第14話 定番のお部屋


無事、サランド領の西門に着いた。

集合地だった噴水の前で僕達は護衛依頼達成のサインを受け取った。


道中襲ってきた盗賊達は衛兵に渡した。

牢に入れられ、人体実験やら労働奴隷として駆り出されるだろう。



僕とソルティナ達、ブルド達はサランド領の冒険者ギルドに向かった。


王都出発時はあんなに騒いでたブルド達は、今はもう元気はない。

僕とは目も合わせないし、近づいてすら来ない。

鬱陶しくないからいいんだけどね。



―――――――――――――――――――――

☆サランド領【冒険者ギルド】


冒険者ギルドに到着した。

やはりサランド領のギルドは騒がしいな。

騒ぎ声が外に響いている。


僕達は中に入った。

報酬受付の所にティーゼさんが居た。


「無事護衛依頼達成したわ」

ソルティナさんはサインを貰った依頼票をティーゼさんに渡した。


「お疲れ様。盗賊に襲われたのね。大丈夫だった?」

ティーゼさんは依頼票の裏に書いてある特記事項の盗 賊という文字を見て、心配そうに尋ねてきた。


「大丈夫だったわ。坊やのおかげよ。盗賊は3人だけ衛兵に引き渡してきたわ」

そう言ってソルティナは、僕の背中を押し受付台の近くに立たせた。


「コーキ君が大活躍したのね!それでブルド達が大人しいのね。あのブルドがここまで大人しくなるんだからコーキ君は本当に強いのね」

ティーゼは手を合わせ、関心したような表情で僕を見つめてきた。


「じゃあ手続きを済ませるわね。みんなギルドカード出してくれる?」

ティーゼさんは受付の棚から重要そうな紙を出しながら、僕達にギルドカード提示を求めた。


スッ――


ソルティナ・ジャール・ベスタがギルドカード(Cランク)を出す。


スッ――


ブルド達3人(Dランク)・僕がギルドカード(Aランク)を出す。


「………え?………」

ティーゼは固まった


「えぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!!!!」

数秒遅れでティーゼが叫んだ。


あんなに賑やかだったギルド内がティーゼの叫び声で静かになった。


「「「どうしたのっ!?」」」

隣にいた受付のお姉さんと、奥で休憩していたお姉さん2人がこちらに来た。


「あら、コーキ君じゃない。無事護衛依頼達成できたのね。よかった。心配してたのよ」

奥から来たお姉さんが僕を見つけて話しかけてきた。

冒険者登録と護衛依頼でお世話になったお姉さんだった。


「あれ、ミラ。コーキ君と面識あったの?」

ティーゼさんがミラと呼ばれたお姉さんに尋ねた。


「コーキ君にこの護衛依頼頼んだのは私だし、冒険者登録したのも私よ」

なぜかミラは誇らしそうに言っていた。


「ティーゼは何で叫んだのよ?」

ミラは不思議そうな顔をしてティーゼに尋ねたが、ティーゼが僕の手に持っているギルドカードを指差したら固まった。


ソルティナ達も知らなかったから、とても驚いていた。


「コ…コーキ君…とりあえず…奥に…」

ティーゼさんは力無くそう言い、僕をギルドマスターの所へ連れてった。


なんか僕。毎回連れてかれてるな…


――――――――――――――――


☆冒険者ギルド【応接室】


ギルドマスターのギルザークさんは唖然としていた。


僕は王都での出来事を全部ギルザークさんに説明した。これで5回目だ。


同じ説明を何度しても上の空の様に、もう一回説明してくれ…と言うだけである。

だから何度も言ってるじゃんっ!!


―――――


―――



13回目の説明で僕が1人でドラゴンを倒した事を理解した。

いちいち依頼達成報告の度にこんな時間取られては堪らない。

だがドラゴンを倒した事を理解したなら、暫く何があっても大丈夫だろう。


僕は護衛依頼報酬を受け取り、何とか解放された。



――――――――――――――――――――


ギルドホールに戻ると溜まり場でブルド達が酒を飲んでいた。


奥の部屋から出てくる僕に気付くと、ブルド達が近づいてきた。

そして大勢の前で僕に頭を下げて謝った。

あのプライドの高いブルド達が、人目を気にせず、子どもである僕に頭を下げたのだ。

相当な進歩であろう。


僕達は仲直りして、一緒に飲み食いした。

王都や道中ではできなかった時間を取り戻すかの様に。もちろん僕はジュースだよ。飲酒ダメ!!


ブルド達は今回で己の力不足を実感したそうだ。


「今までは運が良かっただけ。俺らにはDランクで丁度いい」


…そう言っていた。

僕はブルド達がその内、強い冒険者になるんじゃないか?と思い、応援することにした。



――――――――――――――――――


☆サランド領【自宅】


僕は自宅に戻りレイアとダムルスにAランクになった事を報告した。


レイアとダムルスは涙目になりながら喜んでくれた。


僕は魔法の使い方を教わりたいと相談した。

そしたら何とサランド領のお隣、エークドル領の伯爵家第2令嬢が高レベルの魔法を使えるのだとか。王都学園の魔法科を首席で卒業する程だ。

個人教師をしてもらえるか、ダムルスが頼んでくれるそうだ。


よかった。


「コーくん話は終わった?じゃあもう寝る時間だよ♪」

そう言って僕の腕を掴むと、僕の部屋まで走った。


僕はベットに寝かされ、レイア姉様も潜り込んできた。


唯一の弟だから僕の事を可愛がってくれているのだろう。



まだ決まってすらいないエークドル領が楽しみで、眠気が吹き飛んだ僕はレイア姉様の寝顔眺めていた。

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