第2話 出発


☆王都【王城。応接室】


「もう行くのか、コーキ君」

「お気をつけて、コーキ様」

「お主の帰り、待っておるぞ」


宰相様、シャルミア姫、国王様が旅立つ僕に激励の言葉をかけてくれた。


シャルミア姫…1年半で背が伸び、女性らしくなった。

セミロングで艶のある黒色なのは変わらないが、身長はおそらく150cm近くはあるだろう。

僕がプレゼントしたショールを使ってくれているようだ。



「ありがとうございます。行って参ります」

僕は3人に頭を下げた。


「まずは何処の国に行くのだ?」

宰相様が僕の旅先が気になり聞いて来た。


「そうですね…まずはゴースリア王国の同盟国の〈ガドーネス王国〉か〈ダスフィリ王国〉に行き、そこからガラム帝国を目指すつもりです」


ガラム帝国にはSランクの冒険者がいる。

ルージア神の使徒レベルの強さなら、Sランクになっていても不思議じゃない。

何処にいるかわからない以上、Sランク冒険者の出身地に行くのがいいと考えた。



「ガラム帝国か…我が国とは同盟を結んでないからの…あまり情報は無いんじゃ…お主なら大丈夫かと思うが気をつけるのじゃぞ」

国王様は心配そうな顔をして僕を見ていた。


「ふむ…コーキ君…アーリジャ大陸には2人程強い者がおる。1人は知っておると思うが、ガラム帝国のSランク冒険者〈ヘルディ〉だ。もう1人はあまり情報は入ってこないが、聖魔法を得意とすると聞いておる。アーリジャ大陸は広いから、こちらから近づかなければ多分会わないとは思うが…」


はい、こちらから近づきます。


(いい情報を得た。Sランク冒険者以外にももう1人いたとは…)


「情報ありがとうございます。宰相様」


「ガドーネス王国かダスフィリ王国と言っていたの。ガドーネス王国から行ってみてはどうじゃ。ガラム帝国に行く船はガドーネス王国の方が多いし、なにより距離が近いからの」


国王様が提案してくれた。

なるほど…どちらの国からもガラム帝国へ行くことはできる。

だが確かに、距離を考えればガドーネス王国の方が良さそうだ。


ルージア神の使徒を探しつつ、美味しいご飯があれば…と思ってダスフィリ王国も候補にあげたが、遠くの大陸と違い、ダスフィリ王国ならゴースリア王国から比較的簡単に行ける。

無理して今寄る必要はないだろう。


「では、ガドーネス王国からガラム帝国に行こうと思います。情報ありがとうございます」


僕は礼を言って、席を立った。

「ではそろそろ行きます。失礼します」

僕は頭を下げ、ドアの方に向かった。


「コーキ様っ」

シャルミア姫が走って来て、僕の手を繋いだ。


「王城の外までお見送り致しますわ」

シャルミア姫は笑顔でこちらを見ていた。


「私、王都学園の魔法科に入学致しましたの。精一杯勉強し、コーキ様に相応しい女になってみせますわ。先生は…目つきは怖いですが、とても分かりやすく教えてください―――」

あ、師匠だ。

「その先生とは青い髪をした女性の…」

僕はシャルミア姫の話を遮り、聞いてみた。


「そうですわ!やっぱりお知り合いでしたのね。私と似たショールを使っていたので…もしかしたら…と」


そっか。師匠。使ってくれてるのか。


「ナチールさんは僕に魔力の使い方を教えてくれた師匠です」


「まぁ、そうなんですの!?ふふっ、コーキ様と同じ方にご教授頂けるとは…うれしいです」

シャルミア姫はとても喜んでいた。


――――話していると、王城の外に近づいた。


「ではお気をつけて。コーキ様」


「ありがとうございます。では、行って参ります」


――――ギュッ――――


シャルミア姫が抱きついて来た。

僕は静かに受け入れた。


離れたシャルミア姫はとても嬉しそうに笑っていた。


――――僕は王都の北にある港へ向かった。



――――――――――――――――――――


☆ゴースリア王国【北の港】


港には立派な帆船があった。

僕がこれから乗る船だ。


船のチケットを買い、僕は中に入った。


まぁ、前世基準の船と比べたら微妙だけど、今世で考えればかなり立派だと思う。

だが…ゴースリア王国にこれ程の技術力はあるのか?

おそらく、アーリジャ大陸の技術だろうか…。


楽しみになってきた!!!


―――道中何事も無く、僕は船に揺られながらこれからの事を考えていた。



――――――――――――――――――――――


☆ガドーネス王国【東の港】


着いたーーーーー!!!!!!!!


15日程経っただろうか…。

結構かかったな〜。


あとは降りた先で入国審査をするだけだ。


ちょうど他の国からも船が到着したのか、かなりの列ができている。


並んでしばらく待っていると、前の方で声が聞こえた。


「ふざけんなっ!!さっさと通しやがれぇ!」

20代くらいの冒険者?がガドーネス王国の衛兵の胸ぐらを掴み、怒鳴っていた。


「ですから、貴方は以前、入国禁止をいい渡されたはずです。入国許可することはできません」

衛兵は負けずに言い返していた。


「チッ」

胸ぐらを掴んでいた右腕を振り、衛兵を地面に叩きつけた。


そしてなんと、その男性は剣を抜き衛兵の首の方へ向けたのだった。


「はぁ…」

僕は溜息を吐きながら、列を抜け男性の元へ向かった。


僕は男性の右腕を掴んで剣を離させた。


それと同時に―――


拘束バインド


光の鎖が男性の体に巻きついていた。


「ダメですよ〜こんな所で剣を抜いちゃ」


―――そこには魔法使いと思われる白いローブを着た女の子が立っていた。

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