第292話 ゴルディノ戦⑤
『イクゾ! ヨニツヅケ! ショウリハモクゼンゾ! グオオオ!!』
「「「グルオオオオォオオオオォォ!!」」」
巨大な獣と化した獣人たちが、体のサイズに比べて少し小さくなってしまった武器を握りしめ、超合体ゴルディノに突っ込んでいく。
ゼウ獣王子が足を踏み込み、そして大きく跳躍して超合体ゴーレムの足の部分に拳を食らわせる。
超合体ゴルディノの足の部分に、拳が大きくめり込んでいく。
獣と化す前に比べ、圧倒的に強くなったようだ。
狂気と化した獣人たちが、ゼウ獣王子に続くように攻め続ける。
他の十英獣たちも見た目のとおり、エクストラスキルを使った先ほどより超合体ゴルディノにダメージを与えている。
『アレン殿よ。この力は獣神ガルム様が獣人の独立のために、アルバハル家の獣人に与えた力だ。あの時は獣神ガルム様が神殿に乗り込んできて大変だったな』
メルスが過去の経緯があり、何かすごく大変だったというような話をする。
どうやら、獣人たちはただ単純にギアムート帝国から独立したわけではないようだ。
「与えた? 後天的に手に入れることができる2つ目のエクストラスキルか」
『そういうことだ』
防御をかなぐり捨てて獣のように攻める獣人たちのためにアレンとメルスは補助に徹している。
メルスと会話しているが、メルスと向かい合うアレンは、視線が重ならないようにずらしている。
お互いが圧倒的な知力を活かし、視線の先の戦況を有利にするよう召喚獣を召喚し続けている。
(エクストラスキルは生まれた時に1つ、最大3つまで持つことができると。手に入れる方法は神に頼めばいいのか?)
ノーマルモードはエクストラスキルを1つ持って生まれる。
アレンは前世でプレイしたゲームで、如何にしてスキルを取得していたか、その方法について思い出す。
レベルアップによって入手できる方法、ボスを倒したりお宝などで入手する方法などいくつかあった。
15年間ずっとスキルレベルを成長させながら、新たなスキルも手に入れてきた。それは仲間たちもそうだった。
スキルは元あるスキルを成長させるか、剣術のように一定回数の試行をすると手に入るものだと。
しかし、レベルアップだけが方法ではなく、神から貰う方法があることを知る。
(あとはどうやって入手すべきかって話だな。他に聞き逃したことはないか?)
「む? 何か聞き逃したことがあるような気がするぞ。もしかして、獣王というのは職業ではなく、才能なのか。いや立場や肩書が才能と兼任しているとか」
メルスはあの時、獣王子なのにエクストラスキル「獣王化」を使用したと言っていた。
これは、獣王であればもっと自然に発動できたという言い方のような気がする。
つまり「獣王化」は、獣王子だと難しく、獣王なら容易であるという意味なのだと考える。
『アレン殿はまた1つ、世界の真理に近づいたな。獣王とは、獣王の立場になった者が与えられる才能だ。今のゼウ獣王子は「獣王子」という才能のはずだ』
(ほうほう、才能も変わると。だから勇者は獣王に負けたのか。ヒントはずいぶん前に勇者に貰っていたのか。これは俺の分析不足だったな)
勇者は獣王に5大陸同盟の各国の王族たちの前の試合で負けている。
これは獣王が、単純に対人戦闘に強い才能を持っていたというわけではなかった。
「獣王」という才能が「勇者」という才能を圧倒したということだ。
獣王国では獣神ガルムが今も見守っており、多大な加護を与えているようだ。
それはきっと、獣神ガルムが苦しむ獣人たちを救うために与えた力だ。
創造神エルメアの神殿に乗り込み直談判をした獣神ガルムの覚悟はどれほどのものだったのか。
邪神教の教えが入ってきてブチ切れた獣王の気持ちが分かるような気がする。
今その力が、牙をむき、爪を立て、超合体ゴルディノに振るわれる。
『『『グルルル!!』』』
(星が1つ上がったほどの力か)
『き、貴様ら!!』
超合体ゴルディノの口調と共に、戦況は変わっていく。
アレンとメルスがサポートする中、獣化した獣人たちが超合体ゴルディノに纏わりつくように攻撃をしている。
どうやら獣化はそう簡単に解けないようで、どんどん超合体ゴルディノの足が破壊されていく。
大量の補助のかかっている獣人たちの攻撃は超合体ゴルディノの修復速度を圧倒している。
(よしよし、足さえ砕けば回復できなくなるだろうから、後は煮るなり焼くなりこっちのもんよ)
「む?」
「あ、アレン!?」
(メルスめ、逃げたな。ああ、そうか、メルスの天使の輪では俺を強制移動させられなかったな。権利の範囲外か)
足を損傷させながらも、超合体ゴルディノが巨大な手を伸ばしアレンを握りしめた。
メルスの方が、帰巣本能を使い、寸前のところで躱す。
アレンが捕まってしまいセシルが絶句する。
メルスの特技「天使の輪」には、いくつか制約があり、集団移動ができる帰巣本能を使っても、アレンを勝手に転移することはできない。
『き、貴様がこのパーティーのリーダーだな』
超合体ゴルディノは足に攻撃を受けながらも、どうやらパーティーリーダーを攻めることにしたようだ。
