第17話 懐かしい匂い


執事さんに案内され、僕は食堂へ向かった。


円型の大きな机の中心に、シャンデリアのような蝋燭台があり、9本の蝋燭に火が燈っていた。


おっしゃれぇ〜!!

魔道具により部屋は明るいが雰囲気は最高だ。


僕と師匠以外はもう全員椅子に座っていた。

僕は挨拶し、ガルドス様からご家族へ紹介していただいた。


席順はこうだ。

時計回りでガルドス様を始めとし、


人当たりの良さそうな第一夫人、デリア様。

第一夫人の息子であり、ファルド伯爵家嫡男・

ドルデ様

第一夫人の息子の次男・ルドア様

第二夫人の息子の三男・バードス様

第二夫人の娘であり、ファルド伯爵家第1令嬢・

ソルージュ嬢

師匠

師匠とそっくりな第二夫人・ミール様


…といった感じだ。

伯爵家にお世話になる間、僕の席はここになったらしい。


料理が配膳され、僕達は楽しい食事を楽しんだ。

魚料理を食べ終えた頃、メイドさんが次に持ってきてくれた料理に僕は度肝を抜かれた。


僕達の前に並べられ蓋を開けると、スパイシーな、そして懐かしい匂いが僕の鼻を貫いた。


「えっ…!!」


僕は驚き、思わず声を出してしまった。

まさか、この世界でカレーライスが食べられるとは思ってもいなかった。


精米された白米、具沢山のカレー。

この世界に、カレーのスパイスが存在していたとは!

ブラックペッパーや塩といった調味料は存在しているし、庶民でも商人から気軽に買えるものである。

だが、ガラムマサラ・カルダモン・クミンといったスパイスは王都でも見なかった。もちろん、サランド領にもない。


「驚いただろう。初めて見るのではないか?これはカレーと言ってな。海外の料理だ。カレーに必要なスパイスもコーキ君をもてなす為に知り合いから取り寄せておいたのだ」


ガルドス様はドヤ顔で語ってくれた。

そうか…海外に行けばカレーが食べられるのか。

もしかしたら他にも前世で食べていた料理があるかもしれない。

地球神の使徒として、海外に行くつもりではあったが、旅に行くのではなく戦いに行く。正直乗り気じゃなかった。

でもカレーに出会った。

僕の中で楽しみが1つ増えたのである。


「とても美味しいです。初めて食べました。ガルドス様はこのカレーのレシピ、どうやって手に入れたのでしょうか?レシピは言わなくて大丈夫です。入手先を教えていただけると」


レシピは知ってる。日本のカレーより本格的だが、スパイスさえあれば日本人好みの味にできる。

だがこの世界でのレシピの入手先にはとても興味深かった。


「私が準男爵になるキッカケとなった戦争の相手国だ。今では同盟を結び、船で自由に行き来できる。レシピは現地のお店でカレーを食べ、頼み込んで教えてもらった。詳しくは知らないが、ご先祖様から言い伝えられたレシピらしい」



いつか絶対行く。

僕はそう心に決め、カレーライスをおかわりした。


―――もう何も食べられない。大満足だ。

サラダ・スープ・パン・魚を食べた後にカレーを三杯食べた。

僕のお腹はいっぱいだ。


あとはお風呂に入って寝るだけだ。


…そう思っていたら、メイドさんが

肉料理を僕の前に置いた…


お腹いっぱいだよ…


8歳の僕の胃袋は限界だ。

だが残すわけにはいかない。


……


…僕は限界を超え、肉料理とドルチェを無理やり食べた。


……やばい…吐きそう…


僕は重い足取りで、暫く泊まらせてもらう部屋へ入っていった。

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