第20話 謁見


ダムルスが事前に依頼しておいた冒険者3人の護衛と供に、王都へ向かった。


途中モンスターに襲われたが、僕は何もすることなく護衛の冒険者3人が全て倒してくれた。


僕達は無事王都へ到着した。



「まずはレイジェント家の王都邸で身だしなみを整えろ。その間に謁見を申し込んでくる」


言われた通り僕は身だしなみを整え、すぐに謁見する事になった。


―――――――


――――


――


☆王城【謁見の間】



「面を上げよ」


僕は顔を上げると凛々しい、まるで偉人のような人が王座に座っていた。この人がゴースリア王国の現国王カイセル様だ。


「忙しい中呼び出して悪かったのう。一度お主と顔を合わせておきたかったのじゃ。お主に聞きたい事がある。領地運営はする気ないか?もちろん、今すぐではない。成人してからの話じゃが」



領地運営だと…。それって僕に爵位を与え貴族家当主になれという事か。

…普通なら大変名誉な事であり、断る者はいないだろう。

だが僕は地球神の使徒として、やらなきゃいけない事がある。(まだ見ぬ前世と同じ料理があるかもしれないし!)

全てが終われば、またこの国に戻って来るつもりだ。

だが各国へ旅する事が決まっていて、何年かかるか分からない以上、領主となり縛られる訳にはいかない。



「大変魅力的なお話ではありますが、王よ、私にはやらなければならない使命がございます。それが終わるまでは、私に領主になる資格はございません」


王の誘いを断ったのだ。無礼者だと、打ち首にしろと言う者は当然いた。筆頭はランズ侯爵だ。

ちょび髭を生やし、如何にも性格が悪そうな見た目だが、一応優秀で大きな派閥を取りまとめている人物だ。



「落ち着け、ランズよ。ワシはダメ元で聞いてみただけじゃ。コーキよ、お主の気持ちはよく分かった。ところで、その使命とやらを教えてはもらえぬか?」



カイセル国王は懐の深い国王として、国民からの心象はとてもいい。

僕も実際に謁見してみて、その懐の深さに感激した。


僕はルージア神の使徒を倒そうとしている、地球神の使徒だ。

この星の敵か味方かで言えば、間違いなく敵である。

全てを正直に話す訳にはいかないが、一部だけなら話していいと思った。



「申し訳ございません。恐れながら今、この場では…」

僕は申し訳なさそうな顔をしながら周りを見た。


「…なっ!言えない事をしているのか。やましい事があるからだろ。やましい事がなければ言えるはずだっこの無礼者めっ」


ランズ侯爵が、野次を飛ばして来る。

ランズ侯爵の派閥に所属している貴族もそれに応える。



国王様は僕が周りを見た事で察してくれた。

「皆、静粛に。ではコーキよ。ワシと宰相、ダムルスの3人だけになら、その使命とは何か教えてくれるかの?」


国王様は野次を飛ばしていた貴族達を静め、僕に誰なら聞いて良いのか確認してきた。


「恐れながら、国王様と宰相様だけにしていただけないでしょうか?」


ダムルスは目を瞑って聞いていた。

神殿で水晶を割り、ドラゴンを倒した僕には何かがあると察していたみたいだ。

僕は理解のある父を持って幸せ者だ。



「分かった。では隣に応接室があるのじゃが、そこで聞かせてもらおうぞ。本日の謁見は終了とする。これよりこの謁見の間、及び応接室の立ち入りを禁じる」



まさか応接室だけでなく、謁見の間の立ち入りを禁止してくれるとは。

これで清掃員やら他の貴族に聞き耳を立てられることは無いだろう。



こうして、謁見は終了した。


――――――――――――――――――――


☆謁見の間の隣【応接室】


「では聞かせてもらえぬか?」


僕達はテーブルを挟んだソファに座っている。


僕の対面に国王カイセル様。カイセル様の隣に宰相アレグ様が座っている。


「はい。率直に申し上げます。私は神の使徒です。詳しい内容はお伝えできませんが、神の使徒としてやらなければならないことがあります」


カイセル様とアレグ様は硬直していた。


まぁ…8歳の子供が神の使徒なんて言葉を発すればそうなるよね。


驚いて声を出さない国王様達を見ながら、僕は続けた。


「僕が神の使徒である証拠になるかは分かりませんが、強いて言うならドラゴンを一撃で倒す剣術・加護が無くても上級魔法を難なく使える魔力保有量…と言ったところでしょうか」



国王様と宰相様は、確かにただ努力のみで強くなったと言われるよりは、神の使徒として加護とは違う何かしらを授かったと言われた方が納得はできる。と考えが一致していた。



「お主が本当に神の使徒様だとして、加護は2つと聞いたんじゃが…その加護は数の違いはあれど、誰もが平等に与えられるものじゃ。…お主は…他の人とは違う加護も授かっているのかの?」


僕は悩んだ。できれば祝福の事は答えたく無い。

だが、「その事には答えられない」という時点で、おそらく加護とは別の何かを授かっている事は察せられる。

なら素直に言うべきか…


―――いや、【祝福】という言葉は避け、他に何かを授かっている事は言っておこう。



「はい。神眼という、神様しか見る事ができないので証明する事はできませんが、私は5人の神様からそれぞれ授かっております」



「なるほどの…。5人…か。ルージア神は全部で7人だと言い伝えられておるが…お主は普段から神とは対話しとるのかの?」


「一度ですが、話ししました。加護を授かった日以来神殿には行っていないので、授かった日が最後になります。使命の為、旅に出る前に神殿には寄るつもりです」


「コーキ君。1つ、聞かせて欲しい。神の使徒としての使命が終わったら、ゴースリア王国に戻って来る気はあるかね?」


宰相アレグ様が額に汗をかきながら聞いてきた。


「はい。私の生まれはゴースリア王国サランド領です。全てが終われば、帰ってくるつもりです」


「では約束してくれないかの。必ず戻ってくると。もちろん口約束では無いぞ。ワシの娘、第二王女シャルミアと正式に婚約を結んでくれ」


…僕に婚約者ができた。

しかも王女様。

まだお会いした事は無いけど…


「…よろしいのでしょうか?私、侯爵家四男なので成人すれば平民になるのですが…」


「もちろん、爵位は与えるぞ。元々お主は王都に危険を及ぼす可能性のあったブルードラゴンを倒したのじゃ。権利は十分ある」


国王様は、そんなのは問題では無い、というような感じでハッキリと言ってきた。お前にはもう、十分権利があるんだ。お前はそれを受け取っていないだけだ。


そう言いたそうな表情をした。


「実は1つ、お主に依頼したい事があるのじゃが」


国王様は深刻な問題を抱え、悩んでいるような顔をしていた。


「私に出来る事なら」


僕は、出来る事なら協力したいと思っている。

なんせ、王女様と婚約するのだから。



「――実はお主に、黒神狼ブラック・フェンリルの討伐を依頼したい」


国王様の口からとんでもない言葉が出てきたのであった。

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