第10話 悩むのじゃ…
☆昨夜、王城。とある一室
「国王。ギルド総括エルヴァから緊急文書が届いております。」
白い髭を伸ばした宰相アレグは国王宛の文書を届けていた。
「なんじゃこんな時間に。珍しいな。エルヴァが寄越すくらいじゃ。相当緊急なんじゃろう」
国王は宰相アレグから受け取った文書を読んだ。
「…」
言葉を失った。
「信じられん。そんな事があるのか?もしこれが事実なら…アレグよ、これを読め。お主の意見を聞かせるのじゃ」
国王は文書を渡し、宰相アレグが読み進めていく内に驚愕していく様を見ていた。
ワシも読んでる時、あんな感じじゃったろうな。
「初日でCランク、4日目でオーク20体、オークジェネラル1体。それだけでも驚きなのに…ブルードラゴンまで討伐するなんて。これが事実なら、エルヴァの言う通りSランクに昇格する資格はあるかと」
文書を持つアレグは、手が震えていた。
「じゃが…Sランクになった後他国に行く可能性がある。何としても我が国に繋ぎ止めたい。爵位を与えるにしても、我が国初のSランク冒険者じゃ。最低でも男爵。子爵を与えてもいいくらいじゃ。」
国王は腕を組みながら悩んでいた。
「はい。しかしいきなり子爵を与えると反発する貴族は多いかと思われます」
アレグは他に何かいい案はないだろうか?そう思いながら国王の意見に答えていた。
「じゃが…我が国初のSランク冒険者に準男爵は与えられん。ワシとしてはそこは譲りたくない。…ワシの娘を婚約者にして繫ぎ止めるにしても、王家から嫁に出すなら最低でも伯爵にせんとな」
国王は右手を額にあて、何かいい案は無いかと悩んでいた。
「王女様を婚約者にするおつもりでしたら、王家専属契約の冒険者にするのはいかがでしょうか。王家専属契約は冒険者本人に選択権があるので断られる可能性もありますが。断られた場合は王家から護衛依頼を指名しましょう。そこでまずは王女様と顔合わせを。Sランク昇格は現在検討中の為保留とし、Aランクへの昇格を認めましょう」
冒険者ランクにおいて、Sランクは実績の元、ギルド総括・国王・宰相から許可されれば昇格できる。ただし、Sランク昇格基準は世界共通のため、ほぼその基準を満たす冒険者はいない。しかしコーキはその基準はクリアしているため、後は国王達次第で昇格できるのだ。
Aランク.Bランクの昇格にももちろん基準がある。
数多の高ランクモンスター討伐実績・数多の護衛戦闘実績等あるが、コーキはまだこの基準は満たしていない。
数多の高ランクモンスターに関してはブルードラゴンを1人で討伐している時点で十分である。
だが護衛戦闘実績は残していない。今回サランド領から王都まで護衛依頼の片道はクリアしているが、盗賊・モンスターには一度も襲われず、戦闘実績が無い。
しかも、今回が初の護衛依頼である。
当然AランクはおろかBランクの基準には達していないのだ。
だが、宰相アレグはその基準関係なくコーキをAランクに昇格させ、Sランク昇格を前向きに検討している姿勢をアピールするのが狙いだ。
Sランク昇格を匂わせれば、昇格前に易々と他国には行かないだろうとアレグは考えていた。
国王もそれ察し許可を出した。
王家専属契約はCランクからならできる。
王家からの打診があればの話だが。
「では今回の報酬、ワシの私財から上乗せさせるのじゃ。本当は引見したいところじゃが…護衛依頼中で滞在日数は少ない。働いている民に申し訳ない。別の機会に設けようぞ」
こうして、コーキのAランク昇格が決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます