第289話 ゴルディノ戦②
アレンは鳥Aの召喚獣を使い通路にいるゴルディノ率いるゴーレムたちを挟み撃ちにした。
(さて、並んでいる後ろ2体がアイアンゴーレムだったからな。ここから殲滅するにはと)
最下層ボスは5体のゴーレムで構成されていることはガララ提督に聞いていた。
広い場所で無限に復活できる特技を持つゴーレムが2体もおり、戦いが終わらないと判断したので、分断作戦を敢行する。
1列に並んだゴルディノ率いるゴーレムたちの最後尾には1体の超合体ゴーレムに乗ったドワーフとヘルミオスのパーティー全員を転移してもらった。
アレンとゼウ獣王子のパーティー、ガララ提督を含む2体の超合体ゴーレムは転移していない。
なお、天使メルスは安定感を重視しヘルミオスのパーティー側についてもらっている。
メルスの特技「天使の輪」についても今まで行っていた制限を解除し、自由に召喚できるようにしてある。
鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」は半径1キロメートル以内にあるものを転移できる。
地面に生えた木とか、基礎がしっかりしている家とか、地面にめり込んだ岩とかは無理だが、1000人を超える軍隊を補給物資ごと転移することもできる。
対象にアレンがいなくても問題はない。
全長150メートルほどある超合体したゴーレムも転移できる。
「よし、体勢は整ったぞ。皆よろしく頼むぞ!!」
アレンは挟み撃ちの体勢が整ったので、攻撃の開始を合図する。
「うらあああ! いくぜ!!」
「うん! 倒そう!!」
攻撃の許可が下りたので、ドゴラもクレナもドリルパンチのあるブロンズゴーレムに突っ込んでいく。
(ふむ、練習してきたお陰で、定石通りの戦いをしてきたな)
魔神レーゼル並みに強いが、今はとんでもない量と数の補助が掛かった状態だ。
1撃を受けて仲間たちが死ぬ状況にはない。
体力や耐久力を底上げするため、指輪を装備しているお陰もある。
アレンは全体を観察しながら戦況の流れを判断する。
そんな中、ゼウ獣王子が率いる十英獣の興奮が最高潮に達する。
「おいおい、俺も行くぜ! も、もう我慢できねえぜ!!」
アレンの仲間たちが戦闘に参加する中、槍・ハルバート部門の十英獣である犀の獣人ラゾがハルバートを握りしめ、全身の筋肉を躍動させブロンズゴーレムに突っ込んでいく。
全長100メートルに達し数十メートルはあろう全てを粉砕するブロンズゴーレムのドリルパンチになど一切恐れない。
そして、自らの体ごと一つのハルバートになってブロンズゴーレムの胴体に激突する。
衝撃音と目視できるほどの衝撃波がアダマンタイト製のハルバートとブロンズゴーレムの間に生まれる。
何十メートル跳躍したか分からない。
こんなに力がみなぎるものなのか、犀の獣人ラゾは自らの力に驚愕する。
借りた指輪もそうだが、獣王国では貰えないほどの補助スキルが自らの体に掛かっているからだ。
「ラゾは相変わらずだな。猪突猛進がよ。後退できんのか? あいつはよ。って俺も行くぜ?」
「ああ、俺も行こう。何だこれは? 面白過ぎだろうが」
口々に言いながら重量級のラゾに続いて、続々と十英獣が突っ込んでいく。
「なんだこいつは、体が軽い。羽のように軽いぞ!!」
短剣、双剣部門の十英獣である豹の獣人セヌは自らの意識が置いていかれるほどのスピードに達した。
残像が残るほどの速度で舞うようにブロンズゴーレムの足元にくっ付きアダマンタイト製の双剣を叩きこむ。
誰も恐怖する者はいない。
毎年行われるタイトル争奪戦に何度も勝ち残った十英獣は世界の広がりを知る。
有用な才能もあったため、ベク獣王太子からバウキス帝国S級ダンジョンに行かされることもなかった。
自分らは狭い檻に閉じ込められていたことをダンジョンの中で知ることになる。
何年も自国の獣人たちにちやほやされてきたが、そんなのは今目の前にする敵との戦いに比べたら、つまらないものだったことを知る。
