第21話 黒神狼1
「
僕は驚いた。
「神狼様は聖なる神と呼ばれておるが、黒神狼は闇そのものじゃ。もし一度暴れたら、その国…いや、その大陸にある全ての国が滅ぶじゃろう」
国王様は深刻な顔をして僕に伝えた。
伝説とまで言われる黒神狼…本当に存在するのか?
ドラゴンの討伐ランクはSランク。竜種によってはSランクオーバー。とても強力だが、高ランクパーティーは、誰もが討伐を目指し目標にするモンスターだ。
だが黒神狼は違う。
討伐ランクなんてものは存在しない。
ドラゴンとは比べものにならない程強いからだ。
それに覚えているだろうか?
王都ギルド総括のエルヴァさんがSランクオーバーの魔石はドラゴンしかいないと言った言葉を…
そう。黒神狼に魔石などない。
どんなに体を傷つけても、必ず高値で売れる魔石がとれず、傷ついて価値が下がった本体しか売れない。
しかも圧倒的に強い。
存在自体疑われるが、存在を知っていても挑む人間などいないのだ。
「それで、黒神狼はどちらに?」
僕は生息地は何処なのか聞いてみた。
この国にそんな脅威がいるなんて…。
「隣の国、ダルパニア王国にある樹海だ」
宰相アレグ様が答えてくれた。
ダルパニア王国…
ゴースリア王国の隣に存在する国だ。
500年程前、元々ゴースリア王国とダルパニア王国は1つの国で名前も違った。
そして、ゴースリア王国のある大陸は、この2国しかないのである。
別の国になっても、今では同盟を結び友好的な関係だ。
それに、ダルパニア王国はゴースリア王国と比べると小国である。
黒神狼との戦いで滅ばなければいいが…
「分かりました。その依頼お受けします。大陸の危機です。協力させていただきます」
「助かる。これは王家専属契約を結んだ冒険者達が集めた情報じゃ。お主にとって有効かは分からぬが、何も情報が無いよりはいいじゃろう。持って行ってくれ」
そう言って国王は僕に紙の束を渡してきた。
「ありがたく頂戴致します」
―――こうして、神の使徒と黒神狼の話は終わったのである。
………そう。ここからはダムルスも加わりシャルミア第二王女との婚約の話になった。
ダムルスはそれはもう…めちゃくちゃ驚いていた。
僕の使命の話をしていたはずが、何故か婚約を結ぶことになってるんだ。
そりゃビックリするよな〜
ハハハ…
僕は当事者なのに、他人事のように乾いた笑いをしていた。
―――――――――
――――――
―――
ダムルスは今回の婚約を快く受けた。
そして黒神狼を討伐しに行く事を説明した。
とても心配していたが、国王からの直接の依頼であり、かつ国王からこの話を聞いたダムルスには意見する権利はなかった。
ダムルスに説明が終わった後、僕は第二王女シャルミア姫と顔合わせすることになった。
(初のお見合いが王女って…)
――ドキドキ――
僕は緊張していた。
―――ガチャ―――
「失礼いたします。ただ今参りました。お父様」
ドアから女の子が入ってきた。
この子がシャルミア姫か。
綺麗な艶のある黒髪、長さはセミロング。
前世基準なら間違いなく【清楚】という言葉で言い表させていただろう。
シャルミア姫といい、ティオーラちゃんといい、王都の少女は美少女ばかりだ。
(てっきり年上かと思ってたけど…僕より身長が低い。身長はティオーラちゃんと同じくらいかな?)
「シャルミア、この者がこの前話した婚約者候補じゃ。今回正式に婚約を結ぶことになっての。ほれ、挨拶を」
どうやら国王様はシャルミア姫に僕の事を話していたようだ。
シャルミア姫は僕が婚約者と聞き、近寄ってきた。
「お初にお目にかかります。シャルミアです。今年で10歳になります。これから末永くお世話になります」
シャルミア姫はドレスの裾を両手で持ち上げ、礼をした。
……なっ…なんだってえええええぇぇぇ!!!!!
(やっぱり年上だったーーーーー!!!どう見ても年下にしか見えない…)
僕は驚きを悟られない様に振る舞いながら
「はじめまして。コーキ・フォン・レイジェントと申します。こちらこそ、末長くよろしくお願い致します。シャルミア姫」
僕は満面の営業スマイルを発動した。
正直驚きで顔が引きつりそうになっているが……
必死に我慢した。
――――――――――――
――――――――
―――――
挨拶が終わり、色々話をした。
なんと来年から王都の学園に通うらしい。
専攻科は魔法。僕の師匠が首席で卒業した所だ。
シャルミア姫は魔法が大好きなんだそう。
よくベスカさんのお店にも足を運ぶし、ティオーラちゃんとも仲が良い。
おっどろきぃ〜。前世も今世も、本当に世間って狭いよね。
――――僕達は会話を楽しんであっと言う間に時間が過ぎていった。
僕は王都からこのまま黒神狼を討伐しに行く。
―――まだ暫くサランド領の屋敷でゆっくり出来そうもないや。
レイア姉様、怒ってるだろうな…
前回の護衛依頼の帰りですらあれだったし…
――――僕はある意味でホームシックになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます