第12話 癒し…?ティオーラちゃん

ギルドで話を終え、再びベスカさんのお店へ戻ってきた。


「ただいま戻りました」

そう言いながら入り口を開けると、ベスカさん・ソルティナさんの他に幼い女の子が居た。


「来たねぇ。ティオーラ。挨拶しなさい。この子がさっき話したコーちゃんさねぇ」

ベスカさんの横に座っていた幼い少女は、立ち上がりスカートの裾を持ち丁寧に挨拶をした。


「ティオーラ・フォン・デューゼルです。よろしくお願いします」

ティオーラ・フォン・デューゼル。6歳。デューゼル公爵家の長女だ。ベスカさんが言っていた孫の1人だ。

ティオーラは僕より頭一つ小さい。幼いがマスコットキャラクターの様に可愛い。美少女というのに相応しい。髪の毛の長さは胸の位置までストレートヘアーで普段から綺麗に手入れしているのがよく分かる。

赤紫色の髪はとても美しかった。


「初めてまして。コーキです」

僕は挨拶をして、魔導書の続きに戻った。



―――――しばらく時間が経った―――――


全属性の初級魔導書は読み取り終え、追加で買った中級魔導書を読み取っていると、外はもう暗くなっていた。


ソルティナさんは先に帰ったが、僕がギルドに行ってる間、ベスカさんの家に泊まれる様交渉してくれたらしい。

おかげで僕は時間を気にせず、魔導書を読み取ることができている。



中級魔導書90冊近く読み取り終えた頃、ティオーラちゃんが夕飯の準備が出来たと、呼びに来てくれた。

「コーキお兄ちゃん!ご飯だよ!」ガシッ

ティオーラちゃんは無邪気な声で僕に話しかけながら、僕の背中に抱きついてきた。

僕が魔導書を読み取っている間に、僕の呼び名はコーキお兄ちゃんになったらしい。


僕は離れないティオーラちゃんを背負ったまま、お店の奥に行った。


ティオーラちゃんは僕の隣の席に座り、対面にはベスカさんが居る。

僕はベスカさん達と会話をしながら食事を楽しんだ。

途中ギルドの話になり、僕はAランクに昇格した事を話した。


「「……」」

ベスカさんもティオーラちゃんもフォークを持ったまま無言で動かなくなってしまった。


まぁそうだよね。

Aランク昇格ってだけで驚きなのに宰相様まで居たんだから。しかも倒したのはブルードラゴンだ。



食事を終えてから、僕は魔導書の読み取りを再開したが、その間ティオーラちゃんは僕の背中から離れなかった。

ティオーラちゃんはデューゼル邸に戻るはずだったが、ベスカさんの所に泊まると言って聞かず、一緒に居ることになったのだ。


中級魔導書を読み取り終え、お風呂に入る。

ティオーラちゃんは相変わらず離れなかったが、ベスカさんにティオーラちゃんを剥がすよう頼み、何とか解放された。


流石賢者様のお店。

普段生活する家では無い筈なのに立派なお風呂がそこにはあった。


疲れを癒し、ゆっくり浸かって目を閉じていた。

あ〜やばい、寝そう…


心地良くお風呂に浸かっていると、バシャバシャと何かがお風呂に入ってくる音が聞こえた。


……はい。そうです。

ティオーラちゃんでした。


目を開けると、もちろんタオルなんて巻いていないティオーラちゃんが僕の隣に居た。


「…」

僕は無言で現実逃避をしていた。



お風呂から上がると、ベスカさんが申し訳なさそうにしていた。

僕がAランクに昇格したのを聞き、上級・超級の魔導書を出してくれていたのだ。

ティオーラちゃんはその隙に僕が入っているお風呂に侵入したと…


頼んでもいないのに僕の為に魔導書を準備してくれていたんだ。ベスカさんを責めるわけにはいかない。


早速魔導書を読み取りたい所だが、ベスカさんの話だと、上級・超級は読み取り量が桁違いに違うそうだ。

一冊にかなり時間がかかる。

今日はもう遅いから、明日からになった。

泊まり込みの許可も貰えた。


ティオーラちゃんはベスカさんの部屋で先に寝ている。

僕も一室用意してもらった部屋で寝よう。


おやすみ。


―――――――


―――――


―――


まぁ…予想通りですよ。

起きたら僕の布団にいました。

ティオーラちゃん。

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