第23話 黒神狼3
☆ダルパニア王国【王城。執務室】
「失礼致します」
王のいる執務室のドアをノックする低い声の人物。
「入れ。ゲルダか。どうした」
執務室に入って来たのはダンディな男。
ダルパニア王国の外交官だ。
「国王様。ゴースリア王国の使者より文書を預かりました」
ゲルダは文書を国王の机に置いた。
王印を確認した国王は包みを開け、文書を読んだ。
そこにはこう書いてあった
―――――――――――――――――――――
ダルパニア王国・国王サルバーニ殿
久し振りじゃの。緊急案件の為挨拶は省く。
黒神狼の事じゃが、ついに討伐できる実力のある者が見つかった。お主にこの文書を届けた者がそうじゃ。
―――驚いたじゃろ。こんな少年が黒神狼を倒せる訳ないと思うのが普通じゃ…。
じゃが、その少年はブルードラゴンを剣一振りで討伐する程の実力じゃ。Sランクの基準も満たしておるし、ワシはこの者を我が国初のSランク冒険者にするつもりじゃ。
そういえば、黒神狼の情報は互いに集め、倒せる者を探せなかった方が討伐依頼報酬を払う。
そういう約束じゃったな。
じゃが、お主がダルパニア王国の領地でこの者が戦闘を行い、それに伴う損害について一切責任を問わないと言うなら、我が国と共同依頼という事にするつもりじゃ。
ダルパニア王国が戦地と報酬の半分、我が国が実力ある冒険者と報酬の半分。
それを互いに負担し合うのはどうじゃ?
どうせ何もしなかったり、この者が負ければ大陸が滅ぶしの。
―――もし、この提案を受け入れるなら別紙に王印とお主のサインをし、その者に渡すのじゃ。
いい返事を期待している。
――まぁ、ワシがお主の返事を知るのは、黒神狼が討伐された後なんじゃけどの!ホホホホホホホ
ゴースリア王国・国王カイセル
――――――――――――――――――――――
「………」
国王は言葉を失いながら、文書に重なっていた誓約書を見た。
「国王様、実はその文書を持ってきた者が謁見を希望しており―――」
「今すぐ呼べっっ!!30分以内に準備をするんだ!」
国王はゲルダの言葉を遮り、焦った声で命令した。
(我が国の1番の脅威を解消できるかもしれない者。すぐにでも会い、交渉をしたい)
―――こうして、王城は一気に慌ただしくなった。
――――――――――――――――――――――
30分後
☆ダルパニア王国【王城・謁見の間】
(信じられん。この者が黒神狼を討伐に行くのか。文書には少年とあったが、13歳〜くらいかと思っていた。まさか10歳にも満たない子どもだとは…)
国王は王の御前で跪いている少年を見て驚いていた。
ギルドカードも確認したから余計に驚いた。
(この少年を見た時、カイセル殿が俺をからかう為にあんな文書を寄越したのかと思った。だがあのギルドカードは偽装された者ではない。ゴースリア王国初のSランクになる男…か。)
「カイセル殿から既に聞いていると思うが、其方に黒神狼の討伐を依頼したい」
「はい。お受けさせて頂きます」
俺の話に即答した少年は、力強い目をしていた。
(即答…か。この力強い目、相当自信があるようだ。ただの自信家とは違い、自分の実力をしっかりと把握した上での自信だ。この少年なら…倒せるかもしれない)
「其方への討伐報酬だが、我が国とゴースリア王国で半分ずつ出す事になっている。その代わり、黒神狼との戦闘における我が国の領土の損害は不問とする。其方には一切責任を問わないとここに誓い、この紙はお主に渡しておく」
俺はサインし、王印を押した誓約書を少年に渡した。
「では――よろしく頼む」
少年が大きく頷いたのを確認し、俺は謁見の間を出た。
(あの少年何者なんだ?もし黒神狼を討伐したら、今度はあの少年が我が国の脅威となるな…)
―――俺の悩みの種が1つ増えそうだ。
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