(よしよし、獣人たちの攻撃も通じているな。この世界は耐久力と攻撃力の差がありすぎると攻撃が通じないからな。ダメージ1とかになるし助かったぜ)
「あ、あいつらめ」
遊び相手を見つけたかのように戦う十英獣にゼウ獣王子が絶句する。
「まあ、怖がるよりましですよ」
「そうだな。余も行くぞ」
「はい。上空から振り下ろされるドリルパンチは全て防ぐことはできないから、注意してください」
「ああ、分かった」
そして、ナックルを強く握りしめ、ゼウ獣王子も突っ込んでいく。
ゼウ獣王子も近接戦闘が得意な完全な前衛タイプだ。
『こしゃくな。まとわりつく虫けらどもめ。ブロンズよ踏みつぶせ!!』
「おらら、させるかよ!!」
ブロンズゴーレムが獣人たちに攻撃の標的を変えようとする。
ブロンズゴーレムが巨大な足を持ち上げ重量を活かし踏みつぶそうとするが、ガララ提督たちが乗る超合体ゴーレムが邪魔をする。
『こ、小癪な!!』
「ぐぬ」
ゴルディノはブロンズゴーレムの後ろからただただ見ているわけではない。
ビームランスを作り、ブロンズゴーレムの背後から攻撃を仕掛けてくる。
ガララ提督がゴルディノの一撃で大きく後退する。
(近距離、中距離、遠距離は完ぺきと。だが、ゴルディノはたしかにこの5体の中で強いが、そこまで突出して強いわけではないと。何か他に隠しスキルか何か持っているのか?)
ドリルパンチのブロンズゴーレム、ビームランスを使用するゴルディノ、そして遠距離からのミスリルゴーレムたちだ。
敵も敵なりに、自分らの能力を考えて通路に侵入してきたことが分かる。
そのゴルディノの強さの把握にもアレンは努める。
この5体のうち4体はこれまで戦ったゴーレムと全く同じ強さのようだ。
しかし、ゴルディノだけは初見なので、どんなスキルや特徴があるのか判断する必要がある。
ガララ提督の超合体ゴーレムをビームランスで攻撃する様子から、突出してゴルディノだけ強いと言うわけではないとアレンは判断する。
補助を受け、アレンからステータス上昇リングを借りた獣人たちが目の前に立ちはだかるブロンズゴーレムを攻撃する。
一切恐れない獣人たちが全力で攻撃をし続ける。
「ぬん! やったか!?」
ホバ将軍の渾身の一撃が決まりブロンズゴーレムが倒れる。
『ブロンズゴーレムを1体倒しました。経験値4億を取得しました』
『リペアエナジー』
しかし、むくむくと無傷の状態になったブロンズゴーレムがアレンたちの前に立ちふさがる。
ミスリルゴーレムの遠距離攻撃もほぼ石Aの召喚獣が吸収し、収束砲撃で撃墜させているのだが、その度に復活する。
ゴルディノの後ろにいるアイアンゴーレムがひたすら復活させる。
ミスリルゴーレムに関しては、石Aの召喚獣がすでに何度も倒しているのだが、その度に復活する。
「おいおい、倒した先から復活するではないか」
「そこは予定通りです。倒れていたり、復活している間は攻撃を受ける頻度が減りますので、倒し続けてください。ガララ提督はゆっくり後退をお願いします」
「ああ、作戦通りだな」
驚くゼウ獣王子に怯まず倒し続けるように言う。
そして、ガララ提督にはゆっくり下がりながら戦うように伝える。
お陰でアレンとゼウ獣王子のパーティーの集団もブロンズゴーレムとミスリルゴーレムを倒しつつ後退していく。
前衛であるクレナ、ドゴラ、十英獣やガララ提督の戦いは順調だったが、後衛に問題が生まれる。
「はわわ! 無理にゃ。皆固まってほしいにゃ」
(いや、固まったら意味がないんだが)
「回復が追い付かんぞ!!」
「じゃあ俺がやる。もういいから、後衛のみ回復してくれ」
獣人の回復役2名がこの状況で弱音を吐いてしまった。
縦横無尽に戦い、あまりに壮大な戦いが起きる中、自分らの回復速度が追い付かないと言う。
そんな不安な状況で聖王キールは自らが前衛全てを回復すると言ったのであった。
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