「え? 違います。下で獣になっている人です。ほら、あのライオンっぽいのがそうです。私はしがない補助役です」
人違いだとアレンは苦情を申し立てる。
足を狙って獣と化しているゼウ獣王子を狙うように言う。
(このまま体力を削らせてくれないかな)
アレンはセシルに問題ないと視線を送る。
それを見て、セシルはかつてのマーダーガルシュの戦いを思い出す。
『ふん。そうか。貴様が先ほどからポンポンよく分からないものを出していたのか。貴様など、こうしてくれるわ!!』
どうやらアレンの立ちまわりやパーティー全体でのポジションについて、よく理解していたようだ。
あれだけ大きな声で皆に指示をしていたら、狙われるかなとアレンは思う。
そのまま、超合体ゴルディノが両手で、全力でアレンを握りしめる。
「あ、アレン。キールさん! アレン様の回復を!!」
既に巨大な手の中で見えなくなったアレンの回復をするようにソフィーは言う。
『ふはは! これで終わりだ! 貴様らのリーダーは死んだぞ!!』
そう言って、ゴルディノは握りしめたアレンを全力で地面に叩きつける。
硬いダンジョンの床板に凄い勢いでアレンは叩きつけられる。
さらに、念には念と全長150メートルはあろう巨大な体を活かし、巨大な足で叩き潰し続ける。
何度も踏みつけ、爆音と共に巨大なクレーターができる。
「皆、アレンが捕まってしまったぞ! 救出するんだ!!」
ゼウ獣王子もただごとではないと、攻めていた手を止めてしまう。
パーティーのリーダーで、今回の戦いの大きな要の1人の死はあまりにも大きい。
それは、このまま退散も検討せざるを得ない状況であるとも言える。
超合体ゴルディノの足元を心配そうに見る者、パーティーリーダーに新たな指示があるのか、視線を送る者など様々だ。
『ぬ? なんだ?』
パーティーの全員が絶句する中、超合体ゴルディノが違和感を覚える。
何度となく踏みつけていた巨大な足が地面につく前に止まったのだ。
地面に向けて踏みつけようとする足が、とんでもない力で持ち上げられていく。
「攻撃を続けてくれ! せっかく削った体力が回復する!」
クレーターの中でアレンは叫んだ。
『ば、馬鹿な! 死にぞこないが!!』
その言葉に信じられないと思いながらも、見えぬ何かに恐怖した超合体ゴルディノが自らの足で全力でさらに踏みつぶそうとする。
「ぬん!!」
ドン!!
そんな足の裏で巨大な衝撃が走る。
何かが、足の裏から強力な一撃を加え、足の裏に大きく亀裂を生じさせた。
アレンが超合体ゴルディノの足の裏で、アダマンタイトの剣を叩きこむ。
その衝撃によって超合体ゴルディノの巨大な足が大きく浮いてしまう。
アレンはこの1年近くに及ぶS級ダンジョンの攻略でまた1つ成長した。
アレンは4000体近いアイアンゴーレムを狩り、レベルは81になった。
そして、召喚レベル8になった事で召喚獣の加護が強化され、雨あられのように仲間たちの補助を貰える状態になった。
さらにアイアンゴーレムを狩る中で、剣術はようやく4になった。
ただし王化は封印されたままだ。
【名 前】 アレン
【年 齢】 15
【職 業】 召喚士
【レベル】 81
【体 力】 2615+2400
【魔 力】 4140+2200
【攻撃力】 1452+14600
【耐久力】 1452+2400
【素早さ】 2703+16200
【知 力】 4150+4200
【幸 運】 2703+2000
【スキル】 召喚〈8〉、生成〈8〉、合成〈8〉、強化〈8〉、覚醒〈8〉、拡張〈7〉、収納、共有、高速召喚、等価交換、指揮化、王化〈封〉、削除、剣術〈4〉、投擲〈3〉
【経験値】 約7000億/9000億
・スキルレベル
【召 喚】 8
【生 成】 8
【合 成】 8
【強 化】 8
【覚 醒】 8
・スキル経験値
【生 成】 約2億/100億
【合 成】 約2億/100億
【強 化】 約60億/100億
【覚 醒】 約3億/100億
・取得可能召喚獣
【 虫 】 ABCDEFGH
【 獣 】 ABCDEFGH
【 鳥 】 ABCDEFG
【 草 】 ABCDEF
【 石 】 ABCDE
【 魚 】 ABCD
【 霊 】 ABC
【 竜 】 AB
【天 使】 A
・ホルダー
【 虫 】
【 獣 】 A1枚
【 鳥 】 B8枚、A5枚
【 草 】
【 石 】 A1枚
【 魚 】 A1枚
【 霊 】 A1枚
【 竜 】 A62枚
【天 使】 A1枚
そんな成長したアレンは、片手で超合体ゴーレムの巨大な片足を吹き飛ばした。
「「「!?」」」
さっきまでの心配は何だったのかと十英獣たちが固まってしまう。
すると、防具がボロボロになってしまっているが、アレンが健在な姿でクレーターの中から出てくる。
「な!? ば、化け物か」
超合体ゴルディノの足元にいたホバ将軍とアレンの目が合う。
ホバ将軍はあまりの衝撃と恐怖のあまり、思わず槌を強く握りしめてしまうのであった。
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