第22話 黒神狼2


謁見が終わり、シャルミア姫と顔合わせを終えた僕は、王都邸で一泊し王都を後にする。



今、ダルパニア王国に向け馬車で移動している。

僕は国王様から、ダルパニア王国の国王へ向けた文書を預かっている。

もちろん王印付きだ。


戦地はダルパニア王国。勝手に討伐しに行き、ダルパニア王国に多大な損害が出れば責任問題になる。


だからこの文書を渡し、ゴースリア王国とダルパニア王国、両王家から僕への依頼とする。



王都の南西にある門から出て、ランズ侯爵・ファイニール子爵の領地を通ればダルパニア王国に着く。



ランズ侯爵領は貧富の差が激しいみたいだ。

表通りは賑やかで活気がいい。

だが少し裏道へ入ればスラム街がある。

ちなみにランズ侯爵邸は城のような派手な造りになっている。


ファイニール子爵領は田舎町…といった印象だ。

だが貧富の差はあまり無いのか、質素ながら領民はみんな今の生活に不満は無さそうだ。



―――――約10日程でダルパニア王国との境界線に着き、入国した。



――――――――――――――――――――――


☆ダルパニア王国


僕は今、ダルパニア王国の王都へ入る為、馬車用一般門の列に並んでいる。

今の僕はレイジェント侯爵家四男ではなく、Aランク冒険者コーキとして来ているからだ。



ダルパニア王国の王都へ向かう道中、男爵領・公爵領を通った。


正直な印象は公爵領でも田舎っぽい感じだった。


でも街並みは綺麗だ。


ゴースリア王国と比べたら小国だ。

おそらく王都も公爵領と似た感じだろう。


僕はそう思いながら、順番が来るのを待っていた。


―――――――――――――


―――――――――


――――――


20分くらい待ったかな?

1人で待ってると時間経つのが遅くて…


ようやく僕の順番になった。


厳つい門番2人に前を塞がれ、馬車が止まる。


その位置は馬車にいる僕と受付の衛兵がやり取りできる位置だった。


「目的と、何か身分を証明できるものの提示を」


受付の衛兵は、貴族が乗るような馬車に1人で乗っている子供が怪しいと思ったのか、少々威嚇するような目つきで対応してきた。


まぁ…そうだよね…普通怪しむよね。


僕も逆の立場なら、貴族用馬車に乗るフル装備のちびっ子冒険者なんて来たら同じような対応すると思う…。


僕はギルドカードを提示しながら

「ゴースリア王国から来ました。我が国の国王様からの命でダルパニア王国、国王様にお渡ししたい物があります。また可能なら謁見をさせていただけると」


Aランクのギルドカードを見た衛兵は焦った顔をしていた。


「たっ…大変失礼致しましたっ!申し訳ないのですが、王令でこちらにいらっしゃった証明などございますか?」


衛兵は物腰柔らかく、丁寧な口調で僕に聞いてきた。

いくらAランク冒険者といえど他国の人間だ。

しかもその人間が自分の国の王に会おうとしている。

証明できるものが見たいのは当然だろう。


一歩間違えれば友好国の使者に対し失礼な態度…と捉えられることもある。

だが、他国の人間でギルドカードにより実力も証明されている。

そんな人間を確認をせず王都に入れれば、それはそれで衛兵の責任となる。


僕は王印の押された文書の包みを見せた。

「これで大丈夫ですか?」


これを見た瞬間衛兵は物凄い勢いで頭を下げた。


「失礼致しましたっっ!!どうぞお入り下さい。…もしよろしければこちらの方で王城に連絡をし、案内を寄越しますが?」


「いえ、大丈夫です。自分で直接向かいます」


――――僕は無事、ダルパニア王国の王都へ入ることができた。



―――――――――――――――――――――


ダルパニア王国の王城に着いた。


城門前には守護兵が5人もいた。

みんな槍を持っている。


「止まれ、ここは王城である。馬車でこれ以上近づくのは許されん。用がある場合は使いをこちらまで寄越すように」


守護兵の1人が大きな声で僕の乗っている馬車に向かって警告してきた。


使いなんていないから、僕は言われた通り馬車を降りて守護兵に近づいた。


槍の射程外ギリギリまで近づいた僕は、王印入り文書の包みを見せながら

「ゴースリア王国の使者です。こちらを国王様にお目通し頂きたく参りました。そして、もし可能でしたら謁見させて頂きたく思います」


「これは間違いなくゴースリア王国の王印!失礼致しました。少々お待ちください」


そういうと守護兵の1人が走って行った。


――――10分程経って、40代くらいのダンディな人を連れてきた守護兵が戻ってきた。


「待たせた。ゲルダ・フォン・ファルゴ・エルダーだ。ダルパニア王国の外交官であり、エルダー領の領主をしている。よろしく」


なんとダンディな人は、道中寄った公爵領の領主様だった。


「はじめまして。コーキと申します。こちらこそよろしくお願いします」

僕は家名と冒険者ランクを伏せて、挨拶した。


「まずはこの文書を国王様にお目通し頂きたく。謁見はまだ分からない。取り敢えず王城の控え室でお待ち頂きたい」


―――僕はファルゴ公爵に案内され王城へと入った。

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