第15話 エークドル領


サランド領の東門から出て馬車で2日の距離にエークドル領がある。

僕は今、魔法を教わりにエークドル領へ向かう為、馬車に乗っている。

あと1時間くらいでエークドル領に着く。



父・ダルムスがファルド伯爵に話をつけてくれた。

父の話では、ファルド伯爵は元平民でAランクの冒険者だったらしい。

ゴースリア王国の隣、同盟国のダルパニア王国が、かつて他大陸の国と戦争になったそうだ。

冒険者ギルドの方に依頼が来て、ファルド伯爵はそれを受けたらしい。

ダルパニア王国の兵士・冒険者よりも大活躍し、準男爵になった。

当時は他の貴族のあたりは強かったらしいが、ファルド伯爵は政治力も抜群。小さかった領地はどんどん活気溢れ、今では上位貴族の仲間入り。領地も大きくなった。

強くて優秀な領主。各領地から人口流出しエークドル領に集まった。

サランド領からも沢山、領民がエークドル領に行ったらしい。



僕はダムルスから聞いた話を思い出しながら、馬車に揺られていた。

そうしている合間にエークドル領の門に着いたのである。


流石人気の領地。

門に並んでいる商人、冒険者達でいっぱいだ。

門には一般用、貴族用の2種類の入口がある。


僕は貴族用の門から、レイジェント家の家紋が刻まれた札を見せて身分を証明し、無事領都内へ入った。


――――――――――――――――――――


☆ファルド伯爵邸


ファルド伯爵邸に着いた。

道中、街中は活気溢れ領民達は皆笑顔だった。


途中冒険者ギルドがあったが、ギルドに寄る前にまずはファルド伯爵とこれから師匠となる第2令嬢に挨拶する為、立ち寄らなかった。


ギルドの訓練場らしき場所で物凄い爆発音が鳴り響いていて気になった。少し覗いて行きたかった。本当凄い音だったよ?あれ絶対強力な魔法を使ってた。




僕は馬車から降り、ファルド伯爵邸の守護兵に話しかけた。


「本日ファルド伯爵にアポを取らせていただいた、サランド領のコーキ・フォン・レイジェントと申します」


守護兵は貴族が自ら降りて話しかけてきたこと、他領から来るのに護衛も雇わず来た事に驚いていた。


「…っは、はいっ。お待ちしておりました。ご案内致します」


守護兵のうちの1人が門を開け、先頭を歩き屋敷のドアの前まで案内してくれた。

門から一直線に進んだ先に屋敷はあった。


ドアの前にはシュッとした顔立ちの五十代くらいの執事が立っていた。


「サランド領より、コーキ・フォン・レイジェント様がご到着されました」


「お待ちしておりました。レイジェント様。屋敷内は私がご案内させて頂きます」


そう言うと執事はドアを開け、右腕を中の方へ手を向け僕に屋敷内に入るよう促した。

案内してくれた守護兵は一礼し、門へ戻っていった。


―――――――――――――――――――


応接室へ通された僕はファルド伯爵に挨拶し、対面のソファに座っている。

応接室にはファルド伯爵、紅茶を持ってきてくれたメイド、僕の3人だ。


「もうすぐナチールがくる。すぐ戻ると言っていたのだが…申し訳ない」


「いえいえ、これからお世話になる身なので。ところでガルドス様は元Aランクの冒険者だったと伺いました。ガルドス様も魔法は得意なのでしょうか?」


ガルドス様の身体は物凄く引き締まっていた。今でも鍛錬をサボらず続けているのだろう。まだ雰囲気は知らなければAランクだとは思わないだろう。


「私は魔法は簡単な身体強化しか使えないよ。私は槍を使っていた。槍術なら今でも負けない自信がある」

ガルドス様は笑顔で答えてくれた。


「それよりも本当なのかい?コーキ君。ブルードラゴンを1人で倒しAランクになったとか」

ガルドス様は真っ直ぐな眼差しで僕を見た。


僕は返事をし、ギルドカードを机の上に置いた。


「…ふむ。是非一度手合わせをしてみたいな。身体強化を使わなければ平気か?……いや、コーキ君はブルードラゴンを1人で倒してるんだ。身体強化を使わなければ勝ち目はないだろう。それにしても…見た目は幼く威圧感のカケラもない少年だが、この寒気は何だ?恐怖…か?この俺が?…フフッ。本当、末恐ろしいなこの子は。現時点でこれなんだ。もし魔法が使えるようになり、もっと成長したらどうなる?。俺でも届かなかったSランク。この子はいつか必ずSランクになる。…なら、ナチールとコーキ君の話が終わった後、模擬戦を申し込んでみよう」


ガルドス様が小声でブツブツ独り言を言っていた。

僕はその間、メイドさんが淹れてくれた紅茶を飲んでいた。


――コンコン――

「失礼致します。ナチールお嬢様がお戻りになられました」

扉の向こうから、ここまで案内してくれた執事さんの声がした。


ガチャ…


扉が開き、立派な騎士の様な格好をした青髪ロングの女性が入ってきた。美女でスタイルもいいが、目つきは鋭かった。


「遅くなりました。初めして。ナチール・フォン・ファルドよ。君がコーキ君ね。よろしく」


そう言ってナチールさんは右手を出し、僕に握手を求めた。


「初めまして。これからお世話になります。コーキ・フォン・レイジェントと申します。よろしくお願いします」


僕は挨拶し、右手を出し握手した。


その瞬間――――


ナチールさんの右手が輝き、僕の魔力を大量に吸い込んだのである。

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