第11話 【緊急】お悩み相談…誰か聞いて
僕はベスカさんのお店を出て、王都ギルドに来ていた。
昨日の素材査定が終わり、報酬を受け取るためだ。
これまで同様、受付に並んでいたら大慌てで受付のお姉さんが僕を呼んだ。
そして…昨日通された応接室より更に立派な部屋へと通され、白髭のお爺さんとエルヴァさんが座っていたのだった。
「コーキ君だね。待っていたよ。とりあえず座って頂けるかな?」
白髭のお爺さんから促され、僕は1人用ソファに座った。
「初めまして。私の名はアレグ。ゴースリア王国の宰相である。君の事は横に居るエルヴァから聞いたよ。ブルードラゴンを1人で討伐したとか。もし差し支え無ければ何の加護を授かったのか聞いてもよろしいか?」
アレグと名乗った白髭のお爺さんは宰相様だった。
何でこんな偉い人がここに…
「初めまして。コーキ・フォン・レイジェントと申します。父、ダルムス・フォン・レイジェント・サランドの四男です。いずれ平民になるため、冒険者登録の際は家名は記入致しませんでした」
僕は家名を名乗り、自己紹介した。
宰相様に対して本来の家名を名乗らないのは失礼にあたるだろう。それに、万が一家名がバレた時に隠蔽したと思われては困る。
僕が家名を名乗ったら、宰相様とエルヴァさんはとても驚いていた。
まぁそうだよね。四男とはいえ、まだ貴族であるこの歳で冒険者やってるなんて思わないよね。
しかも貴族の息子がブルードラゴン倒してるんだから。
驚いた顔をしている宰相様とエルヴァさんを見ながら、僕は宰相様の問いに答えた。
「加護は剣神の加護と技能の加護を授かりました」
祝福の事はもちろん伏せる。
嘸かし驚いただろう。剣神の加護を持っているとはいえ、加護は2つなのだから。
6割の人は加護1つだが、Cランク超えの冒険者で加護2つ以上授かってる人は沢山いる。
宰相様も僕が沢山加護を授かったからこそ、ブルードラゴンが倒せたと予想していたのではないか?
「そうか…。剣神の加護と技能神の加護の2つか…」
なんか…宰相様が遠い目をしている。
理解が追いつかないのかな?
ん?地球神の神眼で僕が授かった加護を見せてもらったけど、あの時は剣神の加護と技能の加護って書いてあったよな?
でも今宰相様は技・能・神・の加護と言っていた。
そういえば…あの時は水晶が割れた事に気が向いていたが、神官も技能神と言っていた。
と言う事はルージア神の中に技能神がいるという事か?
やはりルージア神も地球神達みたいに複数いるのか。
「「「………」」」
数分…沈黙が続いた。
侯爵家の息子で、加護は2つ。その事実を飲み込むのに時間が必要だったのだろう。
「そ、そうだ。コーキ様。こちらが今回の買い取らせて頂いた素材の報酬でございます」
そう言ってエルヴァさんは硬貨の入った袋を3つ机の上に置いた。
「えっ?こんなに?あと様は付けなくていいです」
ドラゴンの素材。やっぱり高いんだな〜。
「いえっ………分かりました。ではこれまで同様コーキ君と呼ばせて頂きます。今回報酬が多いのはドラゴンの素材が貴重…。と言うだけでなく、状態がとても良いからです。普通戦闘で傷だらけになり、状態が悪いものが殆どです。それだけドラゴンの討伐難易度は高いって事ですね。」
エルヴァさんは何故報酬が多いのか説明してくれた。
確かに僕は一撃で切断している。状態がいいのは確かだ。
だがそれでも多いと思う。
硬貨が入った3つの袋の内1つは小さくあまり入ってなさそうな袋だ。おそらく白金貨が入っているのだろう。
だか残り2つ。これは袋にパンパンに詰め込まれていた。
もしかして中身全部銅貨か?そう疑いたくなるほどだ
。
「では頂戴いたします。中身の確認をしてもよろしいでしょうか?」
僕はパンパンに入った袋を1つ持ち、尋ねた。
「はい。どうぞ。先に金額をお伝えしておきます。今手に持っている袋には金貨500枚。机に置いてある同じ袋にも金貨500枚。小さい袋には白金貨10枚が入っています」
……はい?
…………今なんと?
今度は僕が言葉を失った。
いくら状態のいいドラゴンの素材とはいえ、流石に貰いすぎだ。貧乏貴族の領地なら余裕を持って立て直せるレベルの資金を手に入れた事になる。
もちろん。もう一生働かなくても遊んで暮らせる。そんな大金だ。
開いた口が塞がらず、呆然としている僕に宰相様は付け加えた。
「実は今回の事は我が国の国王様の耳にも届いている。エルヴァからは君をSランクに昇格させてはどうかと提案を受けた。我々としても君はSランクになる実力はあるのだろうとは思っている。だが、君はまだ冒険者となって日が浅い。我が国初のSランク冒険者誕生は喜ばしい事だが、だからこそ慎重に吟味する必要があるのだ。君のSランク昇格は現在検討中であり、もう少し時間が欲しい。すまない」
宰相様は頭を下げた。
頭を上げ、僕の方を見た。
「今回の報酬、半分は国王様の私財から出ている。それだけ君に期待をしていると言う事だ」
…なんだって…
半分?そんなに国王様は僕の事を期待してくれているのか。
Sランクは今世界で8人だと聞いた。
そう簡単に昇格させる事は出来ないのだろう。
慎重になるのはよく分かる。
だが国王が私財でこの額を支払うメリットはなんだ?
期待しているからと言って渡しすぎだろ…。
宰相と国王の思惑には気付かないコーキであった。
「大切に使わせていただきます」
そう言って僕は硬貨の入った袋を魔法バックに仕舞った。
「ではコーキ君にこれを渡しておくね」
エルヴァさんはポケットから回りが金色の縁でできたギルドカードを渡してきた。
右上には金が嵌めてある。
「Sランクにはまだ出来ないけど、昇格させないとは言っていない。これからはAランク冒険者として、ゴースリア王国の発展に貢献してくれ」
宰相様はそう言うと、僕に握手を求めた。
僕は右手で握手、左手でAランクのギルドカードを握りしめてお礼を言った。
立ち上がり
「それでは失礼します」
頭を下げ、僕は豪華な部屋を後にした。
――――――――――――――――
「アレグ様、よろしかったのですか?コーキ君に王家専属冒険者の提案するはずでは?」
エルヴァは宰相アレグに問いかけた。
「今は良いのだ。コーキ君がサランド領に戻ってから指名依頼をするつもりだ。それに今日会って分かった。彼は専属契約する気は無いと思うぞ」
アレグは笑いながらエルヴァの方を見て答えた。
(早くしないとSランク昇格を検討中という言い訳は使えなくなるな。なんとしても繫ぎ止める方法を考えなくては…)
国王とアレグの悩みは当分晴れる事はなさそうだ…
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