第28話 9人目に名乗りを上げました



ダルパニア王国の王都を出発し、道中何事もなく、ランズ侯爵の領地に着いた。

今日はここに泊まり、明日王都に向け出発だ!



今日の宿を探すため、領都を散策している。

馬車が置けるスペースがある所を探さないと…。



――う〜ん…

なかなか良さそうなところが見つからない…。

もっと領主邸の近くに行かないとないのかな…?



ちょっと大通りを外れれば貧民街となるランズ領なら、良さそうな宿はある意味目立つからすぐ見つかると思っていた。



―――領主邸に向かって馬車を進めていると


「あ、ソルティナさん!」


僕は馬車の窓から、外を歩いているソルティナ達を見つけた。


馬車を止め、ソルティナ達に声をかける。


「坊やじゃない!ここで会うなんて思わなかったわ!」

「久しぶりだな。坊主」


ソルティナとジャールは僕を見て驚いていた。


「お久し振りです。どうしてこちらに?」


「王都にいたランズ侯爵の第一令嬢の護衛で来たのよ。今日はここに泊まって、明日王都に帰るつもりよ」


なるほど。護衛していたのか。


「そうなんですね。僕は今日着いたばかりで今宿探ししてます。けどなかなか見つからなくて…」


「坊主宿探してたのか。なら俺達が泊まる所で良ければ案内するぞ?」


ジャールから素敵なお誘い。


「馬車置ける所ですか?」


僕は1番の問題である馬車置き場の有無を聞いてみた。


「ああ、あるぞ」


なんと宿探しに苦労していた僕は、知り合いに会ってすぐ問題解決した。

やっぱ人脈って大事だよね!


―――宿は空き部屋があり、泊まる所を確保できた僕はソルティナ達と飲み屋に行った。

もちろん僕はジュースだよ。

コーラ飲みたいけど、この世界には無いからオレンジジュースで我慢。でも身体は子供だからかな?すごく美味しい!!


ベスタさんとも合流し、ソルティナ達のパーティーと僕は楽しい時間を過ごした。

ここまで気を使わず、素で接する事ができるソルティナ達は僕にとって貴重な存在だ。

貴族って面倒くさいよ…ほんと…


――お酒の席で、ソルティナ達が歩いて王都へ向かうと言っていたので、僕の馬車に乗るよう進めた。

最初は断られたが、話し相手が欲しいと言ったら快く引き入れてくれた。



――――ソルティナ達と馬車に乗り、僕達は王都へ到着した。


王都ギルドに向かうため、ソルティナ達とは別れた。

僕は直接王城に向かう。


――――――――――――――――――――


王城。応接室。


王城に着き、応接室へと通された僕。

この部屋には国王、宰相、ダムルス、僕の4人だけだ。


「無事、黒神狼の討伐に成功しました。結果的にですが、人命被害も無く終わる事ができました」

そう言いながら僕は、ダルパニア王国の国王から預かった紙を机に置いた。


「おお、人命被害0とは…!!よくやってくれたの。コーキよ。お主のおかげでこの大陸は救われたのじゃ」


人命被害0と聞き、3人は驚いていた。

本当、紙一重だったよ?

あともう少しエネルギー砲が弱まってなければ、南の村直撃だったし…


「それで討伐した黒神狼ですが、こちらに出してもよろしいですか?」

僕は討伐した証として、黒神狼を出す許可をもらう事にした。


「お、おお。黒神狼の剥ぎ取り素材か。お目にかかれるものでも無いしな。ここで良いぞ」

宰相様が机を指しながら答える。


「いえ、黒神狼本体です。流石にこの机は小さいです。あちらのスペースに出していいですか?」


僕はドアの近くにある広いスペースを指差した。


「「「!!!!!!!!!!」」」


「く…黒神狼の…本体…だ…と…」

3人とも目を見開いて僕を見ている。

「ど…どこにあるのじゃ…?」


ダムルスが言葉を絞り出し声を出したあと、国王は目を見開いたまま聞いてきた。


僕は《空間収納》の事を伝え、実践しながら黒神狼を出した。


「「「………」」」


はい、毎度お決まり。3人とも言葉を失った。


………………


………………


………………


……沈黙長っ。


僕は唖然として声を出さない3人を見ながら


「とりあえずデカイのでしまいますね」


黒神狼を空間収納に戻した。


―――気を取り戻した国王達は


「そ、それで、今回の報酬じゃの。受け取ってくれ」


そう言ってダルパニア王国と同額の、白金貨40枚と大金貨15枚が出された。


「大金貨を金貨に両替して頂くことは可能ですか?」


僕にとって大問題な両替について聞いてみた。

白金貨とか大金貨は、本当に使いづらい。


「う…うむ。あとで持って来させよう。用意できるまでの間大金貨を受け取ってくれ」

宰相様が両替に応じてくれた。

やった!


「それでの。ここからが本題じゃ。コーキよ。お主を我が国最初のSランク冒険者に認定する。お主なら必ず黒神狼を討伐してくれると思っての。事前に手続きは済ませておいたのじゃ」


そう言って国王はゴールド色の冒険者カードを机に置いた。

右の枠にはダイヤがはめられている。


「ありがとうございます」

僕はAランクカードを返却し、Sランクカードを受け取った。


ついに僕はSランク冒険者となったのだ!!


「それともう一つじゃ。領地運営はしなくて良いが、爵位は受け取ってもらうのじゃ。いきなりじゃが、お主には侯爵になってもらう。無事、使命を果たしら公爵にすることを約束するのじゃ」


ダムルスと同じ地位をいきなり手に入れてしまった。


「領地に関してだが、サランド領の北側にある土地を与える。侯爵領としては小さいが、ダムルスが代わりに領地運営するためだ」


宰相様から領地の説明があった。


―――何はともあれ、ダムルスが代わりに領地運営してくれるなら心配はないし、無事Sランクになることができた。


ルージア神の使徒とも、今の僕なら十分戦えるだろう。

そろそろ――――出発の時が来たかな。



――――後日。

僕は謁見の間にて、他の貴族参列の元、正式に侯爵となった。

また、ゴースリア王国初のSランク冒険者誕生を祝い王都中で祭りが開かれた。



僕は王都を凱旋し、シャルミア姫とこれからの事について話し合った。


―――そうそう。黒神狼の素材だけど…

素材としてツノを使い、剣を作った。

剣の鍔と握りはジャールから貰った剣から使っている。


毛皮でショールを作った。師匠とシャルミアの二人分…と、サランド領に帰ったら、間違いなく激怒しているであろうレイア姉様にも作った。


その他、爪などは王城に売った。

追加でたんまり入ってきた。





――――僕はサランド領へ戻り、レイア姉様のご機嫌をとった。


Sランクになった事を伝えたら泣いて喜んでくれた。


久し振りの僕を離さないレイア姉様と一緒に寝て、1日を終えた。

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