
僕の胸ぐらを掴んでいた奴が、地面に蹲りながら去っていく僕を睨んでいた。
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