第2話 冒険者としての初依頼
「お疲れ様でした。ではいくつ加護を授かったのか見るためにこちらに移動お願いします」
神官は部屋の隅にある水晶が置いてある机を指しながら言った。
「こちらに両手をかざしてください。授かった加護の種類により石が光ります。」
水晶のまわりにそれぞれ色の違う7つの石が置いてある。
両手を水晶にかざすと水晶とともに2つの石が光った。赤と緑だ。
「コーキ様は剣神の加護と・技能神の加護ですね。水晶が光ったので、相当な魔力の持ち主なはずですが…何故魔法神の加護を授からなかっ…」
ピキッ……パーン!!!
神官が授かった加護の話をしていると、突然水晶が割れた。
「なっ…ありえない…。水晶が割れるなんて」
神官と家族達が驚いた顔をしている。
「そんなにありえないことなんですか?」
俺はよく分からないので聞いてみた。
「今まで水晶を割る程の魔力を持ってる人なんで聞いたことないわ」
ミルシアが驚きと嬉しさで困惑しながら言った。
「お前ならAかBランクの冒険者になれそうだな」
「コーくんすごーい♪」
ダルムスとレイアはとても喜んでいた。
「…」
ジルは無言で俺を見ていたが、俺がジルを見ると笑顔で返してくれた。
「それでは父様。おれ…」
今まで僕と言っていたのに、急に俺と言っていいのか…?いや…今はまだ僕にしておこう…
「僕はこれから冒険者登録して参ります」
「分かった。今日はお祝いの日だ。夕飯までには帰ってこいよ」
そう言って、家族は僕を送り出してくれた。
神殿から冒険者ギルドまでは徒歩30分だ。無事登録できたら簡単な依頼を受けてみよう。
―――――――――――――――――――――
☆サランド領【冒険者ギルド】
冒険者ギルドの入り口に着いた。
冒険者達の騒ぎ声が外にまで響いてる。
中に入ると結構広かった。正面に受付、左側には依頼掲示板、右側は冒険者の溜まり場になっていた。
酒を飲み、騒いでいる冒険者達が受付へと向かっていく僕の方を見てニヤニヤしていた。
「すみません。冒険者登録をしたいのですが」
僕は受付のお姉さんに声をかけた。
「はい。登録ですね。ではこちらにお名前と年齢をご記入ください」
僕はコーキ、8歳と記入した。四男であり、家を継げない僕は家名を登録する必要ないと思ったからだ。
「コーキくんですね。ではギルドカード発行するまでの間に軽く説明しますね。」
そう言って受付のお姉さんはギルドの依頼の受け方、報酬の受け取り方などを教えてくれた。
冒険者ランクはS〜Fまである。基本C〜Fランクは依頼掲示板から受けたい依頼を探し、貼ってある紙を持って受付に行く。そうすると依頼が受けられる。S〜Bランクは依頼掲示板で探すか、直接受付に行き冒険者が受けたい依頼を受けるか、ギルド側から依頼を指定し頼まれるかどちらかだ。無事依頼を達成すれば右手側2つの受付口に行って報酬を貰う。薬草などの採取依頼と討伐依頼があるが、討伐依頼が受けられるのはEランクになってからだ。
「お待たせしました。これがギルドカードです」
受付のお姉さんから渡されたカードには名前・年齢とランク、右上の方に丸い鉄がはめられていた。ランクによって鉄・銅・金・ダイヤとはめられているものが違う。
さて、無事冒険者登録も終わったことだし、簡単な依頼でも受けてこよう。
依頼掲示板に目をやると薬草採取の依頼があった。本当はゴブリンとか狩ってみたいけどFランクだから無理だ。
僕は受付のお姉さんに依頼票を渡し、受付を済ませ薬草採取に向かった。
―――――――――――――――――――――
☆サランド領【森】
サランド領を出てすぐ近くに森がある。Fランクは森の奥には行かないように言われている。だが、薬草が多く生えてるのは森をある程度進んだところにあるため、奥まで進むFランク冒険者は多い。ルールを守らない。冒険者らしいよね。まったく…。…まぁ僕もルールを破るから人の事言えないんだけどね。
歩き始めてから2時間。かなり奥の方まで来た。道中、薬草を見つけては採取し、かなり集まった方だろう。あと30分程進んで何もなければ帰ろう。
そう思っていたら木々が倒れ、激しい戦闘音が聞こえた。
草木を掻き分け音のする方に行くと、雷を纏った雷鳥と、冒険者3人が戦っていた。
戦っていたというより、3人の冒険者はボロボロで、雷鳥に弄ばれてる様にしか見えない。
冒険者の内1人が僕に気づいた。
「坊主、ここは危ない。さっさと逃げろ」
剣を構えた二十代くらいの男性冒険者が僕の方を見て言った。その瞬間、雷鳥は男性冒険者に向かって雷を放った。男性冒険者は辛うじて息はしているだろうが、黒焦げになり気を失った。
「うわぁぁぁぁぁ」
僕は怖くなった。思わず叫んでしまった。だってそうだろ?平和な日本で暮らし、命がけの争いなんてした事がなかったんだから。前世の記憶が戻らなければ、これが当たり前だと割り切れたかもしれない。でも、僕は記憶が戻ってしまった。もう、今の僕の心は恐怖心しかない。震えて立てない。座り込んでしまった。
雷鳥はそんな僕の方を見て、物凄い勢いで突っ込んできた。
僕は咄嗟に心臓を守る様に腕をクロスして身をかがめて守る動作を取った。
雷鳥は一直線に、僕の腕目掛けて突進した。
僕は目を瞑った。腕に何かが当たった感触がした。
ゆっくり目を開けると、雷鳥はフラフラしながら僕を睨んでいた。
そういえば、地球神が僕は神の使い以外では相手にならない程強くなったって言ってたな。
これも祝福の効果か?祝福の効果がどんなもんかは知らないけれど、雷鳥にも勝てるんじゃないか?
そう思ったら、僕の中にあった恐怖心は何処かに消えた。
立ち上がり、雷鳥の方を見た。
「いくよ」
僕は言葉を発すると同時に雷鳥に向け一直線に走った。何故か雷鳥は動かず、簡単に雷鳥の懐に一発拳を当てる事が出来た。
雷鳥は木々をなぎ倒しながら10メートル近く吹っ飛んだ。
「「「…」」」
僕とその場にいた冒険者達は呆然と倒れた雷鳥の方を見ていた。
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